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チャプター52:「対策」

「――ッ!!」


 ジョンソンは前線よりわずかに後方の場所で、その光景を目撃した。


 複数機の強力な火器火力を備える無人機、ボットの出現により。

 それからの掃射にて多くの隊員が、自らが指揮を預かる者等が。弾き砕かれ、痛ましく儚く崩れる姿を。


「ッッ!!」


 数十名単位で犠牲を、その凄惨な光景を目の当たりにし。瞬間ジョンソンのその頭に並々ならぬ血液が上る。

 そしてジョンソンは得物の大口径リボルバーを突き出し。仇討ちか、その行動理由すら定かでは無いまま、怒りに任せての押し進みを敢行しようとした。


「ちょいとストォップッ!!」


 しかしそれよりも早く、巨大な手が。お守りを務めるコースの腕が。ジョンソンの肩へと伸びて無遠慮に掴み、乱雑に引く。

 そしてコースはそのままジョンソンを引きずり連れ、背後近くにあった古代の遺跡の付随施設の影に、ジョンソンの身を放り込んだ。


「ちぃと冷静におなりアソバセッッ!」


 そしてコースはジョンソンに皮肉を混ぜた、しかし落ち着かせる言葉を向けつつ。

 自身は同じく施設にカバーしてジョンソンを庇いつつも、得物の20mm機関砲を突き出し向けて、とにかくの様相で向こうへと撃ちばら撒き始める。


「ッ――すまんッ、被害状況知らせッ!」


 そんなコースからの促しの言葉に、ジョンソンの頭に上った血は一応引き、冷静さを取り戻す。

 そしてジョンソンは次にはコースに詫び、そして周りに尋ねる声を張り上げる。


「1中、第3小隊に被害甚大!装甲車二両が大破ッ!」


 ジョンソンの要求には、同じく遺跡の付随施設の遮蔽退避した隊員が答えた。


「ラーン上等士、通信で全隊にこれを共有ッ」

「やってますッ!――ジョック10より全隊、大隊攻勢主力は前線正面にて、複数機の無人機に、強力な火力を有するボットに遭遇!被害多数!至急支援を――」


 続け、自分に同行していた通信員に指示を張り上げるジョンソン。

 その通信員は少し離れた別の遮蔽個所に退避し、すでに状況を各隊に知らせる通信の声を、無線機に向けて捲し立て始めていた。


「生存者を、無事な隊に班を掌握ッ。再構築しろッ」


 さらに続けジョンソンは、周りの無事な、難を逃れた各隊各員に指示を張り上げ伝える。


「ッ――」


 そしてとにかくの、まずすべき指示行動を成した後。

 ジョンソンは尖る眼で、向こうの敵陣を。そこに現れたボット群を刺すように見た――



「――どうした?」


 場はまた後方指揮所。

 騒がしく響き始めた通信卓の無線通信機の音声を聞き留め、ラエは通信員に尋ねる。

 

「前線、敵陣よりファイアサポートボットが出現との事ですッ。少なくとも装甲車班と一個小隊に被害の報告ッ」

「ッ!」


 次に捲し立てられた、通信員からの報告内容を聞き。

 それにラエは目を剥き。同時にそれを聞き留めたリーシェたちも微かに騒めく。


 そしてより事態を知るべく、ラエは自身も通信卓の傍横に移動して立ち。通信機から聞こえる状況に直接耳を傾け。

 他、リーシェやルーネたちも通信卓の周りに集まって来る。


 通信卓に複数機設置した無線機からは、前線にて飛び交う通信が。いずれも怒号に近い声での連絡報告のそれが聞こえて来る。


「――まずいことに、畳み掛けようと突入した瞬間を。こちらの守りが脆弱になるタイミングに、ボットを繰り出されたようです」


 その同時進行で聞こえてくる通信内容を、通信員はその要点を掴んで要約。ラエや皆に紡ぎ伝える。


「現在は?」

「主力はナガイ少佐が前進待機させたようですが、正面の生存者がいくらか取り残されている模様」


 ラエはさらに他に情報が無いか尋ね。通信員はそれに掌握している所を答える。


「ッ、少尉ッ。予備待機の、私の14大隊に出動準備指示を。併せて火力隊、重迫撃砲班にも火力投射準備指示ッ」

「はッ」


 ラエは掌握できた限りの状況から、すぐさま増援の投入を見越した準備を判断。控えていた連絡調整将校にそれを命じる。

 その連絡将校がすぐさま指揮所から駆け出ていったのを見届け、ラエは通信卓に視線を戻す。


「121大隊本部、ナガイ大隊長と繋げるか?」

「すでに」


 そして通信員にジョンソンと通信ができないかを訪ねたラエに。通信員はすでに通信は接続してある旨を答え、ハンドマイクをラエへと渡す。


「チェックメイト01よりジョック10、ジョンソン!聞こえるかッ、応答できるかッ!」

《――中佐、手短にッ》


 張り上げるまでの声で、通信の向こうのジョンソンに呼び掛けたラエ。

 それに返信はすぐにあり、しかしジョンソンの声でそう最低限だけを伝える旨が返って来る。


「状況、及び被害は聞いた。ただちに後退を、火力援護支援を準備させてる」

《可能な隊にはすでに指示、順次後退させてます》


 ラエはとりあえずジョンソンが生きていた事に微かに安堵しつつも。すぐに後退を指示する言葉を送り、ジョンソンからもすでに始めている旨が返る。


「了解、君もそこを離れるんだ。ToBはこれに乗じて討って出てくる可能性が高いッ」


 それに了解し、ラエは続けてジョンソン自身にも後退を促す。


《いえッ。一個小隊が正面で孤立、負傷者が多数取り残されている。これの自力での後退は不可能、これを捨て置いてはいけないッ》

「ッ」


 しかし、その指示にはジョンソンは異を唱え答えた。それにラエは顔を苦くする。

 ラエとしては、冷酷な判断とは分かっているが。優先してジョンソンと無事な各隊だけでも後退させたい所であった。

 しかしジョンソンのことだ。無事な各隊にあってはともかく、自分だけは指揮下の各員全てを回収するまで、頑なに後退はしないだろう。


「了解、回収のための増援をただちにそちらに向かわせる。それまで踏ん張ってくれッ」

《了》


 ジョンソンのその性質に手を焼くものを覚えつつも、しかしならばいち早く回収のための増援を送るしか無く。ラエは無線の向こうにそう伝え、ジョンソンの端的な返答を聞く。


「!」


 しかしその直後、ラエが背後に何か背かしい複数の動き気配を感じ取る。

 そして振り向き見れば、リーシェにルーネ、シュステンにクインたちが。一様に指揮所から駆け出て行こうとする姿が見えた。


「皆さん、どこへッ!?」


 尋ねる声とはなったが、その様相から察することは容易く。ラエはその声にて慌て四人を呼び止める。


「放って置けない、僕たちも助けに向かう!」

「申し訳程度だが、私たちも力になれるかもしれない!」


 しかしシュステンとクインの美少年コンビは、それによって止まる事は無く出て行ってしまい。

 リーシェとルーネが後ろ髪を引かれる様相で止まり、急く色で訴える言葉を返してくる。


「ダメですッ!」

「お願い、今度は力になりたい!」


 それにラエは強めの口調で答えて止めるが。

 しかしリーシェたちの側はそれを聞く様子は無く、そう答える言葉を残して駆け出て行ってしまった。


「ッー、手配をッ。一個小隊をお守りにつけろッ」

「了解」


 苦い顔を作り、口を鳴らしてそれを見送ったラエは。次には困った色を見せつつ、近くにいた隊員に護衛の手配を指示する。


「ッ?」


 しかし直後、リーシェたちと入れ替わる様に。指揮所内に悠々とした歩みで、一名の人物が入って来た。


「!、到着したか!」


 その姿に、ラエはそう言葉を上げる。

 現れたのは、フルフェイスゴーグルマスクと切り詰めたA1ヘルメットで顔を完全に隠し。

 特殊な仕様の作戦行動服で完全装備の姿を作る、一名の隊員。


「――お待たせを」


 その隊員は――ストロングコマンドー隊員、サミュエルは。

 マスク越しの掠れた声で、端的にそう伝えた――

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