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久澄村エルフ奇譚   作者: 小町 翔平
21/39

寛治、少しだけしょんぼりとして。

今日も警報級の大雨が降るらしいですね。

みなさんがお住まいの地域は、大丈夫ですか?


寛治は雪の中でしばしの〇〇〇をします。


では、どうぞ。


 おらはそのことを告げた。

 りっちゃんは、


「いいじゃない。また逢えるのが楽しみになって、そのときまで頑張ろうって思えるでしょ」


 と笑った。

 確かにそうだと、おらも笑った。


「今度はいつ、逢えるだ?」

「……たぶん春になる前には」とりっちゃんは困ったように笑っただ。「でも、御神木まで来てくれれば、そのときに、また魔法で会話はできるかもしれないわ。あんまり期待されても困るけど」


 わかっただ、おら、また毎日手を合わせに来るだ、約束だ、そう言っただ。

 少しだけしょんぼりとして。

 りっちゃんは元気に肯いた。


「目をつぶって」


 何のことかと首を傾げていると、おらが目をつぶる前に相撲で組み合うみたいに腰に手を回してきた。

 おらは驚いて目をぎゅっとつぶった。

 目を開けたら御神木のすぐ近くだった。


「あのときもこうやって運んだのよ」


 じゃあまたね、そう言い残してりっちゃんは消えていった。

 本当に、身体が少しずつ透明になっていったのだ。


 りっちゃんがいた辺りをぼんやりと見ていると、忘れていた記憶が蘇り、しまった、聞きそびれた、と思ってももう後の祭りだった。

 明日の朝にでも御神木に語りかけてみようと、今度はいつ逢えるんだろうと、おらはお社のほうに歩いていった。


 日向の雪は水っぽくなっていた。

 誰かに出くわしたらどうしようかと、そろりそろりと歩いただ。

 お社から鳥居までの石畳には少数の人の足跡しかなくて、この雪だから、今日はおらのところにしろへび様の話を聞きに来る人も少ないだろうと踏んだ。

 だけど、階段に差しかかると、上ってくる一行がいた。

 おらに気がついて声をかけてきてた。

 しろへび様の御子でねえげ? と。


 おらの与り知らないところで様々な形に膨らんでいくおらの評判に、少し困惑しながらも、笑顔を作って、今から帰って昼飯食うから、話を聞きたいんならその後にしてくんちぇと愛想をよくした。

 尾ひれのついた噂話を鵜呑みにする人たちのなかには、昼飯を食ってから行くから、そのときはよろしく、お願いします、と子どものおらに深々と頭を下げる人もいた。

 恐縮した。


 そうだ、今日はしろへび様が豊穣祭りを楽しんでいたという話を加えよう。

 毎年楽しみにしていると、踊りをとても気に入っていると話したら、今度はどんな風に尾ひれがつくのだろう。

 おらは可笑しくなった。


 おらはりっちゃんを「しろへび様」だと思っている。

 りっちゃんの言うことをしろへび様の発言に等しいと思っている。

 りっちゃんはやんわりと否定した。

 でも、確か、女神様かと問われて、違う、と言っただけだ。

 おらの記憶が確かなら、へびに見える? とも言ったけど、あたしはしろへび様ではないとはっきり否定したわけではないのだ。


 おらはなにもりっちゃんがしろへび様だと断定したわけではない。

 しろへび様だと思いながらも一方では確証がないのだから違うのかもしれないとも思っている。

 思いながら、おらはりっちゃんの発言をしろへび様のものとして話している。

 だから矛盾しているのかもしれない。

 でも矛盾していたとしても、おらにとっては正解なのだ。

 矛盾が正解だなんて、支離滅裂な意見だろうけど。


 家に帰ったら、しろへび様に逢えたと言おう。

 兄弟らはどんな顔をするだろう。

 おっ父やおっ母はどんな顔をするだろう。

 でもさっきの人たちにそれを話したら、神社には行き辛くなってしまうのが容易に推測できる。

 やっぱり今回は伏せておこう、あの人たちには悪いけれど。


 おらはただいまと玄関を開けた。



次に会える日を楽しみにして、寛治は過ごします。

忘れている人もいらっしゃるかもしれませんが、

寛治は小学五年生です。今、小学五年生の人が聞いたら

「んなことねえよ」って思われるかもしれませんが、

まだまだ子どもです。でも、毎日少しずつ成長していきます。


では、また。

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