一月十一日(火)
月曜は用事があって行けなかったから火曜日の放課後。また私はこの病室にやってきた。時刻は午後四時丁度ぐらい。学校が終わってから自転車でまっすぐ来ると、丁度このくらいの時間になるらしい。
受付を済ませてからカオルの病室に向かう。
「入るわよ」
ドアをノックして、一言声をかける。
「どうぞ」
がちゃりと音を立てて、ドアは開いた。ベッドに横になっていたカオルは、上体だけを起こして私に微笑みかけてくれる。
「こんにちは。今日は制服なんだね」
「うん、学校が終わって、まっすぐ来たから」
「そう。お疲れ様。私は今日も寝てばかりだったよ。これ羨ましくないよね」
あっはっはと冗談っぽく笑ってから、カオルはゆっくりとベッドから降りた。歩みはとてもゆっくりで、なぜか彼女の手は小さく震えている。
「折角来てくれたんだし、食堂行かない? 甘いもの食べたくなってきた」
「うん……」
歩くのが遅いのも手が震えるのも、多分病気のせいなんだろうな。そう思うと何も言えなくなり、カオルの言葉に私はただ頷く事だけしかできなかった。
そんな私の心情を察したのか、彼女も何も言わない。恐らくは気にするなという事なんだろう。何も言いはしないけど、気付いてしまった以上、どうしても考えてしまう。
エレベーターで一階に降りて、まっすぐ食堂に向かう。うん、遅いけどちゃんと歩けてはいるんだよね。何で汗かいてるんだろう。息も少し荒い。そこまで体力落ちてしまってるのかな? それとも、何か他の理由があるのかな?
カオルはチョコで、私はイチゴのアイスを頼んだ。カオルにはずっと椅子に座って貰っていて、アイスとお茶は私が取りに行った。並んで座って食べ始める。
「好きなんだよね、チョコのアイス」
そうだったんだ。なら次に来る時は、チョコのアイスでもお土産に買ってこようかな。
「アイス食べるのは良いけど、ちゃんとご飯も食べるようにね」
「大丈夫。食べれるだけは食べてるから」
小さく笑ってそう答えてから、カオルはお茶を一口飲んだ。
「そんなに心配しなくていいよ。ここ最近は割と落ち着いてるからさ。もっと気楽に接してくれた方が嬉しい。病人扱いしかされないんだから。入院患者だから当たり前だけどね」
うーん、どう接すればいいんだろ。ちょっとよく分からないけど、まあ頑張ってみようかな。
「わかった、努力する」
私がそう答えて頷くと、カオルは自分のアイスを一口差し出してきた。私がそれを食べると、今度は私のアイスを一口掬って食べた。
関節キスがどうとかより、衛生的に大丈夫なのか気になってしまう。感染症とか本当に大丈夫なのかなあ、入院患者なのに。
「イチゴも美味しいね」
「うん……」
当の本人は私の考えなど頭にもないようで、へらへらと笑っていた。
食べ終わると、私は二人分の食器を下げてから、カオルを部屋まで送った。その日は、それで帰った。




