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『解任請負人』  作者: 二交代の看護師
第一部 病院編
27/108

第27話 【二人の遥】


「……え?」


遥の声が震える。


モニターの中。


確かに“宮下遥”が映っていた。


看護師服。


髪型。


立ち方まで同じ。


管理棟ロビーで、誰かと話している。


柴崎刑事が眉をひそめる。


「録画映像か?」


玲奈はすぐ首を横に振った。


「違う。リアルタイム」


空気が凍る。


遥は思わず自分の腕を掴む。


意味がわからない。


今、自分はここにいる。


なのに。


モニターの中にも“自分”がいる。


榊真司だけは冷静だった。


いや、冷静というより。


何かを理解した顔だった。


「……なるほど」


柴崎が振り向く。


「何かわかったのか」


榊はモニターを見たまま言う。


「“似せてる”んですよ」


「似せてる?」


玲奈が小さく頷く。


「修司のやり方」


遥が息を呑む。


モニターの中の“遥”は、

ロビーで若い警察官に話しかけていた。


そして。


こちらを向く。


遥の背筋が凍る。


顔が似ているだけじゃない。


表情まで似ている。


だが決定的に違うものがあった。


——目。


感情が薄い。


まるで演じている。


榊が低く言う。


「本人じゃない」


柴崎が険しい顔になる。


「替え玉か?」


玲奈は静かに答える。


「“観察”よ」


「観察?」


玲奈は研究室の机に置かれた資料を見つめた。


「修司は昔から、人間の反応を見るのが好きだった」


遥が寒気を覚える。


玲奈は続けた。


「誰が壊れるか。誰が沈黙するか。誰が罪悪感を抱えるか」


榊の顔が少しだけ歪む。


玲奈はそれに気づいていた。


「真司くんも、昔ずっと見られてた」


沈黙。


その時。


モニターの中の“遥”が、

突然こちらを向いて笑った。


画面越しに。


まるで、ここが見えているみたいに。


遥の呼吸が止まる。


次の瞬間。


研究室のスピーカーから声が流れた。


ノイズ混じり。


そして。


榊原修司の声。


> 『再会は済んだか?』


榊の目が細くなる。


修司は続ける。


> 『玲奈、そこから動くなと言ったはずだ』


玲奈の顔色が変わる。


初めて恐怖が浮かぶ。


遥は気づく。


玲奈は修司を恐れている。


夫としてじゃない。


もっと別の存在として。


修司の声は穏やかだった。


だが異常に冷たい。


> 『真司。君は昔から勘がいい』


> 『だから本当に困る』


モニターの中の“遥”が、

ゆっくりロビーを歩き始める。


その後ろ。


スーツ姿の男がいた。


メディカルリンク職員。


そして修司の声。


> 『君たちは今、“病院の中”を見ているつもりだろう』


短い沈黙。


そして。


> 『でももう、とっくに外へ出てる』




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