第一夜:進まない時計
作者の雪と申します。
今作が初めての小説執筆となります。至らぬ点もあるかと思いますが、精一杯、心を込めて物語を紡いでいきたいと思っております。
しばらくの間、シンシアともう一人との「とこしえ」の物語を、どうぞよろしくお願いいたします。
とある国の誰も知らない森の中に、1人の美しい少女がおりました。
少女のことを知る人は誰1人いません。
その国の誰も存在を知らない少女。
月の光がそっと差し込む薄暗い森の中に、少女は1人で暮らしていました。
「わたしは、ずっとひとりなの……?」
月の光に照らされた白銀の水々しい花がたくさん咲いている庭で、少女はベンチに座って泣いていた。
少女の名前はシンシア・アルテミネ。
両親は物心つく前からいなかった。シンシアが誕生する時に母は亡くなり、父は母を追うように亡くなったという。
それ以降シンシアは屋敷の者たちに育てられた。
屋敷の主人である両親が亡くなってからというもの、屋敷の明るさは少しずつなくなっていった。
煌びやかなシャンデリアに照らされた絵画や花瓶は、まるで枯れた花のように輝きをなくし、大きな屋敷は静寂に包まれ、1人、また1人と屋敷を後にする足音だけが響く。
彼女が5つになる頃には使用人は乳母であるレイリアと、シンシア付きのメイドであるオリアナしか残っていなかった。
「お嬢様、お嬢様にはレイリアがおります。ずっと、ずぅっと。貴女のお傍に……。」
1人で着替えができるようになった頃だった。
「もし私が貴女様のお傍に姿がなくなったとしても、忘れてはなりません。……お嬢様の乳母であるレイリア・ホワイトが、貴女様をとてもとても大切に、愛していることを……。」
文字が書けるようになった頃だった。
「シンシアお嬢様……シンシア……貴女と出会えたことは、私の人生で1番の幸福でした……。どうか、悲しまないで。言ったでしょう?傍を離れないと……。姿が見えずとも、貴女の傍にいるわ。……愛しているわ、シンシア……。」
貴女に、手紙を書きたかった。
傍にいるって言ったじゃない。なんで、どうして……。愛してるって、言ったじゃない!私のそばにいてよ。
「お嬢様!またこんな時間にお庭にいらっしゃったんですか!!
お身体にさわりますよ、戻りましょう。」
眠れなくて、お庭に出たの。
「お嬢様、2人ぼっちになってしまいましたね……。ふふ、私はお嬢様を独り占めできて嬉しいですけど。
レイリアさんが居ない今なら、2人で色々な場所を旅できたりして……!」
オリアナはすぐこういう冗談を言う。わたし、まだまだ小さいのよ。もう少し待って。
「お嬢様……わたし、もうおばあちゃんになってしまいました。
夢だった2人だけの旅、できませんでしたね。2人でレイリアさんへのお土産、選びたかったなぁ……。」
最近、オリアナはベッドにいる時間が増えた。……わかってる、この後の結末くらい。でも、もう少しだけ、このままでいさせて。
「お嬢様……。愛しています……これまでも、これからも……。
これからのお嬢様の人生に、悲しいことが……ありませんように……幸せに、なってね……。」
わかってた。オリアナも、私のそばからいなくなってしまうことくらい。
オリアナには、手紙を書けた。でも、旅は……まだまだ行けそうにない。
愛してるって言ったのに。……みんな、いなくなってしまうのね。
最後までお読みいただきありがとうございます。
10話から12話にかけて、この物語の『本当の意味』が明かされます。
もし少しでも気になったら、そこまで見届けていただけると嬉しいです。
もし誤字や脱字など見つけられましたら、そっと教えていただけますと幸いです。




