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休憩を終えて探索を再開した。マップで周囲の地形を確認したり、【ロックオン】と【ステータス】で佐藤さんたちに問題が起きていないか確認しながら北に向かって探索していった。
「コッコッコッコ。」
探索中に動物の鳴き声が聞こえてきた。
「何か居るね。向こうから聞こえる。気付かれないように近付こう。」
「ラジャー。」
息を潜めて音を立てないように気を使いながら鳴き声のする方に近付いた。
物陰に隠れながら様子を覗い、直ぐに真中さんと目を合わせる。
「鶏?」
「茶色いけど多分そうだよね。確か元の世界でも野生種は茶色だったと思う。」
「モンスター?」
「鶏に似たモンスターの可能性もあるのか。小さいし、コカトリスでは無いよな。もしそうなら危険だ。ちょっと調べてみよう。」
「【マーキング】、40番。」
「【ロックオン】、40番。」
「【ステータス】。」
『雌鶏
HP 87/103
MP 89/89
SP 651/809
状態異常:-
スキル:-』
「鶏だった。もう一匹見てみるね。」
「【マーキング】、41番。」
「【ロックオン】、41番。」
「【ステータス】。」
『雌鶏
HP 98/133
MP 90/90
SP 902/1010
状態異常:-
スキル:-』
「やっぱり鶏だね。」
「卵。」
「ああ、卵を産むかもしれないね。」
「捕まえよう。」
「飼うの?」
「飼う。卵を食べる。全部連れて帰る。」
「【マーキング】しておけばまた見つけられるけど。飼うのは飼育環境を整えてからでもいいんじゃない?」
「っ!?大和が優秀過ぎる!!」
「ありがとう。それじゃあ20匹くらいいるけど、何匹かマーキングしておこう。」
鶏を5匹、40番から44番にマーキングしておいた。
「どうする?卵があれば奪って帰る?」
「今日の所は止めておく。探索大成功。拠点に帰ろう。」
「荷物置きのために一旦転移するなら良いけど、探索はまだ続けるからね。鶏を驚かしたくないから少し離れてから転移しよう。」
「分かった。」
佐藤さんをターゲットにして転移で拠点に戻ると当然ながら佐藤さんの目の前だ。
「わぁっ!あ、驚いたよ。大和君、雪ちゃん、お帰りー。」
「ただいま。今思ったんだけど、この転移は佐藤さんがトイレ中とかだったら大変だな。」
「えぇ!それは駄目だよ!!」
「もちろん駄目だよね。何か拠点の物を【マーキング】しておこう。」
廊下に適当な物を置いておき、それを転移先にすれば事故が防止できる。事故が起こる前に気付いて良かった。
「とりあえず収穫した物を置きに来たのと、お昼ご飯が食べたいなと思ったんだけど、みんなはどうしてるのかな?」
「七菜ちゃんがちょうど外でお昼ご飯を作ってるよ。ソフィアちゃんも手伝ってると思う。甘野さんと橋基君とゴブ吉君は洞窟を隠すんだって言って聖剣で木を切り倒そうとしてたけど、まだ作業中かな。」
「聖剣の用途が哀れだけど、木を切り倒して木材にしようってことだよね。上手くいったら分けてもらおう。」
「【ホームへの扉】は開けっ放しにしてあるから、お昼ご飯が出来たら七菜ちゃんが持ってきてくれると思うよ。」
「それじゃあ待たせてもらおうかな。」
「うん。それでね。2つ目の部屋を拡張したの。でもまだ空調を設置しただけで照明も無いんだけどね。お風呂に出来ないかなと思ってるの。」
「お風呂か。そうだね。良いと思う。でも最低限、照明と水道と排水は増設しないとね。手作りでシャワーとかを作れると良いかもね。でもその前にトイレの便座かなぁ。」
「便座なんて作れるの?」
「流石に陶器のは無理だよ。でも木で椅子を作って廃棄口の上に座れるようにする位なら出来るんじゃないかな。」
「そっか。それなら出来そうだね。」
「うん。自動水洗はまだ難しそうだけど、バケツで水を流すとかなら可能だと思うし、色々とカスタマイズしていけたらいいよね。」
「何だか秘密基地を作るみたいで楽しそう!私がやってもいい!?」
佐藤さんはやる気を出している。良いことだ。
「もちろんいいよ。一緒に頑張ろう。」
「ホームの中でも工作ならできるよね!?良かった~。料理は匂いがこもるから外ですることって言われて、私はMP温存で中に待機って言われて私だけすること無かったんだよね。やることができて嬉しいな。」
喜んでいる佐藤さん、可愛いなぁ。
俺が喜ぶ佐藤さんを見ながらニヤニヤしていると、飯田さんが鍋を持ってホームに入ってきた。
「あっ、大和さんたちも戻ってたんですね。ちょうど良かったです。お昼ご飯が出来ましたので一緒に食べましょう。」