チャプター51:「急転」
時系列はわずかだけ遡り、ToBの防御本陣からの視点へ。
「シニア・オルスレー!ヴァイス・ロウたちが!」
「分かっている!」
兵の一人からの切羽詰まった声での伝える言葉。それにオルスレーも承知している旨を焦る色で返す。
正面の向こうにて、仲間の後退援護のために出て行ったロウたちPA兵の一隊が。
その代償として敵に囲われ群がられ、危機に陥った光景が見えていた。
「援護を!併せて救出のためにさらに出る!」
すぐさまロウたちの救出行動を決断し、指示の声を張り上げるオルスレー。
しかし。そのオルスレーたちの近くで、爆音の爆炎が響き上がったのは瞬間だ。
「――ッぁ……」
側方のすぐ近くで、数名のToB兵がそこの防御陣地の一角ごと、上がった爆炎に巻き込まれて吹き飛ばされるのが見え。
そして爆炎の熱に衝撃派が、オルスレーたちにも及んで煽る。
「ッ……被害状況!」
一瞬庇った顔をすぐに上げ、周りに呼びかけ尋ねるオルスレー。
「銃座陣地と数名が……うわ!?」
それに兵の一人が答え掛けたが、しかし次に立て続けに襲い来たものに、それすらも阻まれる。
続け襲い来たのは、陣地の正面に両側方、各方向からの苛烈な銃火。それは機関砲から機関銃、小銃小火器まであらゆるからのもの。
それぞれが成す十時、いや多数方向からの交差銃砲火がToB兵たちの頭上に周囲を掠めて襲う。
「ガァっ!?」
「グァ!?」
さらに今度は、防御陣地の中で数名の兵が、立て続けて打ち飛ばされるように倒れ崩れる。
「スナイパー!この隙を狙って来たぞっ!」
兵の中から誰かがその正体を叫び知らせる。
その出所は側方向こうの崖。ToB側からのカウンター狙撃が手薄になった所を狙って来た、敵、VAC AF狙撃班からの狙撃銃撃だ。
「っ!伏せろ、防御しろ!」
直ちに周りに命じ、自らもPA装備のその身をできるだけ屈めるオルスレー。
「敵の攻勢ですッ、各方から無数の火力!」
そこへまた悲鳴に近い声で、兵の誰かが知らせる声を寄越す。
しかし言葉で教えられるまでもなく、飛び込み飛び交う数多の銃砲火火線から。嫌でもそれが敵の本腰を入れた攻勢であることは理解できた。
「っ……!忌々しいっ!」
オルスレーの近場でシャスエンなどは、怒り、そしてPAの防御に物を言わせて、身を立ち晒してミニガンをばら撒き続けているが。
彼女の取り巻きのサーヴァントの少女などが、背後から必死にそれを止める様子を見せている。
「ヴァイス・ロウたちが……!」
そんな所へまたも兵から寄越される、しかし今度は悲鳴に近い悲痛な声。
見れば正面の向こうにて。ロウたちのPAの一隊がついに。抵抗も虚しく、群がるAF隊員によって崩され、そして至近距離で銃撃を叩き込まれて絶える姿が見えた。
「!……クソ!よくも――」
「シニア!危ない!」
それに怒りを覚え、我武者羅の行動に立とうとしたオルスレーだが。
しかし次には、彼は近くに居たPA兵に押され庇われる。
瞬間、敵AFからの対戦車携行火器の攻撃が、近くの防御陣地の一角にまた飛び込んで炸裂。
その爆炎はそこに配置していたToB兵たちを巻き込み吹き飛ばし。そしてその衝撃をオルスレーにも伝えた。
「敵の攻勢は、並みではありません!」
「ッ……!」
自分を押し倒したAP兵に庇われながら伝えられ、周りに視線を走らせるオルスレー。
防御陣地はどこも、誰もが敵の火力に釘づけにされ、ろくに応戦もできない状況。そしてその中で、次に次にと同胞の兵たちが銃火に撃たれ、炸裂に巻き込まれて崩れていく。
「……ッ」
その光景に、それからの怒りに、歯を食いしばるオルスレー。
《――シニア、こちらテクニック・ヒュリです!ボットの準備が完了しました!》
しかしそこへ、PA内臓の無線に、通信音声が飛び込んだのは瞬間だ。
「!、間にあったか、出せるか!?」
それは古代の遺跡内部で作業に当たっていた技術師よりの、「あるもの」の準備が完了したことを伝える知らせ。
複雑で扱いずらい代物であることから防御への配置が遅れていたが。繰り出せばこの戦況を覆すことが大きく期待できるもの。
《最後の調整がまだですが……そちらの状況は聞いています!「戦わせ」ながら、現場で調整します!》
「了解、急ぎ出してくれ!現場調整は援護する!」
無線にて詳細補足が寄越され、それにオルスレーは了承と急き求める声で返す。
《は!扱いに普段から手を焼いてるんだ、たまには役に立ってくれよ!――》
そのオルスレーの言葉に通信の向こうの技術師は答え。そして通信の背後でそんな零された言葉と併せて、何らかの物々しい機械音が聞こえ届く。
「頼むぞ、急いでくれ……っ!」
それを聞きながら、オルスレーは願うように声を零した。
攻勢の進行から、VAC AFは決着を付けるための畳み掛けに入ろうとしていた。
「――装甲車班、ウイス6-1より前線各隊。こちらは正面支援要請を受けている、前に出る」
《了、頼む》
攻勢行動を続ける各隊各員の側方に間を、接触を招かないよう慎重な走行にて、二両のA202装甲車が抜けて追い越して前へと進み出る。
その一両目の車両車上には、車長兼指揮官の隊員の通信調整を行う姿。
「敵陣地を目視。操縦手、加速して突っ込めッ」
二両の装甲車は間もなく前方正面に進み出て、向こうに敵ToB陣地を目視。
同時に車長は迷うことなく、操縦手に加速にての突入を命じようとした。
「――ッ!」
しかし、車上の車長が――その「音」と、向こうから放物線の軌跡を描いて飛んでくる「何か」を見たのは瞬間。
――そのA202装甲車が、鈍く金属を殴る様な音を上げ。そして爆炎に包まれ大破炎上したのはその直後であった。
「――ッァ……!?」
爆発炎上したA202装甲車の少し近く。
突如として襲った現象、そしてその熱と衝撃派に、驚き身を庇い構えた一名のAF隊員が居る。
「何が……――!?」
周囲が驚愕と混乱に巻かれる中。
その隊員も向こう近くで大破炎上した姿を見せるA202の、その原因を探るべく視線を走らせる。
そして正面の向こう、敵ToB防御本陣の奥より――複数の「それ」が出現する光景を隊員は次には見た。
敵陣地より割って出るように出現したもの。
それは小柄の戦車、あるいは戦闘車輛か。そんな印象を思わせる造形の物体、それが計四つ。
そしてそれらは、ガトリング砲や機関砲。それにミサイルあるいはロケットと思しき物のランチャー類を、いずれもが複数携えた。
「!!――ファイアサポートボットッ!?」
その正体を、隊員は声にして張り上げる。
その名の通り。出現したのは戦場にて火力支援を目的とした無人機、一種のロボット。
「ッぁ!?」
その出現から間髪入れずに、ボットの一機が次にはまたミサイル投射を寄越し。
それは今に突入行動の前衛を担っていた、装甲車のもう一両に命中直撃。
「――ヅ……ッ!」
それにまた身構え顔を伏せた隊員は、しかし次に起こした視線の先に、「それ」を見る。
それは現れたボットのその全機が、ガトリングの事前回転を。ないし機関砲の旋回照準の動きを見せる様子。
そして――
――いくつもの、鈍くも苛烈な銃砲火が響き唸り。そして無数の「死の雨」が、水平射撃で多方向へと飛び貫いた。
「ア゛ッ――」
――一掃。苛烈な掃射のそれ。
それに、今の隊員の彼を含む多くの者が。
突入に掛かり広く展開していた、数十名単位の多数の隊員等が。
一掃掃射のその銃砲火に喰われ、浚えるように弾かれて。地面へと沈んだ――




