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魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
12/88

ヲタバレ

「はい、皆注目。今日から玻璃のクラスで勉強する真山朔也君と鶴来満月(つるぎみつき)君だ。それでは簡単に自己紹介を頼む」


 部屋は普通の教室のようだった。黒板はホワイトボードで横にはプロジェクターが起動していた。窓際に座ったケンが口笛を吹き、ジョーが手を振ってきた。遠野は静かに二人を見つめている。壁際の前の席の長谷部はこちらを冷たい目で見た後、すぐにタブレットに目を落とした。


「好きな席に座って良いよ。それじゃあ、何か質問があれば解説するので各自カリキュラムに取り組んでくれ」


 朔也は遠野の隣に座った。みつきは後ろの方で女子生徒のそばに席を取った。


「机の横に電源があるから繋げておくといいよ」


 遠野が小さな声で机の横を示した。朔也は頷くと共に短くお礼を言った。タブレット端末を開いてみると既にセッティングは済んでいた。朔也はカリキュラム内容をざっと目を通す。


(なんだ、これは?)


第一章魔法の特性 

第二章発色の原理

第三章各属性の特性

第四章聖石銃の使用法

第五章魔力の応用

第六章蛟の特性

第七章基本的な戦闘パターン……


 朔也はまず第一章を読み始めた。


(魔法は霊珠を魔力源として使用される。その際対象、目的を明確化させるために聖石銃を用いる。聖石銃を媒介としているために、主な利用法は攻撃・防御または治療の二つに大別される※ただし例外も存在する。

 魔力量は持ち主のキャパシティーに依存し、一定時間の休息をとるとある程度回復する。また魔法使いになった場合、軽度の肉体的損傷は自然治癒される。これは、魔法使いになった当時の身体的に最も健康であると判断された状態に戻されると考えられる。その事実として難病を抱えていた保因者(キャリア)は感染後、症状が快癒(かいゆ)し、魔法使いとして役目を全うした後の経過も良好である……)


 なんとなく既視感を覚える文体だったので、一番最後のページを読んでみると『文責 今井明日香』としっかり書かれていた。


(やっぱり、あの人か……本当に偉い医学者なんだな)

 

 軽い溜息をつきながら、タブレット端末を操作して読み込んでいく。今井著のこの教本は難解だがどこかユーモアを感じさせる。元来RPG好きな朔也は、自分のことと切り離して読むうちに、いつの間にか教本に没頭していった。

 

 気が付くと座学の授業は終わっていた。


「あれ、もう終わり?」


 朔也が驚いて顔を上げると、双子が取り囲んでいた。


「そう、昼飯終わったら午後実技」

「急いで行こうぜ。今日の定食なんだろうなぁ」


 双子と遠野についていく形で朔也も食堂にやってきた。今日も食欲をそそるいい香りが漂っている。


「今日はカレーにするかなぁ」

「俺はラーメン」

「ジョー、昨日も食べてただろう」

「昨日は醤油、今日はとんこつ」


 双子の言い合いを横目に朔也は生姜焼き定食の食券を押した。四人は食事を食べ始めると話題はみつきに及んだ。


「いやぁ、朔也と一緒だった新入生の子、鶴来満月ちゃんだっけ?」

「そうそう、綺麗な髪の美人だったな。でも、なんか引っ掛かるんだよな、珍しい名前だし……つい最近名前を見たような気がする。朔也、お前のクリアファイルに書いてなかったか?」


 朔也は思わず味噌汁を吹き出しそうになってしまった。こんな事態になるとは思わず、早速机の上にグッズを広げていた。しかし、パッと見ただけではわからないようなものだけを厳選したはずなのに、ジョーの観察力は凄まじい。


「……え? いや、そんな名前の子いたことないけど」


 朔也は内心冷や汗を流しつつ、とぼけながら否定した。


(アイドルヲタクとか思われたら引かれるんだろうな……)


「いや、その動揺っぷり。隠し事下手か。間違いなく本人だな」

「え、何。鶴来さん、アイドルなの? なんだよ、運命的じゃんか! 隠すことないだろ!」


 ジョーが冷静に指摘し、ケンは興奮して、朔也の肩をバシバシ叩いた。予想外の反応に朔也は動きが固まる。


「落ち着けよ、ケン、ジョー。鶴来さんがアイドルだって知られたくないかもしれないだろう。本人が言うまでそっとしておいておいた方がいい」


 遠野が器用に塩サバの小骨を取りながら冷静に言った。


「それもそうだな」

「まぁ、今の俺たちに恋愛はご法度だしな」


 双子たちはあっさりと食事に戻った。


「御子神学園って恋愛禁止なの?」


 ラーメンを啜りながらジョーが上目遣いに朔也を見た。


「当然だろう。あっちこっちで出来ちゃってたら、誰が蛟と戦うんだよ?」

「これも噂だけど、そもそも妊娠しないらしいけどな。まぁとにかく、不純異性交遊は禁止なんだ」


(不純異性交遊って死語だろ……)


 ケンの言葉に朔也は一瞬頭がくらっとしたが、よくよく考えてみたらみつきがアイドルでも聖銃士でも付き合う可能性のどちらも皆無だった。


「午後は射撃訓練だぞ、朔也」

「初めてだからきついかも知れないけど頑張れよ」


 食事が終わり、トレーを洗い場に返していく。ごちそうさまと声をかけていくあたり、双子の育ちが知れる。


「なんかどっと疲れるんだよ。こればっかりは体験してみないとわからないと思うけど」

「体力と気力どっちもガリガリに削られていく感じ。まぁ、無理はするなよ」


 この無鉄砲な双子の弱気な励ましに朔也の不安は最高潮に達した。


お読みいただきありがとうございます。


次回こそ「訓練開始」をどうぞよろしくお願いいたします。

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