表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とこしえの2人  作者: 雪月
第一章:ひとりぼっちが、ひとりぼっちに出会う
10/33

第十夜:わたしを"出会い"にしてほしいんだ

10話行きましたー!


今回は少し長めです。2人の距離がいい感じに縮まって行ってます。



 「こんばんは、シア。今夜も素敵な月だね。」



 「……今日も来たのね、リオ。」



 「ふふっ、もちろん。……シアは会いたくなかった?」



 「……そうでもないわ。」


 

 「あははっ、うんうん。わたしも会いたかったんだ。」



 「……そう。」



 まさか彼女、毎日この屋敷を訪れるつもりだろうか。


 3日連続でシンシアの目の前に突然パッと現れ、初めて会った時と同じように爽やかな香りを纏い、手を差し伸べて挨拶をしてくる。



 彼女が突然姿を現すと、サッと風が吹いては白銀の花々を揺らし、たちまち爽やかな香りをシアの元に届けるのだ。



 相変わらず彼女は出会った時と同じように美しい。



 彼女と会うのに嫌な気はしないが、会いたいと思っているかは正直なところ、まだ分からない。

 


 いつものように美しい顔を綻ばせながら「会いたかった」と言うものだから、悪い気はしない。


 少し目を瞬いたのち、いつものようにお人形のように答える。


 けれど否定はせずに、受け止めて。



 彼女はシンシアが答えるのを楽しそうににこにこと微笑んで見つめている。



 シンシアが答え終わったら、話しながらシンシアの隣、肩と肩が触れてしまいそうな距離に腰を下ろしてくる。

 

 シンシアの瞳を見つめ、にこにこと楽しそうに。



 そう行動するのが当たり前のように近くに座ってくるのだ。



 これもまた、嫌な気はしないから拒まない。



 そうしてしばらくの間、2人に静寂が訪れる。



 シンシアは月を無表情に見つめ、時折白銀の花々に視線を移す。

 

 リオはそんなシンシアの瞳を、横から優しくじっと見つめ、それから彼女の目線の先に目を向けては、時折彼女を見つめる。



 お互いの落ち着いた呼吸だけが聞こえるが、気まずくはない。



 「……今日は何を話すの。」


 

 「……そうだなぁ、わたしはシアの話を聞いてみたいな。」



 「……何もないわ。話せるほどの出来事は無かったもの。」


 

 シンシアは幼い頃に2人がいなくなって以来、特に変わらない日々を1人で過ごしてきた。シンシア自身について語れることは、直ぐにはあまり思い浮かばなかった。


 「じゃあ、前に言っていたレイリアとオリアナの話を聞きたいかな。」



 「……レイリアとオリアナはずっと私の傍にいたわ。……今はわからないけれど。3人でよくこの庭を散歩したの。」



 サーっと風が2人の髪を靡かせる。



 「……じゃあ、この庭はシアにとって沢山の思い出があるんだね」



 「……うん。春は、出会いと別れの季節だってよく言っていたわ。」



 「出会いと別れの季節?……不思議な表現だね。」



 リオは瞬きをして、少し不思議そうに声を上げた。


 「遠い東の国で使われてるそうよ……レイリアがそう言ってた。」



 幼い頃、2人と過ごした日々が脳裏に浮かぶ。


 2人はチェリーブロッサムの花が咲くたびにこの話をしていたから、よく覚えている。

 

 

 そして毎回、オリアナが「お嬢様はどのようなお方と出会うのでしょうね!」なんて言うのだ。


 その度にレイリアが「まだ気が早いわよ、うふふっ」と返すから、自然と「春は出会いと別れの季節」だと違和感なく覚えてしまった。


 

 「東の国……!それならあまり聞き馴染みがないのも無理はないのかも。ここではあまり東の国は知られていないから」



 「……そう。」



 「出会いと別れの季節……。なぜそのように言われるのか、シアは知っているかい?」



 「……知らないわ。……でも、出会いと別れなんて思わない。わたしにとってこの季節は別れの季節でしかないもの……!……レイリアも、オリアナも、2人とも春の風に連れて行かれてしまったわ。……私には、別れしか運ばなかった。」



 たとえ東の国で出会いと別れの季節と言われようとも、シンシアにとっては別れの季節でしかない。



 心底憎そうに、けれどどこか諦めているかのように言う。



 「……そっか……2人はこの季節に……。だから泣いていたんだね、シア。」



 彼女の左手が、シンシアの右手にそっと優しく触れる。シンシアの冷たい手の甲を優しく温めるように、リオの手の平が包み込む。



 シンシアはそれ以上言葉を重ねることはできず、ただじっと彼女の手の平が自分の手を包み込むのを感じていた。


 

 2人はそうして先程よりも長い間、包み込んだ手はそのままに、一言も言葉を発しなかった。


 徐々にシンシアのささくれだった波のように複雑だった気持ちが落ち着いていく。



 「ねえ、シア。わたしを"出会い"にしてほしいんだ。……レイリアとオリアナが"別れ"なら、わたしが君の、シアの"出会い"になりたいんだ。」



 「リオを、出会いに……?」


 

 「うん。……シアは2人を思って泣いていたんだよね。だったら、わたしがシアを笑わせる存在になるよ。……そうしたら、シアの涙が少なくなると思って。」



 「……」



 「シアにとって、この季節は大切な2人を連れ去ってしまった別れの季節でしかない。なら、わたしを出会いにして、シアに出会いの季節だって思ってほしいんだ。……そうしたら、シアの気持ちも何か変わるかもしれない。」




 「出会いの、季節……?」



 「うん。今直ぐにじゃなくていいんだ。いつかシアが、別れの季節だけじゃなく出会いの季節でもあったって思ってくれたら……。2人を思ってシアが涙を流しても、わたしと過ごした日々を思い出して、涙がおさまるように。」



 言葉が出ない。そんな風に考えるなんて、シンシア1人なら思いつかないようなことだ。



 こんな風に暖かい言葉をかけられたのはいつぶりだろう。あの2人がいた頃と同じ感じがする。


 胸の辺りがぽかぽかして、欠けていた何かが満たされるような気持ちがする。



 少しだけのつもりだった。


 

 でも、そんなことを言われてしまったら、傍にいてほしいと、思ってしまう。



 「……りお……うん。出会いって、考えるようにする。」



 「……うん!これからもシアに会いにいくよ。」



 「……ありがとう!」




 自分だけじゃなくて彼女にもこの気持ちを分けたくて、昨日と同じ言葉を口に出す。



 泣きそうに、声を震わせながら、包み込まれた手をシンシアから握り返して——そう口にした。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字、表現の間違いなどがありましたらそっと教えて貰えると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ