第八十夜:初めての
2日間投稿出来ませんでしたすみません。
この前毎日投稿するって言ったばかりなのに泣。
今後は2、3日開くこともあるかもしれませんが必ず完結させます。
女性が4人分の品物をトレイに乗せて運んでくる。
トレイには四つも品物が乗っているのに、ふらふらとすることなく、しっかりとした足並みでこちらへ向かってくる。
まずは護衛たち4人の分の品物をテーブルに並べていく。
それぞれパンや飲み物など、女性は一人ひとりの前へ品物を正確に差し出す。
「リアムさん達のもすぐに持ってくるので、少し待っていてくださいね」
店の店員はこの女性1人のようで、全員分の品物を運ぶには2回に分けて運ぶ必要がある。
厨房に何人いるのか分からないが、接客が1人なら厨房もそれくらいの人数だと考えると、女性は全員分の品物を作り終えてからこうして運んできてくれたのだと思う。
女性は1分程度でリアムたち4人分の品物を持って戻ってきて、シンシアとイルゼの元にプリンを、リオの元にクリームソーダを配膳した。
「ありがとう、誰の品物か覚えているのね」
「皆さんはいつも来てくれているので、自然に覚えていますし、2人分ならすぐに覚えられますから」
カップがテーブルに置かれて、カチャンと小さく音を立てる。
女性はシンシアを見つめて唇を緩めてふっと微笑んだ。
「ここのプリン、私もおすすめなんです。きっとあなたも気にいりますよ」
「楽しみだわ」
シンシアにプリンを勧めると、彼女は一礼して去っていった。
目の前に座るリアムは何を頼んだのかと見てみると、果物やプリン、クリームが大ぶりのお皿に盛り付けられたものが置かれていた。
イルゼがプリンを甘いと言っていたし、果物は言わずもがなだ。
え、これってリアムが頼んだものよね?
失礼だとは分かりつつも、ついリアムと品物を見比べてしまう。
なんとなくリアムはコーヒーを飲んでいそうだったから。
「あー、リアムが甘いの頼むの、初めて見るとびっくりするよな」
護衛の男が品物とリアムを見比べるシンシアを見て、ははっと笑い声をあげる。
その言葉を聞いたイルゼも頬を掻いて控えめな笑い声を漏らす。
「リアムも甘いものが好きなんだね。師弟って感じがするよ」
リオが左手を机について頬に当ててくすりと笑みをこぼす。
「昔っから甘いものが好きでな、よく娘にも揶揄われる。こっちは頭使うから甘いものくらい食べたくなるんだって言い返してるよ」
さっそくスプーンを手に取り、プリンとクリームを口に入れ、何も言わずにうんうんと頷いたリアムは、照れる様子無くそう言う。
「俺らも初めて見た時驚いたからなー。ははっ、何年前だったか初めて見た時もこんな風に会話したよ」
「甘いもの好きで何が悪いんだ」
コーヒーを片手に懐かしそうに話す男をリアムがじろりと睨みつける。
「いーや、何でもない。ほら、初めてのプリンの感想を聞かせてくれ」
「あはは、シンシアさん、食べてみてください」
2人はぎこちなく笑みを浮かべると、シンシアにそう言った。
「ええ、そうするわ」
スプーンを手に取って、プリンを一口掬う。
運ばれている時も思ったが、ぷるぷると揺れる姿が可愛い。
少し動かしただけでも揺れるから、柔らかいのかと思ったら、思ったよりも弾力がある。
冷たくて、甘い。
カラメルの濃い甘さが口に広がって、その後はプリン本来の優しい甘みが残る。
とろっとした感じじゃ無くて、さらりとすっきりする甘さだから、一口食べ終わった後にもう一度食べたくなる。
「好きな味だわ」
持った時は冷たく感じたスプーンが、肌に馴染んでちょうどいい温度に感じる。
「ほ、本当ですか? 嬉しいです!」
シンシアが食べる様子を両手を握りしめてじっと見つめていたイルゼが、目を見開いて嬉しそうにそう言った。
「ふふっ、良かったね2人とも」
プリンを初めて食べるシンシアと、それを緊張した様子で見つめるイルゼを温かく見守っていたリオが、頬杖をついて微笑む。
「そのくらいの歳の子はみーんなプリンが好きだよな!」
「でもお嬢様なシンシアの口にあって良かった」
「ここのプリンはリアムも美味いっていうんだから、分かってたけど口にあって良かったな」
護衛の4人もシンシアがプリンを食べるのは初めてだと言ったために、こちらを覗き込みながら口々に安堵の言葉を漏らし始めた。
「シア、クリームソーダも美味しいよ」
リオがクリームソーダをシンシアの方へと寄せ、ストローを差し出してくる。
クリームソーダをリオが飲んだ形跡は無く、ストローは白いままだ。
「でも、これはリオのでしょう。貴方が先に飲むべきじゃない?」
自分が一口目を貰って良いのかと不思議に思ったシンシアは、首を振る。
「わたしはクリームソーダを飲んだことがあるから、気にしないで。まずは一口飲んでから、上のアイスを食べるとすごく美味しいよ。あーん」
気にしないでと言いながら、グラスを持ち上げ、口元にストローを持ってきてシンシアに飲ませようとしてくるリオからは、早く飲んでという無言の意思表示を感じる。
「ありがとう、頂くわ」
これは逃れられないと悟ったシンシアは、ストローに口をつけてクリームソーダを飲んだ。
想像していなかった刺激に咄嗟にストローから口を離す。
手を口に当てて、リオを見つめる。
「あははっ、ごめん。しゅわしゅわするよって先に言っておけば良かったね。びっくりさせちゃった」
リオはグラスをテーブルに置いて、目をぱちりと瞬きしてから笑った。
「びっくりしたわ。口の中で急に何かが弾けたのかと思った」
本当にびっくりした。
「ごめんね、そんな反応をすると思わなくて。ふふっ、可愛い。はい、あーん」
リオは先程よりも距離をとったシンシアの口元へスプーンで掬ったアイスを持って行き、食べさせた。
あーんという声に合わせて、口を開け、アイスを食べる。
さっき飲んだソーダの味と、バニラアイスがじゅわりと溶けて、柔らかい甘みと刺激的な甘みが混ざる。
さっきのぱちぱちと弾けるのとは違うなめらかな食感に落ち着く。
「……美味しい」
プリンとはまた違った美味しさだ。
「でしょ。ふふっ、シアにも味わって欲しくて」
先程までのリオを非難するような視線を送っていたシンシアだったが、クリームソーダの美味しさに頬を緩めるシンシアに、リオは満足そうに頷き、自分もクリームソーダをストローで飲む。
「イルゼのおすすめも、リオのおすすめも美味しかったわ」
プリンをスプーンで掬って、口元に運ぶ。
「はい、お礼にプリンを一口あげるわ」
リオは不思議そうにシンシアを見つめていたが、お礼だというと口を開けてシンシアがプリンを口に入れるのを待った。
「あーん」
リオがしてくれたように、優しく口に入れる。
「うん、美味しい! ありがとう」
リオはふふっと微笑んでシンシアの頭を撫でる。
「2人は本当に仲が良いなぁ。姉妹というか、恋人にすら見える」
シンシアたちと同じ荷馬車に乗っていた男は、顎に手を当てて、うんうんと頷いてそんなことを言っていたので、シンシアは反応に困った。
「あははっ、姉妹の次は恋人かい? やだなあ、恋なんて軽い言葉では言い表せないくらい、シアのことを大切に思ってるよ」
そんなシンシアとは対照的に、リオはシンシアの手を取って深く握るとそんなことを言ったのだ。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字、表現のミスがあったらそっと教えてくれると嬉しいです。




