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「あなたがサラさんですね?」


 モニカはむうっと頬を膨らませながら言った。


 毎晩恋人の寝室に通う元カノに対する威嚇かもしれない。


「ええ。そうだけど」


「ふーん」


 覗き込むようにして私をジロジロと観察するモニカ。


 くんくんと私の匂いを嗅いでいる。


「な、何かしら……?」


「本当に耳かきをしに来てるだけなんですねえと思って」


「……はい?」


「雌の匂いはしないから安心しました」


 私を観察し終えるとモニカは満足そうにうんうんと首を縦に振った。


 と、せっかくの機会なので私はモニカに聞いてみることにした。


「ねえ、私が毎晩ランパードの寝室に通っているのはどう思ってるの?」


「ーーっ!」


 私の問いかけにモニカは目を見開いた。


 ランパードは「大丈夫だ」みたいなことを言っていたけれど、どうやら違うみたいだった。


「……納得してない、とか?」


「ななな、納得はしてますよ」


 モニカは声をひきつらせる。


「ランパード様が不眠でなかなか眠れないから、安眠効果のある耳かきをあなたにお願いしているって、ちゃんと説明されてますもんっ!」


 モニカはまた頬を膨らませた。


「だから別に私には嫉妬とか不安とか、そんな感情はこれっぽっちもありませんっ!」


 いや、あるでしょ。


 あるって言ってるようなもんだよ、それ。


「違いますっ! 別に悔しくないですもんっ! あなたではなく私がランパード様の傍にいたいだなんて思ってないですもんっ!」


 はいはい。


 モニカさんの気持ちは分かりましたよ。


「それなら私じゃなくて、あなたがランパードに耳かきをすればいいんじゃないの?」


「そ、それは……」


 私の疑問にモニカは俯いた。


 そもそもランパードには新しい恋人が出来たのだから、わざわざ私を呼ぶ必要なんてあるのか?


「ランパード様は私の耳かきでは眠れないんです……たぶん、あなたの耳かきでないとダメなんだと思います」


 なるほど。


 耳かきに差なんてないものだと思っていたけれど、人によって良し悪しはあるらしい。


 まあ、ランパードの場合は不眠が改善されたきっかけが私の耳かきだっていう思い込みが強いんだろうけど。


「でも、耳かきが出来るからっていつまでもランパード様の傍に来れると想わないでくださいよっ」


 ビシィっとモニカは私を指差した。


「いつか私もランパード様を安眠させられる耳かきを会得してあなたの出番をなくして差し上げますからっ!」


 いや、正直そっちの方が助かるんだけどね。


 ランパードと夜を過ごせないモニカが気の毒だし、代わりに私がランパードの傍にいるのも申し訳ないし。


 ただ、私の心に少しだけモニカに対して勝ち誇ったような感情があるのは、私が嫌な女だからかもしれない。


「いつまでもランパード様の恋人のつもりでいないでくださいねっ」


 モニカの瞳には薄く涙が浮かんでいた。


「そんなつもりはないけれど……。まあ、あなたの耳かきが上達することを期待しているわ。じゃあ、おやすみなさい」


 そう言って私はモニカの前から去る。


 これ以上話していても互いにとって良くないだろうから。

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