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ディスエイトの神剣 読み切り版  作者: 和島大和
第三章 【初任務 二国へ捧げし救いの腕(かいな)】
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第二十八節「追跡 過去と今を想えば」

 私、シェイラはこの里に来て、初めて外に出ることになる。

エーデル・フェアライトの希少性から、他種族からの迫害に加えて乱獲される存在だった。

 元々、私は純血のフェアライト。

それが時代を超えることで最近になって、エーデル・フェアライトという種族に分類に分けられるようになったの。

 ただ、最近と言っても二千年位前。

フェアライト自体が千年以上生きる存在だから、二千年でも数えるくらいの世代交代しかない。

 もちろん、エーデル・フェアライトという呼称になったのにはちゃんとした理由がある。


 フェアライトの腕を移植すれば、魔術を自由に使用できる。

 フェアライトの足を移植すれば、俊敏性が増す。

 フェアライトの臓物を食せば強大な力を得る。

 フェアライトの血を啜れば不老不死になる。

 フェアライトの髪を身につければ不幸になることはない。

 フェアライトの瞳を移植すれば千里を見渡すことができる。

 フェアライトの骨を手にすれば天を味方につけることができる。


 これら全ては誰かが作ったデタラメな噂。

迫害の末に至った究極の迷信。

常軌を逸した考え。

 その噂のせいで、フェアライトの純血種は急激に数を減らしてしまった。

さらに、フェアライトは人工的な地域には住めない種族でもあったから、滅びに拍車が掛かってしまった。

 だからこそ、私の先祖たちは多種族との交配で血を薄くして、種を完全に途絶えさせないようにした。

その結果で、人工的な場所に行っても無事でいられるようになったの。

ただし、その代償として天候操作能力の弱体化や、戦闘能力の低下や短命化を引き起こしてしまった。

一部フェアライトはフェアライトの中でしか交配はしない、という信念で繁栄を望んだ。

天候操作能力をはじめ、戦闘能力も短命化も起きなかった。

ただ、その代償として他の種族から執拗に狙われるようになったり、迫害を受け続けることになった。

 そして、純血を護り続ける誇り高いフェアライトは、混血と混同されることに嫌悪して「エーデル・フェアライト」という呼び方に変わった。

「エーデル」というのは昔の言葉で「高貴な」という意味らしくて、純血として生き続けるフェアライトとしては分けて考えないとダメだって考えたみたい。 

 でも、狙われる存在なのは変わりないから、あまり堂々と表舞台に出ることができなかった。

私もそんなエーデル・フェアライトとして生まれた。

 生まれた時からジーニアスの研究所だったから、お母さんがどういった集団の中にいたのかは分からない。

父さんのことはもちろん覚えていないし、母さんも話してくれなかった。

何か私にとってよくないものだったのか、母さん自身が思い出したくない何かがあったのか、分からない。

 ただ、母さんは「父さんのことより、今はシェイラが居てくれれば母さんはこれ以上ないくらいに幸せなの。」と言っていた。

当時の私は嬉しくて、父さんの事を知らなくても幸せだって、そう感じていた。

でも、母さんが居なくなってから父さんの事をもっと聞いていれば良かったって思った。

今更、と言えばそれまでなんだけれど…。

 今は、過去のことは振り返らない。

振り返っても戻ってはこない。

今と未来のために全力で生きていかなければならない。

私は、こんなところで立ち止まるわけにはいかないから。




 草原を抜け、歩くたびに暑くなっていく荒野をしばらく歩いていると、突然道が無くなっていて突然灼熱の熱波が体を包み込む。


 「ッ!!?……これは……。」


 周囲の空気が強烈な高温になっていて、吸い込む息まで熱くてまるでサウナの中にでも居るみたい。

滝のように汗が流れていく中で、大穴というか崖になってしまっている地面の下を覗く。

 土が焼ける臭いが周囲一帯に充満し、黒煙が立ち昇り、所々に炎がチラついている。

どこまでも続く大穴は底が見えず、ただ闇が広がるばかり。

これ程の攻撃が、仮にクレイヴの攻撃だったとして、かなり規模が大きい。

 どういった力かは本人に聞かなければ分からないけれど、今は進むしかない気がした。

断崖絶壁に透明の空気の膜を敷き、その上を歩いて渡る。

数十メートルはある絶壁は、その上を歩くだけで体全体が焼けてしまいそうなくらい暑い。

息をするのも苦しいし、足や体を動かすのも一苦労。

地獄のような空気の膜の上を歩いて、ようやく向こう側に辿り着く。

 まだまだ先は遠い。

クレイヴがどこまで言ったかは分からないけれど、姿が全く見えない以上は相当遠くまで行ってしまっているはず。


 ふと、この間の夢をフラッシュバックのように思い出す。

 荒廃しきった大地。

焼け焦げた木々。

クレイヴがその中心で倒れ、その近くに赤い髪の女の子。

 嫌な予感がした。

私は信じている。

彼がそう簡単にやられることなんてない。


 「大丈夫…まだ…間に合うはず。」


 自分の口に出して言い聞かせる。

なんとも弱々しい決意。

でも、それで良い。

今は…今は信じるしかない。

 だから私は信じて歩く。

一秒でも早く、クレイヴに追いつくために。


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