三重リミッター
座学の授業が終わると、雨森に朔也は呼び出された。
「真山、聖石銃を持って射撃場に来なさい」
射撃場には鷹山と五十代の気難しそうな男性が何やら楽しそうに談笑していた。雨森と朔也が来ると二人とも笑みを消し、真剣な表情になった。
「真山、こちらが整備士の大井さんだ」
「こんにちは、真山朔也です」
大井は眉間に皺を寄せながら朔也を見つめた。
「この新入りがあの装甲の標的を最弱にした模擬銃であそこまで壊したのかい?」
「そうです」
そう答えた鷹山がチラリと壊れたままの標的を眺めた。
「新入り、とりあえず銃を見せてみろ。心配せんでも俺が撃っても何も出んよ」
朔也はおずおずと銃を渡した。
「……別に変わったところはねぇな。リミッターをもう一つ付けてみるか」
そう言って霊珠の横に今度はレバー式のスイッチを取り付けた。それから銃にコードを取差し、計測器を取り付けた。
「新入り、昨日と同じように撃ってみろ」
ゴーグルを付け、朔也は緊張しながら銃を再び手にした。三人の注目が集まるのを感じる。隣の標的に照準を合わせる。手が小刻みに揺れる。
(そっと当てるだけ……当てるだけだ)
緊張が極地に達した時、朔也は息を短く吐き、トリガーを引いた。バンっという衝撃が朔也を襲った。決して軽くはない衝撃だったが、今度は後方に吹っ飛ばされるということはなかった。
「ありゃぁ、リミッター付けてもこの威力かい」
大井の言葉で見ると標的の上部が大きく削られていた。
「数値もメーター振り切ってるなぁ……」
「どうしたらいいでしょうか?」
雨森が心配そうに大井に尋ねた。
「これしか方法はないな」
そう言って筒状の器具を銃に取り付けた。ドラマで見たことのあるサイレンサーのような形状である。
「これなら大丈夫だろう。新入りもう一度撃ってみろ」
次の射撃は多少リラックスして引き金を引くことができた。ぱすっという軽い音を立てて、標的の右端に穴をあけた。
「まぁ、こんなもんだろうな。しかし、三重にリミッターが必要な学生なんて何年ぶりだ?」
「鈴宮司令以来じゃないでしょうか?」
「ああ、あのじゃじゃ馬な。あいつにも手を焼かされたな」
鷹山と大井がまた思い出話に花を咲かせる。それから大井は朔也を見て言い聞かせた。
「いいか、新入り。リミッターの付いた銃で大規模な発砲をするのはピッチャーが鉛球を全力投球するようなものだ。身体を壊す危険が非常に高い。銃は蛟と戦う道具だが、聖石銃は自分の身体を削っているんだ。自分の身は自分で守れよ。お前さんが聖石銃に慣れてきたころ少しずつリミッターを外していく。それまで精進しろ」
大井は荷物を片していると、鷹山がその背中に声をかけた。
「大井さん、時間があれば少々お話を聞かせていただきたいのですが、大丈夫ですか?」
「鷹山さんの誘いなら断れんな。ちょっくら寄らせてもらうよ」
標的を見比べながら雨森は朔也を感心したように見た。
「いや、二段階のリミッターを付けた学生はたまにいるけど、三重かぁ。真山、その素質を無駄にするなよ」
はいと答えてガンベルトになんとか銃をしまい込んだ。銃身が長くなった分、入れにくくなった。
「それじゃあ、真山は今、墨村教官が魔力制御のカリキュラムをやっているはずだから結界室でそちらに合流しなさい」
お読みいただきありがとうございます。
次回「ゴスロリ教官」をどうぞよろしくお願いいたします。




