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『解任請負人』  作者: 二交代の看護師
第三部 ホスピス編
93/108

第93話 【ランキング】


月初。


全国施設長会議。


大型モニターには全国の施設長が映し出されていた。


西田も同席している。


管理職候補として参加するようになってから三回目だった。


会議はいつも通り始まる。


入居率。


採用率。


離職率。


そして。


訪問看護実績。


画面が切り替わる。


一覧表。


施設名。


数字。


順位。


ランキングだった。


西田の眉が動く。


「順位?」


思わず呟く。


本社担当者は笑顔だった。


「全国の好事例を共有するためです」


好事例。


その言葉に違和感はない。


だが。


ランキングの一位から三位までの施設には星印が付いていた。


「来月の表彰対象です」


会議室が少しざわつく。


表彰。


それだけなら問題ない。


だが。


西田は気付く。


ランキング上位施設には共通点があった。


訪問件数が多い。


複数名訪問も多い。


そして利益率も高い。


会議終了後。


施設長が資料を閉じる。


西田は聞いた。


「こういうの前からあるんですか?」


「ありますよ」


施設長は苦笑した。


「株式会社ですから」


またその言葉だった。


株式会社。


西田は窓の外を見る。


間違っているとは思わない。


営業会社なら当たり前。


メーカーでも当たり前。


だが。


介護や看護で順位を付けることに、


少しだけ戸惑いがあった。


「気にしなくていいですよ」


施設長が言う。


「現場が良いケアを続ければいい」


その言葉には救われた。


同時に。


どこかで安心した自分もいた。


夜。


高梨はナースステーションにいた。


看護主任が嬉しそうに話している。


「うち全国六位だって」


「すごいですね」


若い看護師が答える。


「頑張ったもんね」


明るい雰囲気。


誰も悪意はない。


誰も不正しようと思っていない。


ただ。


成果を評価されているだけ。


その時だった。


主任が何気なく言う。


「来月は五位以内いきたいな」


笑いながら。


冗談みたいに。


だが。


高梨は笑えなかった。


五位以内。


それは目標になる。


目標は行動を変える。


そして行動は現場を変える。


そのことを知っていた。


翌日。


榊は施設長へ聞いていた。


「ランキング?」


「ええ」


施設長は隠さなかった。


「全国比較ですね」


「目的は」


「業務改善です」


それも事実だった。


実際に上位施設の取り組みを学ぶ機会になっている。


だから否定できない。


だが。


榊は一つ気になった。


「順位が下がるとどうなります?」


施設長は少しだけ黙った。


そして笑う。


「別に何も」


その返答は自然だった。


だが。


榊は気付いた。


施設長が初めて視線を逸らしたことに。


ホテル。


夜。


榊はノートを開く。


これまで書いてきたメモの横に、


新しい言葉を書き加える。


『不正は命令から始まらない』


しばらく考える。


そして続けて書く。


『競争から始まる』


ページを閉じる。


外では雨が降っていた。


その雨音を聞きながら、


榊は初めて思った。


もしかすると。


この施設を壊すのは、


高梨ではないのかもしれない。



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