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『解任請負人』  作者: 二交代の看護師
第一部 病院編
19/108

第19話 【地下駐車場】



旧棟地下駐車場は、封鎖されていた。


パトランプの赤色が、コンクリート壁を鈍く照らしている。


遥は思わず足を止めた。


空気が冷たい。


湿っている。


そして血の匂いがした。


「……こっちです」


警官に案内され、柴崎刑事と榊真司が奥へ向かう。


駐車場の隅。


白線の横。


片桐誠は倒れていた。


スーツ姿のまま。


後頭部から出血。


近くには割れたスマホ。


争った跡は少ない。


だが妙だった。


榊は遺体のそばへしゃがみ込む。


視線が止まる。


「……靴」


柴崎も気づく。


片桐の革靴。


右足だけ脱げていた。


遥の背筋が寒くなる。


高坂師長と同じ。


偶然とは思えない。


鑑識が近づく。


「転倒による頭部損傷の可能性。ただ——」


「ただ?」


「ポケットの中にこれが」


証拠袋が差し出される。


中にはUSBメモリ。


黒い、小さなUSB。


地下倉庫で見たものと同じ型。


榊の目が細くなる。


「……回収役だったか」


柴崎が聞く。


「どういう意味だ」


「片桐は“処理担当”ですよ。現場の火消し係」


榊は片桐の遺体を見る。


「でも今、処理された」


空気が重く沈む。


遥が小さく言う。


「じゃあ……本当にまだ上がいるんですか」


榊は答えない。


代わりに片桐の手元を見ていた。


右手。


爪の間に、白い粉末のようなものが付着している。


鑑識も気づく。


「採取します」


その時。


柴崎の携帯が鳴った。


通話を取る。


数秒後、表情が変わる。


「……何?」


周囲が静まる。


柴崎はゆっくり榊を見た。


「監視カメラだ」


遥が緊張する。


柴崎は続けた。


「片桐が死ぬ十分前、この地下駐車場に入った人物が映ってる」


沈黙。


「誰ですか」


柴崎は答えた。


「榊真司」


空気が凍る。


遥の呼吸が止まる。


だが榊は動じなかった。


むしろ、少しだけ考えるような顔をした。


「……なるほど」


柴崎が低く言う。


「説明できるか」


榊は数秒黙った。


そして静かに言う。


「できますよ」


「じゃあ話せ」


榊は地下駐車場の奥を見た。


暗い搬入口。


古いシャッター。


その先。


「その前に確認したい」


「何を」


榊の声が低くなる。


「監視カメラ映像、“どこから提出されました?”」


柴崎が眉をひそめる。


「警備室だ」


榊は小さく笑った。


乾いた笑い。


「じゃあアウトですね」


遥が混乱する。


「え……?」


榊は静かに言った。


「この病院の監視カメラ管理、メディカルリンク外注です」

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