寛治、目を奪われて。
こんなことを言うのは欲張りかもしれませんが、
やっぱり一人でも多くの人に読んでいただきたいのです。
どうすればいいのか、アドバイスをいただけませんでしょうか?
寛治はおっ父と町に行きます。どうなる?
では、どうぞ。
5
おらが神社にお参りするのは、それからも毎日続けた。
りっちゃんには、逢うことも声を聴くこともできなかったが、おらがこうして逢いに来ていること、手を合わせていることは、ちゃんと見てもらえているわかってもらえているという確信があった。
雪は相変わらず降ったりやんだりした。
ここ久澄村に足を運んで話を聞きに来る人たちも、秋の頃と比較すると半分くらいに推移した。
五人から十人くらいだ。
でも一人も来ない日はなかった。
冬場は足が遠のくだろうとは思っていて、それはその通りだったが、正月には久澄村神社にお参りに来た人が、その足でおらの家にやってきて、話をせがんだ。
朝から暮れまでひっきりなしだ。
しろへび様が豊穣祭りを楽しんでいたという話はこのときから話すようにした。
正月だからだろう、お駄賃はお年玉価格になっていた。
全部の包みを広げると、おらたち子どもらが見たことのない大金があった。
そのうえ、三が日が過ぎて少ししてから、神主さんがまたお賽銭やお布施のお裾分けを持ってきた。
はっきりと金額を確認したわけではないので間違いの可能性もあるが、きっと大金だ。
おらたち子どもらは部屋から出され、大人たちだけでやり取りをしたのだ。
参拝客はこれまでの何倍も来ていたから、お賽銭とかお布施なんかも何倍にもなったのだろう。
おらは神主さんがうちにお金を持ってくるのがいいことなのか、悪いことなのかはてんで考えなかったが、お金をもらえればおっ父とおっ母が楽できるわけだから、単純に嬉しかった。
だから、近隣の町村のなかで一番大きな町の町長さんに、しろへび様の話を聞かせに来てほしいとの手紙をもらったときは、きっと決して少しではない謝礼がもらえると、おらは小躍りして疑わなかった。
実際、町に行って町長さんのお屋敷で町長さんの家族やら友人やらの前でしろへび様の話を語って聞かせた後でおっ父が受け取った封筒には、厚みがあった。
もてなしを受けたおらとおっ父はお屋敷を後にし、ぶらぶらと町を歩いていた。
「なあ、おっ父、いくらあっただ?」
おらは訊いた。
「言うもんでねえ。こういうのは金額でねえ。気持ちだ。それにお金もらってすぐに、いくらあんだっぺ、なんて指舐めて金勘定するのなんて、意地汚ねえべ。そういうことは、したらいけねえ」
確かにその通りだと、おらはひとつ教わった。
歩いていると店屋の並ぶ通りに出た。
人でにぎわっていて、物珍しさにおらはキョロキョロとした。
するとおっ父が、なんかお土産でも、買っていくべ、と提案した。
いい着想だと思った。
この歳になって、この町には年に何回かは来るようになったけれども、いざお土産を買うとなるとどの店で何を買ったらよいものかと悩んでしまう。
でもおっ父は大したもので、おっ母にはあれ、子どもらにはこれ、とお土産を買うと決めた時点で目星をつけていたらしい。
迷ったりはせずに買い物を済ませた。
おらには、なんか欲しい物あるか、何でも言うだけ言ってみろ、と笑いかけた。
笑いかけられておらはさらに悩んだ。
店はいろいろあるし、品物も同じだ。
そのたくさんの輝く商品の中からおらはいったい何が一番欲しいのか、おら自身にもわからなかった。
光った。
冬の太陽に、それは光った。
おらは足を止めて確認した。
二、三歩歩いて振り返ったおっ父は、どうした? と訊いた。
おらは光の発信源を見ながら、なんか光っただ、と答えた。
そして歩み寄った。
正体は髪飾りについた宝石だった。
水色のそれはりっちゃんの瞳に似た色で、近づいてようく観察すると、光の角度を変えると宝石の奥の色も変わっていった。
「これ、いくらですか」
とおっ父が訊いた。
「おっ父、こんな綺麗な石、高価な髪飾り、おら買わねえだよ」
おらは慌てた。
いくら町長さんに大金をもらった後だからって、いくらおらが欲しそうにしていたからって、子どもの買うものじゃねえことくらいは、おらにだってわかる。
「これ、お安くしておきますよ」
応対した店の若い女性は、にっこりと微笑んだ。
お安くって言ったって、とおらはおっ父の手を引いて店から離れようかと思ったが、値段を聞いてみたら思いの外、安かった。
これなら買えるんじゃ、とおっ父を見ると、おっ父は財布から金を出していた。
「毎度、ありがとうございます。以後、御贔屓に」
と愛想のいい笑顔を背中に受けた。
歩きながら、こんなに高価なもの、いいのげ、と訊いた。
「いいんだ。これ、内緒にしとこうな。そのほうがいいべ?」
とおっ父には全部見透かされていただ。
「誰か、なんて訊かねえからな。そうか、寛治もそういう年頃になったが」
恥ずかしくて、恥ずかしくて、でも嘘をつくのも嫌で、おらは黙るしかなかった。
そう、おらはりっちゃんに贈りたくなったのだ。
りっちゃんの瞳と同じ色の宝石のついた、りっちゃんの金に白を混ぜたような綺麗な髪によく映えそうな、髪飾りを。
懐に、仕舞っとけ。
おっ父は言って、おらに手渡した。
言われた通り、おらは大事に仕舞った。
子どもを狙ったスリだって、いないとは言えないから。
用事は全部片した。
これから村に帰れば、夕暮れ中には着くだろう。
きっとおっ母が晩ご飯を作っている頃だ。
おっ父のお土産で、きっとみんな笑顔になる。
さあ、おっ父、村さ帰っぺ。おらは勇んで、帰路についた。
町から家に帰る途中には、だいちゃんの家がある。
そこに人が集まっていた。
おっ父は荷物をおらに預けて走り出した。
おらは歩いていった。
近づくにつれてただならない雰囲気が伝わってきて、おらは怖くなった。
聞かずに済めばよかった。
だいちゃんが、神隠しにあったらしい。
今日は、もう一話、投稿できそうです。
誰も期待してねえよ、なんて言わないでくださいね。
では、また。




