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 一言断ってから煙草に火を付けて考えながらスセリ様の話を聞く。

竜人族と竜は共生関係にあると竜人族の戦士に聞いてはいたが、暴走した邪竜・・・スセリ様の言い方では黒竜ティアマトはただでさえ希少な黒竜の上、大事に育てられちゃったもんだから調子に乗り、俺様最強!竜人族?ぶっころしてやんぜ!といい感じでトリップしてしまい、竜達が暮らす場所を飛び立ったという。

慌てた責任者の白龍が報告に来てスセリ様の知るところとなった、と。


なんというはた迷惑な竜だ。

白龍さんとやらもあんな暴れん坊が居たら大変だろうなぁ。


「まぁ・・・そういうわけで加護をくれよう」


「え?いやだからいらな」


「とりゃああああ!!」


ビカッ!


「ちょっとまてぇぇぇ!!」


ああ・・体が光ってしまった。

今となっては見慣れた祝福を受けた直後の光景だ・・・。

これでオレはまた人外に近づいてしまった・・・。

がっくりと項垂れるオレの肩に手を置いて、壮年の偉丈夫がニッコリと笑った。


「うぇるかむ」


「うるせぇぇぇ!!」


ハッハッハ!と爽やかに笑う筋肉男に一気に全身の力が抜ける。

オレが項垂れていると、張本人は心なしか胸を張って言った。


「妾の加護は炎と毒に対する耐性じゃ。寒さや暑さにも強くなるかのぅ・・ま、その程度じゃから人外という程でもあるまいよ」


「それならば・・・ありがたい、かな。ありがとうスセリ様」


お礼を言うと、ホホホと笑いながら消えていった。

いつの間にか筋肉男も居ない・・・別れが唐突過ぎる!!


「え?あ・・・まぁいいか。はぁ・・・転職しよ」


溜息を一つ付いて、なぜか残されたままの畳とちゃぶ台をポーチに収納した。

あの様子だとコレっきりって事もあるまい。

また会ったら返せばいい。

それまでせいぜい使わせてもらうとしよう。


神官に鍵を返して転職部屋の鍵を貰う。

そのまま転職部屋に入ると鍵をかけた。


「さて、今日こそアクスファイターになろう。その前にっと・・・」


どれどれ・・・脳内に表示される一覧を見ていく。

見習いが取れた上級職、アクスファイターはまだあるな。

見習い複合職は剣聖とイェーガー、狂戦士に竜騎士か・・・・ふむ。



「ンンン!?」


狂戦士!?

オレついに狂っちゃったの!?


『狂戦士:一度戦いが始まれば臆することなく前進する戦士。血を浴びる程に攻撃力が上がるスキルを初め継戦能力をあげる自己回復上昇などのスキルを持つ。なおスキルを使用している間、知力が下がる。戦い続けろ・・・己の誓いにかけて。開放条件:力S以上。2ℓ以上血を浴びること』



なるほど・・・ティアマトの血を浴びたから開放されちゃったのか!!

2ℓというのがまた多いのか少ないのか分からないが、まぁ大した量ではあるのだろう。

医者だったらすぐなれそうだけど・・・力が足りないか?


というか職業神!!

なんだよ己の誓いって!!

誓ってねぇよ!!


『カッコイイじゃろ?儂いい仕事したよNE☆』


よNE☆じゃねえええええええ!!!


流石に狂戦士は聞こえが悪すぎる!!暗黒騎士とか・・・いやそれもだめか。

とすると竜騎士なら・・・。


『竜騎士もチェックしていいんじゃよ?』


やかましいわッ!

心を読むな!無駄に高度な技使いやがって!


はぁ・・・これ言うこと聞かないと強制的に見せられるパターンだな。

仕方ない。


『竜騎士:竜を友に戦う戦士。友とした竜の力を行使することが出来る。ちなみにワイバーンは竜ではない。亜竜である。その力を振るうとき、歴史が動く・・・!なおジャンプしても特に高さは変わらない。取得条件:槍術レベル10以上、龍神の眷属と友誼を結ぶ』



なんか中二病全開の職業が来たぞ!?


なぜか職業の説明にワイバーンの説明があったのは気になるけどそれはいいや。

映画の宣伝みたいなのが相変わらずなのもいい。もう諦めたから。


でもさ・・・ジャンプについて言及しちゃだめだろォォォ!!

まずいよそこに喧嘩売るのは・・・。


『異世界じゃからいいんじゃよ?』


いやいや、版権とか大人の事情ってもんがあるんだよ。

まぁいい。よくないけど、いい。


竜騎士か・・・狂戦士よりはまともそうに見えるが、どちらがヤバイかと言えば竜騎士の方がより剣呑な職業だな。

竜の力を使えるって絶対ヤバイよ。

説明したら怯えられて逃げられるレベルだよ。

かといって狂戦士はステータス見られた瞬間に警戒されそうな職業だしな・・・。


『えい』


『狂戦士に転職しました』


「何やってくれてんのォォォ!?」


『面白そうな方を選んでみました☆』


☆はやめろッ!!


なんてこった・・・狂戦士になっちまった・・・。



『アクティブスキル鮮血の宴、殲滅の誓い、パッシブスキル自己回復力増加を新規取得しました。』



流れについていけない速度でどんどんブッこんできますねッ!!


『そうそう。早く銃を作って欲しいのじゃよ。感想求む☆』


おいこら!心読めるくせにさらにブッこんでくるな!


だいたい感想求むって言われてもな・・・素材が足りなくて作れないんだよ。

・・・ん?アレ今なんか引っかかったな。

なんだ?あ~・・・足りないのが確か魔晶石で・・・Bランク以上だっけ?Aとかじゃないと確率が低いって図鑑に載ってたような・・・。


・・・あ。


ティアマトの魔石!!

竜ってだけでSランクの強敵だって話だし、名有りだしアレの魔石ならもしかしてもしかするのか!?


こうしちゃおれん!


「早速作ってみるぜ!!あばよ!」


『次に来るときは銃持参してもいいんじゃよ』


はいはい。



神殿を出ると脳内で作業工程を思い浮かべながらドロス武具工房に向かって歩く。

確かデス鉱石と黒鉄鋼、魔晶石だったよな。

黒鉄鋼は・・・折れた武器から再利用でいいだろう。

大事な貰い物だからな、愛着もあるし。

デス鉱石は確か工房にあるっておやっさんが言ってたからよし。

あとはティアマトの魔石が魔晶石かどうかってとこか。


そうと決まれば急いで行くか!



工房に入ると地下からガヤガヤと音がする。

声を掛けても喧騒が凄くて聞こえていないようだ。


「おやっさぁん!いるかぁ!」


「アァ?どうしたンだ?」


地下工房に入るとドワーフ達がワイワイ騒ぎながら竜を解体しているところだった。

でかい図体に何箇所もハシゴをかけて上から解体しているようだ。

竜の解体なんぞどうやってやるのか非常に興味深いが・・・とにかく間に合ったらしい。

なんかの武器に使われてしまったらどうしようもなかった。


「おやっさん。こいつ多分魔晶石だよね?もし魔晶石なら前に話した銃ってやつ作ってみたいんだけど」


そう伝えるとおやっさんがポンと手を打った。

銃?と聞いていた職人達は首を傾げているが、さもありなん。


「お?おぉぉ!前に言ってた射撃武器か!いいぞ!オイ!魔石は取れたか?」


おやっさんが声を掛けると、竜の首の辺りを解体していたドワーフが汗だくになりながら、振り返った。

作業を一旦止めて、ハシゴから降りてきたドワーフが大きな魔石を掲げた。


「オウ、ドロス親方!丁度今取れたとこだぜ!」


直径30cmにも達するだろう大きな魔石を手渡されて、思わず凝視する職人達。

おぉ・・・とかアレだけ大きければ色々使えそうだな

とかアイデアを言い合っているが、使い道は決まってる。


「おやっさん、上の工房借りていいか?早速試作してみるから!」


「おう!儂らは竜の解体で今日一日はかかっちまうから大丈夫じゃろ!出来たら絶対見せに来いよ!」


おやっさんに片手を上げて地下工房を出る。

さて、スキルがあるから一通りの作業は可能だが、まずは魔石と鉄、デス鉱石で試作してみるか。


スキルの恩恵か、黒鉄鋼と比べると柔らかい鉄だからかブレも無く綺麗な銃身が出来た。

そこからバレルを作り、グリップ部分まで作っていく。

中折れ式のリボルバー式でシリンダー毎交換出来るようにしておく。

部品点数は少ない方が整備しやすいって話だけれど試作だからそこまでは考えなくていいか。

普通にサラリーマンやってたから銃なんて持ったこともないし刑事物の小説で読んだ程度の知識だから当てにならないが、イメージをスキルが補ってくれる。


弾丸は最初から拘らずに鉛で作る。

いいのが一発でもできれば後は型に入れて作ってしまうつもりだ。

一流のスナイパーは自分で弾を作る・・・なんてな。

とりあえず試作だからバレルの下に磨いた魔石を嵌めて、ハンマーよし、トリガーよし・・・っと。


『職業レベルが上がりました。銃器製造スキルのレベルが上がりました。』


順調にレベルも上がり、なんとか試作型魔導銃が完成した。

とりあえず初めて形にしたわけだ。

感動しながら、手に取ってみる。

う~ん、グレネードガンみたいなのをイメージしてたんだけど、普通にリボルバー式の拳銃だな。

マグナム弾とか使う大口径のやつになってはいるが拳銃サイズに収まっている。

ゴツゴツしてて感じが悪いな・・・ホルスターに入れるにも抜くにも魔石の位置が邪魔だし・・・うーん。


いっそ地球の知識に拘らずに作ってみるか?

とはいえ・・・アレで歴史のある武器だからなぁ・・・素人が変えようとして変えられるもんでも・・・いやまてよ?

リボルバーに拘らなくてもいい、のか?

例えばショットガンみたいなのなら大型化しちゃうけど魔石をはめるスペースは十分に作れそうだ。

ふむ・・・あとはいっそソードガンだかガンソードだかにしちゃうか?

ロマン武器を狙うのも悪くないな・・・。

ふぅむ・・・両手にガンソードを持つ自分を想像してみる。

黒いコートにガンソード・・・死滅したはずの少年心がドクンと鼓動した。


「・・・イイ。すごくイイぞ・・・」


そこからは夢中になってやった。

銃身自体を剣にするが、折れ曲がったら撃てなくなってしまうので硬い素材を使う。

さらに工夫して破壊される程の衝撃を受けた場合は剣部分が脱落するように細工する。


うーん、それでも心配があるな・・・。

素材を選び過ぎると作れなくなるし、かといって拘らないと脆くなっちまうし・・・。

そうなると外から魔法を掛けるとか・・・魔法?


「そうだ!そういえば使ってなかったけど気でコーティング出来たはず!」


早速未完成のガンソードに気を流してみる。

薄らと白く輝く刀身。色は個人差があるらしいが、オレは白らしい。

色白でよく馬鹿にされたからな~・・・黒が良かったんだが。

辺りを見回すと丁度良さそうな鉄塊があったので軽く斬りかかる。剣は抵抗も無くあっさりと鉄塊を切り裂いた。

刃も付けてない少し鋭利な程度の剣が。


「すげぇ切れ味・・・今まで使ってなかったオレって一体・・・」


かなりがっかりしたが、これで耐久性については問題なさそうだ。

まぁ暗闇の中で使うと無駄にペカペカ光っちゃうから隠密性は無いわけだけど、その場合は違う武器を使えばいいだけだ。

色々な武器を持ってるわけだし。


ふぅ・・・一息ついて煙草に火をつけた。

試作の試作という程度ではあるが、これである程度の目処がついたわけだ。


そこから丁寧に部品を作っていった。

銃身に剣を装着するタイプではなく一体型で作成する。

剣と銃の良いところを上手く融合させたいと願いながら。

幸い、黒鉄鋼もデス鉱石も十分な量が確保されているからフォローは出来る。



特に重要な銃の部品を一つ一つ慎重に作っていく。

回転するリボルバー部分は特に丁寧に、バレル部に両刃の剣を二つに割ったような刃先を固定して・・・根元部分は気持ち厚めに、剣の強度にもつながるからバレル部分は試作よりも太く分厚く。

刺突からの銃撃も想定して剣先は尖らせていく。

よし、あとは刃を研いで・・・そこでふと顔を上げると、カリンとシャルさんが興味深そうに作業を眺めているのに気がついたのだった。


「すまん、集中してて全く気がつかなかったよ」


「あはは~、気にしないで~?相当集中してたみたいだからね~」


「ん、それが銃?」


カリンは何を作っているのか知る方が大事であるらしい。

とりあえず刃を研いでいないガンソードを手渡す。

グリップの磨きと刃は未完成、弾丸は型だけ作ったところだ。

それでも気がつけば夕方になっていたらしい。

地下の方からはまだ声が聞こえるからおやっさん達はまだ解体しているようだ。

おやっさん達に合わせてあがる事にしよう。


興味津々でガンソードを見つめるカリンからガンソードを返してもらって、刃先を研いでいった。

ある程度出来上がったところで、グリップ部分に革を巻いていく。

汗で滑りにくいように、持った感じがしっくりくるようにっと・・・。


「出来た!!」


「「おお」」


ガンソード一号!最後に削って磨いた魔晶石を嵌めて完成だ。

削っても魔晶石の能力は変わらないと知識にあったので、豪快に削ってやった。

削ったカスもゴミではないので大事に回収して素材として使ってある。

このカスをさらに細かく砕いて粉末状にする。その粉で刀身や銃身をコーティングしてやると、魔力や気の通りがよくなるらしいのだ。

粉末になった魔晶石がキラキラと輝く刀身。

うん、こいつはなかなかいいぞ。


「ん、名前」


「名前か・・・そうだなぁ」


腕を組んで唸る。

柄の革以外全てが黒い見た目、使われているのはティアマトの魔晶石。

今日もらった龍神様の加護、筋肉男が言った名前・・・そうだ!


「ドラグヴァンディル・・・いやドラグヴァンティアーだ!」


そう叫んだ瞬間にガンソードが一瞬輝きを放った。

唖然として見つめるオレとシャルさんにじっと見つめていたカリンがゆっくりと頷いた。


「ん。ドラグヴァンティアー、魔導剣銃。異界の技師ユウ・ミサキの作。異界の知識を融合した世界に一つの剣銃。高い攻撃力と耐久力を持ち、込めた弾丸によって攻撃から補助まで対応出来る」


「おお・・・識別先生か。なんかすげぇの作ってしまったな・・・びっくりだ」


「すごいよユウ~!名前が付けられる作品ってなかなか作れないんだよ~!」


細工に優れたホビット族であるだけあって、生産技能にも明るいらしいシャルさんが興奮したように叫んだ。


ゆっくりと満足感が胸の中に広がっていく。

やった・・・良い武器が作れた・・・。


「やったぁぁ!!」


体を駆け巡る興奮と喜びに思わず叫んだ。

二人も嬉しそうに拍手してくれた。


今日は色々脱力することがあったけど、終わりよければ全てよし!


ようやく銃が完成です。

なぜかガンソードになってしまいましたが(笑)

この作品は作者も驚きながら執筆しております。

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