↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
14/88

女子寮

 みつきは運ばれていく朔也を見送った。残された生徒たちは緊張が解けたらしく、がやがやと雑談をし始めていた。その断片がみつきの耳にも入って来た。


「なんだ、新入生。いきなりぶっ倒れるとかざまあないな」

 

 小柄な少年がゴーグルを外しながら、そう評した。


「広田、誰にでも初めてはある」


 背の高い落ち着いた生徒が短く(いさ)める。


「最初でもあんなぶっ飛び方した奴なんて初めて見たよ。よっぽどへぼなんじゃないか?僕は同じユニットでいきなりあんな暴発起こされたらたまらないね、そう思うだろう、長谷部君? ……長谷部君?」


 広田は長谷部の顔を(うかが)った。長谷部は何かを思案する面持ちで吹き飛ばされた的を見ていた。その姿をさらに遠野が静かに観察している。雨がぽつりぽつりと降り始めていた。みつきは空を見上げた。

 

 みつきは紫色の花の中で少年に出会った。少し長めの前髪に眼鏡をかけた痩せた少年はみつきが声をかけると驚いたように固まっていた。一瞬、バレたのかなとみつきは内心動揺した。みつきは自分の容姿が目立つことを自覚している。つい一昨日までステージに立って歌って踊っていた自分がいた。けれど、今は御子神学園にいる。もう二度とステージに立つことは無い。みつきは女子寮の廊下を歩きながら窓から扶桑の花を見ていた。


「どうしたの、みつきちゃん?」


 みつきは樺倉の声でハッとした。どうやら少しぼんやりしていたらしい。同室である樺倉真由(かばくらまゆ)はひと月前にこの学園に来たという少女だ。小柄でつぶらな瞳をした小動物の様な雰囲気を持っている。この学園では少し先輩だが、一つ年下であるため妹が出来た様な気分になる。


「何でもありませんよ、真由。初めての射撃訓練で緊張してたみたいです」

「ああ、射撃訓練ってきついもんね。でも、真山くんだっけ? すごい威力だったね」

「確かに。この模擬銃ってあんな威力が出るのですね。びっくりしてしまいました」

「なにが、びっくりしたの~?」 


 そこには茶髪を緩く巻いた少女が気だるそうにみつきにしなだれかかってきた。


「あ、あさみちゃん。また授業サボったの?」

「うふふ~。だってあたし、せっかく病気が治ったのに蛟と戦いたくなんかないもん」


 樺倉が同じくルームメイトの瀬川麻美(せがわあさみ)の肩を軽く突いた。叱られた瀬川は全く気にする様子もなく、みつきに体重を預けてきた。瀬川は聖銃士になる前は難病にかかり、長い入院生活を余儀(よぎ)なくされていたらしい。


「ふふふ、みつきはいい匂いがするなぁ。癖になりそう。それで、さっきの話ってなぁに?」

「あのね、みつきちゃんと一緒に入学してきた真山朔也くんって子が初めての射撃訓練で的、吹っ飛ばしちゃったの」


 へぇと瀬川は眠たげな目を開いて問い返した。


初っ端(しょっぱな)から飛ばすねぇ、新人君」


 瀬川はみつきにもたれかかったまま寮の部屋へと入ると、するりと脇をすり抜けていった。樺倉がハムスターなら、瀬川はまさしく猫である。まだ出会って一日だったが、瀬川の気ままなふるまいに慣れてしまった。


「そんな大きな力を持っているとさ、結局道具にされて使い潰されるんだよ。あたしはそんなのごめんだなぁ」


 ごろりと瀬川がベッドに転がり頬杖をつく。瀬川の部屋着であるパーカーの中は下着らしく、豊かな胸の谷間が(あら)わになる。


「麻美はいつここに来たのですか?」

「半年前かなぁ。長谷部っているでしょう? あれと同じ中学なんだよねぇ。で、同時に入学した。あっちは優等生、あたしはサボり魔」

「いずれ、発色してユニット組むんだよ。それで、大丈夫?」

「あはは、まゆは心配性だねぇ。大丈夫、こんな劣等生をユニットに組もうとする司令はいないから」


 みつきはその言葉で気が付いた。自分たちが蛟との戦闘を避けるためにはそれ以外の方法は無いのだ。だからこそ、瀬川は訓練を拒否する。瀬川は全力で蛟と戦う宿命に(あらが)っているのだ。それに対して自分はどうだろうとみつきは自問自答する。

 

 みつきには小学生の頃からの親友がいる。アイドルになるのが夢だった親友は明るくて可愛くてクラスの人気者だった。幼い頃のみつきは色素の薄い体質が災いして、同世代の子供たちから浮いた存在だった。そんな引っ込み思案だったみつきを引っ張りまわして、一緒に歌ったり踊ったりした。彼女のちょっと強引なところも魅力だった。彼女はいつも言っていた。


「みつきも一緒にアイドル目指そうよ! 二人ならできるって!」


 当時のみつきは無理だよと弱々しく呟いていた。けれど、彼女は二年前蛟に襲われた。大量の失血により、今も意識が戻らず病院で眠っている。だからこそ、蛟に対する憎しみがある。友と共ににアイドルになるという夢が奪われたと同時に蛟に立ち向かう力を得た。


(これは私の望んでいた未来なのでしょうか……)


 親友の残してくれた夢と全てを奪った蛟への復讐。自分の未来を自分の意志で選ぶことはもうできない。選ばれてしまった以上、みつきにできることは一人でも多くの人を守ること、そして死なないために強くなること。それだけだった。


お読みいただきありがとうございます。


幕間が入ってしまいました。


次回「魔力の器」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。