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魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
17/88

ゴスロリ教官

 朔也は雨森の指示により結界室へと向かった。結界室は東棟の一階の奥にあった。


「すみません、遅れました」


 部屋に入ると皆銃を玉に向けて難しい顔をしている。

 それを眺めている一人の女子学生がいた。白いブレザーに黒いリボンでスカートも黒のチェックだが中にはたっぷりのフリルで膨らんでいた。その上ブレザーのそこかしこに黒いレースが縫い付けられている。縦巻きの黒髪はツインテールに結んであり、真っ白なタイツに黒いエナメルのヒールが際立つ。青いカラーコンタクトをしたゴシックロリータ風の少女はドアを開けてややあってから朔也に気付いた。


「貴方が真山さんですか。雨森先生から話は聞いています。私は墨村と申します。どうぞ、お見知り置きを。今日は人工玉に力を込める訓練をしています」


 そう言うと墨村は灰色の球体を真山に手渡した。球体は直径十五センチほどありそうで、持つとずっしり重たかった。


「先ほど鶴来さんにも手本を見せましたので、真山さんにもお見せしますね……まず銃を玉に向けて意識を集中します。それから破壊ではなく吸収させるようイメージします。そしてトリガーを引く」


 墨村が銃を玉に向けて引き金を引いた。灰色だった玉は漆黒に染まった。球は十秒ほどすると元の色に戻った。


「この訓練はいずれ覚えることになる治癒魔法や結界術を使用する際に対象に正確に魔力を供給する感覚を強化する目的です。ちょっと銃を見せていただけますか?」


 墨村に銃を渡すとしげしげと銃を確かめた。


「なんと、三重リミッターですか。この部屋は文字通り結界が張られているので暴発は起きないと思いますし、そのために私がいますので安心して訓練に取り組んでくださいね。まずは、変色させること。席についてやってみてください」


 朔也は石を持って後ろの席に座った。意識を集中させて、引き金を引くが何も起きない。そして射撃場では気付かなかったが、引き金が異様に重い。周りを見てみると、双子は球を透明にさせているし、長谷部に関しては透明な玉から光が輝いていた。もう一度、玉に向かって引き金を引いてみる。しかし、全く変化はない。それを見ていた墨村が朔也に声をかけた。


「真山さん、どうですか? やっぱり三重リミッターが付くと出力が落ちて難しいですね。まぁ、これも訓練なので頑張ってください」


 墨村はそう言い残し、今度は鶴来の元に向かった。


「あら、鶴来さん初めてなのに変色させることまで成功しましたか。では次はきっちり十秒間保つようにしてください」


 照れるみつきの姿を見て、朔也は慌てて玉に銃口を向けた。さらに集中してじっと玉を見つめて力を込めて引き金を引いた。だが、やはり玉は何一つも変わらなかった。そこでチャイムが鳴った。


「はーい、それじゃあ、玉を前に持ってきてください」


 朔也は情けない気持ちで石を返すと、双子が早速朔也の銃に目を付けた。


「朔也の銃変わったなぁ」

「銃身長くなってるけど、それ一体何なんだ?」

「リミッターだよ。ここに制御スイッチを加えたんだけど、それでも威力が落ちなくてもう一つ付けることになったんだ」


 へぇと双子が異口同音に感嘆する。


「なんかサイレンサーに似てるな」

「俺も早く模擬銃から聖石銃支給されたいなぁ」


 双子が楽しそうに話しているのに気を取られていると銃をばっと取り上げられた。


「これがリミッター? こんな劣等生のシンボルみたいなものを付けられて喜ぶ神経が知れないね」


 銃を見てせせら笑ったのは釣り目の小柄な少年だった。年齢は朝霧とそう変わらない十二歳前後に見える。


「こんなもの付けないと爆発するような危険人物と一緒に授業を受けなきゃいけないなんて。吹っ飛ぶなら自分一人してくれよ。巻き添えはごめんだからね」

「……広田、人の銃を勝手にとるな」


 榎木が広田を叱った。広田が小さく舌打ちする。


「わかったよ、榎木君。ほら、返すよ……」

「ちょっと待て、広田。真山、俺にも銃を見せてくれ」


 広田の言葉を遮るように長谷部が朔也の銃に手を伸ばした。双子はげっという顔をしたが、朔也はこくりと頷いた。


「なるほど……ここで導線に負荷をかけて出力を小さくして、更に先端の銃身で威力を吸収しているのか。ありがとう、真山」


 長谷部は朔也の銃を綿密に観察すると丁寧に朔也に返した。その姿勢は昨日の高飛車な様子とは異なっていた。


「戻るぞ、榎木、広田」


 長谷部は踵を返してさっさと結界室を出ていった。


「あれ? いつもの長谷部とは違うな。ありがとうとまで言ったぞ」

「『勘違いした馬鹿がまた一人死ぬ可能性が高くなったな』みたいなことを言うかと思った」


 不思議そうな顔をして双子は顔を見合わせた。


「ケン、ジョー、真山、何してるんだよ。僕らも戻るよ」


 墨村と一緒に玉を片付けていた遠野が戻ってきて声をかけた。それを契機に四人も寮に戻った。


お読みいただきありがとうございます。


次回「初めての飛行訓練」をどうぞよろしくお願いいたします。


やっと学園ものらしくなってきた……!

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