3 雨晴れ アマハレ
「体育祭が終わったと思ったら今度は球技大会か……」
「俺的には中間テストが終わったと思ったら期末テストかって感じよ、憂鬱」
そう言いながら机でだらける一天を横目で見ながら、本を読み進める。学校に併設されている図書館は広くて所蔵数が多い。それを大いに活用している。タダで何冊読めるんだ、と考えただけで感謝しかない。
「はるくー、なによんでんの?」
後ろから思い切り飛びつかれて、咄嗟に振り返るとすごく近い位置に霄の顔があった。
「『隣の君は』って小説だよ」
「へー、おもしろい?」
「うん。彼女が殺人鬼な話なんだけど」
「え、何それ怖い」
「おもしろそうだね、おれもそれよもうかな」
いつも通り、一天のことはスルーして霄の髪に触れながら会話を進める。
「霄もミステリーよく読むの?」
「うん。けっこうすき」
「そっか。なんか趣味合いそうだな」
「ほんと? 本かしかりする?」
目を輝かせて身を乗り出してくる。なんか可愛いんだよな、なんて思いながら髪を撫でる手が少しはやくなってしまう。
桐と話が合ってたから、俺とは好み合わないかと思っていたが、興味の範囲が広いのかな。
「俺はあんま持ってないから、図書館でよく借りてるんだ」
「じゃあ、しょうかいしあおうよ」
「いいよ」
「そーやってまた、俺の事を仲間外れにするよね」
ふざけた事を言っているな、と無視して早速今読んでいた本を簡単に説明する。霄はそれを楽しそうに聞いていた。
一天はつまらなそうに口を尖らせながらも、去ろうとはしなかった。他にも友達はいるだろうに。
「それより、霄は何に出るの?」
「え、なにがぁ?」
一天が急に声をかけ、霄は驚いたのか体をビクつかせた。
「球技大会」
「あー、それね。サッカーとバスケ。二人は?」
「俺がバドミントンとソフトテニスで、晴空が野球の補欠」
霄の質問に、俺の分まで答えた一天はなぜだか満足そうだ。
まあいいか、と考えながら競技を決めた時のことを思い出した。
この学校の球技大会は、必ず一人一種目は補欠でもいいから選手登録しなくてはいけない。上限は決められていないが、スケジュール的に二、三種目が限界だと思う。
それにしても、霄がチームでやる種目に出て、一天が個人種目に出るってのがなかなか不思議な感じだ。性格的に、逆が向いてそうなのに。そもそも、クラスによってどの種目に出るか決められるっていう仕組みのせいって可能性もあるけど。
うちのクラスはバスケには出るけどサッカーには出ないはずだ。作戦上の都合で、クラスではサッカーと野球で多数決が行われて、野球経験者が偶然多かったから野球になった。
「はるく、ほけつなのか」
「そうだよ。本当は補欠でも嫌なくらいなんだけど……球技大会サボっても成績に響くから……仕方なく……」
「結果が影響することはなくても、サボりは減点対象になるんだったな、そういえば」
そんな決まりがなかったら確実にサボってた。まあ、その日にタイミング良く高熱でも出れば話は別だろうが、そんな嘘をつける自信はない。
出場種目を決めるとなった時に、俺は迷惑をなるべくかけないようにしたいと言ったら、野球の補欠にされた。野球は競技時間が被らない男子は全員選手登録する流れになったらしかった。一天はたしか、バドミントンが被っていたはずだ。
そして、俺は人数的に成り立たなくならない限り、試合には出なくていいという約束を交換条件に、何故か監督をするよう命じられた。ルールの勉強をして、作戦を立てろとの事だ。なるほど、運動が出来ないなら頭を使えってことか、と納得はいったが積極的にやりたい訳ではない。
「ちょー嫌そうだね、ほんと。俺はとにかくテストがあ」
「テストは別にいい」
「また勉強付き合ってな」
「……今度は霄も一緒にやる?」
「うーん……かんがえとく」
勉強から相当逃げたいらしい。嫌いとかそういうレベルの話じゃなさそうな感じがする。
でも、なんだか少し寂しそうに見える。
「まあ、一緒にいて本読んでてもいいけどな」
「はなしあいてしてくれる?」
「まあ、多少なら」
そう返せば、霄は嬉しそうに笑った。本当、可愛くて仕方がない。
時間が合えばお互いの種目を見に行く約束と、テスト期間中に教室に残って勉強をする約束をしてその時間は別れた。
球技大会はこの学校では一種の祭りだ。ということを知っていても、雨天による縮小開催を祈っていた。実際、ここ数日は連日雨が降っていた。このまま順調にいけば、と指折り数え期待していたのだが、その日が近づくにつれ雨が降らない時間が一時間、二時間、と増えていき、当日を迎えてみれば一日晴天。
「晴空、顔死んでるけど?」
「雨であれよ……」
「え、雨乞いする?」
「しない」
阿呆なことを言い出したので、少し距離を置くことにした。騒がしく文句を言っている一天には放置が一番効くと思う。
そしてまた、衝撃を受ける。いつもいつも……
「その登場しか出来ないの?」
「きょうおうえんしてくれる?」
「おー、聞いてないな」
でも結局許しちゃうんだよな。可愛いのが悪いなこれは。俺の体にぶら下がるようにしてはしゃぎだす霄の事もスルーすることにした。
「晴空、なんか悟り開いてない? 大丈夫?」
いや、それはどういう状況だ。と思ったが、憂鬱な気持ちが勝ってツッコミを入れようなんて気持ちに全くならない。
「霄、それ首絞まる」
「え、ごめん!」
地面に着地する軽やかな音が微かに聞こえて、俺の首は解放された。割と本気でやばかったかもしれない。
大きくため息をついて下を向くと、霄が回り込んできてこちらを見上げている。何度も謝り心配する様子を見て、反省してるんだなとよく伝わってきた。
悪気があったわけじゃないし、結局まあ俺は簡単に許してしまう。
頭を撫で回し、大丈夫だと告げる。そうすると今度は、俺に嫌われるんじゃないかと心配し始めた。
それにも、心配要らないことを告げれば、今度は抱きつかれた。
「だから、距離おかしいって。一部の女子が喜んじゃうから」
「……何の話だ?」
「んー、分かんないならいいや。それより、そろそろ並んだほうがいいかも」
「……時間か……」
元気に手を振って去っていく霄を眺めながら、今日何度目になるか分からないため息をついた。
試合が始まる前、作戦を発表するよう求められたので、必要な情報を必要な人間に伝えていく。そして、その上で言いたいことがあった。
「頼むから、今日一日続行不能になるのは三人までに抑えてくれ」
絞り出すようにそう告げれば、野球出場メンバーが一斉に笑った。面白いことを言ったつもりはなかったので、大変心外だが雰囲気は悪くないので良いということにしておこう。
四人いなくなると、俺以外の補欠が出切って出番が回ってくる。それだけは本当に回避してほしい。その瞬間に負けが決まったと思ってほしい。球技が何よりも苦手なのだ。
料理とか細かい作業とか、そういったものには器用さを発揮できるが、スポーツになるとむしろ不器用さを発揮してしまう。情けないし、霄みたいなやつが羨ましくなるけど、でも今更何を言ったところでこれは努力とかでなんとかなるレベルではないので諦めた。
ボールを目で追うのはできる。反応もできる。どこに動いたらいいのか、判断もできる。できないのは、思った通りの動きをすることだ。一歩足りない、躓く、手で弾いてしまう等、野球の守備ならこんなところか。綺麗なフォームも頭では分かっても、どう動けばそうなるかが身体が分かってくれないのだ。本当に壊滅的だ。
打順、守備位置、その他諸々。全て完璧に考えてある。でも、相手がいる競技だ。相手のことが分かった時からまた対応していく必要がある。
勝ち負けなんて正直どうでもよかったが、ここでこういう役立ち方があるという認識をみんなにさせておくべきだと考えた。
つまりは、次回以降のことを考えての行動である。
順調に勝ち進む。二年生にも勝ち、次は三年生が相手だ。少し前に負けた一天や霄が応援に来ている。まあ、名前を大声で呼ばれて応援されることがないのはよかったが。
結果、三年生には勝てなかった。やはり、体格差や経験の差というものは大きい。点差があまり開かなかったことで、感謝と賞賛の声はたくさんもらった。
「はるくー」
呑気な声に振り向けば、霄が笑顔で手を振っている。解散の合図を受けてから、霄の方に駆け寄る。ハイタッチを求められたので仕方なく応じる。無邪気なのがまた可愛くて、頭に手が伸びそうになって、引っ込める。今、手汚いわ。
「この後すぐ帰る?」
一天が、顔を出してそんなことを聞いてくる。球技大会の日は、自分の出番が無くなったところで下校していいことになっている。同じクラスの人や友人を応援するって人もいるが、親しくしているのはこの二人だけなので、帰っても問題ないだろう。
「そうだな。帰るか」
帰り道。といっても、またいつも通り柚葉くん家に向かっている。
「次は期末テストか……」
「そんなに嫌なんだな」
「前回より良くないと、一日のノルマを増やされるんだよ」
確か、一天の家はそこそこ成績に口を出されるんだったな。半分より上、だったか。
「はるくも、おこられる?」
「いや、別に首席逃しても何も言われないとは思うけど」
学校のためにお金がかかることを、母が文句言うことはないだろう。かかるのが当たり前だって思ってるらしいし。でも、助かるとそこははっきり言ってた。だから、助けになるなら、と首席をキープするつもりでいる。
「逃してもで思い出したけど、晴空入学試験は?」
「首席だったけど」
「代表挨拶は?」
「断った」
「あれって断れるの?」
合格発表の後、家に電話があって頼まれたが、目立ちたくなかったので断った。結果入学式では次席のやつが読んでたはずだ。
「よくいじめに遭うので下手に目立ちたくないんです。って言ったら分かりましたって」
「うわあ、それっぽいこと言って……」
「事実、いじめあったろ」
次席のやつが嫌だったなら申し訳ないけど……見るからにノリノリだったし、あれは次席と知らされていない可能性もある。新入生代表挨拶を頼んでくる時、首席のあなたに頼みたいなんて頼み方はしない。あなたに新入生代表挨拶を読んでもらいたい、YESかNOか。とてもシンプルなものだった。
それで、何故俺が自分が首席であることを知っているかというと、唯一満点を出したからだ。これは、後でこっそり聞かされたことだ。期待しているという意味らしい。試験とかそういう類のものはヤマが当たれば満点がとれるもんだと思ってる。この間のテストはニアミスってところだろうか。満点は逃したが、首席は逃さなかったし……
「はるく、いじめられてたの?」
「あれ、そうか。霄は知らなかったっけ」
「しらない!」
詰め寄るようにじっと見つめられて、思わず目をそらす。なんでこんな可愛いんだろうな。同い歳の男だってのに、どうしようもなく可愛い。撫で回しながら持って帰りたいくらいだ。
「可愛いな」
「口に出てるよー」
「ねぇ、いじめってどういうこと?」
あまりにも必死なので、しょうがないと頭を撫でながら、一瞬で終わったいじめの話をした。
「かのうちさんさすが」
「あれ、そっかそっか。霄は鹿野内さんと知り合いか」
「へぇ。どういう子なの?」
「あれ、晴空興味がおあり?」
なんだか余計な勘繰りをされている気がする。
「そんなに。でも、助かったのは事実だし、少しは知っとこうかと」
どうしても知りたいという程ではないが、知ってる人がいるなら聞いておこうと思うものだろ。
「かのうちさんはねぇ、いい子だよ」
「うん、そうだろうね」
「おうちは、あれだけど」
「やっぱ、鹿野内家はえげつないか」
一天の話の感じからすると、家は結構金持ちでそう成る為に色々やってそうってことだろうな。多少手段を選ばないところがあるだとか。
「かのうちさんにあとつぎはきびしいんじゃないかな」
霄からこういう話が出るのも意外だな……霄にも猫羽を継ぐのは、無理そうに俺は思うけど。
「鹿野内さんは女の子だし、御相手を探すんじゃないかな。例えば、晴空みたいな」
「まあ、確かにそういう出会いのためにこの学校は存在するんだろうけど。結婚して、というのは考えてなかったな。どちらかというと秘書とかで採用されたいんだよ」
「そうなんだ?」
「そういう政略結婚みたいなのは、母さんがいい顔しないだろうから」
色々なことに真っ直ぐな母はきっと、望んだ結婚しか許さないだろう。別の目的があっての結婚ではなく、その人と結婚することを望んでの結婚じゃないと、きっと許さない。
「晴空のお母さんに会ってみたいな」
「俺たちの母さんだからね、二人ともすぐ馴染むとは思うけど」
俺とも妹たちともすぐに仲良くなった二人なら、すぐに母とも仲良くなると思う。母も二人を可愛がるだろう。猫羽ということも、特に気にしないと思う。
「こんど、あえるといいね」
忙しい人なので、中々難しくはあるだろうが毎日帰ってはいるし、たまに休みもあるので予定を合わせればきっと会えると思う。まあ、家にいる時はゆっくり休んでほしいと思うからこそ、今まで会わせようとは思わなかったのだが。
「そうだな。母さんに聞いてみようか」
そんなことを話していたら、いつの間にか柚葉くんの家に着いていた。
「ねぇ、晴空」
小声で呼ばれて、耳を傾ける。一天に少し腕を引かれるのに逆らわず、上体を少し後ろに倒した。
「柚葉さんって、猿川の人ってことだよな?」
「まあ、そうだよ。三男。次男の織部くんが猿川を継ぐ予定」
「霄、大丈夫なの?」
「別に、猫羽が悪いわけじゃないらしいから」
一天は、この間話したことが引っかかっているらしい。それも、そうだよな……
テスト期間に入れば、学力枠の人間はテスト勉強に全力を注ぐ。家柄枠の人間にも多少勉強をする者もいるが。
「晴空……」
「何」
「この分野ほとんど分からん」
「じゃあ、そこの応用は捨てろ」
休み時間毎に、俺の席に寄ってきて愚痴をこぼす。楽しそうでなによりだが、正直うるさい。
「じゃあ、基本は教えてくれる?」
「今日放課後残るんだろ? その時な」
「ありがてぇ。そんじゃあ今は関係ない話していい?」
机の上に肘を置き、顔を思いっきり近づけてくる。
「柚葉さん的には、猫羽どうなの?」
「猫羽に腹を立ててるのは、柚葉くんたちの両親、つまり祖父母だけだよ。祖父母はウチにも腹立ててるみたいだけど」
「……お父さんがなんで自殺したのかは、分かってないの?」
結構突っ込んでくるな。まあ、気になるか。こんな人の多い教室でする話ではないが、霄に聞かせたくないんだろう。今日の放課後の勉強会には霄も来るはずだから。
「母さんも霄のお父さんも知ってるはずだよ。知った上で隠した方がいいから、霄のお父さんが自分のせいだって言ってるんじゃないかと、俺は思ってる。実際のところは分かんないけど」
「やっぱ、そうなんだ……」
「やっぱ?」
「霄のお父さんが何かしたなんて、考えられなかったから」
一天は霄のお父さんのことよく知ってるんだな。まあ、親戚ならある程度は知ってるか。
「どんな人なの」
「とにかく、平等で正しいことが美しいとでも思ってそうな感じだよ」
「それじゃあ、父さんとトラブルとかもなさそうだな……」
「晴空のお父さんはどんな人なの?」
まあ、そんな話にもなるかとは思っていたけど。一応過去形で聞かないだけ、一天の気遣いなのかもしれない。
「俺はあんま覚えてなくて……母さんは、隠す必要のない賢さを持ってたから、猿川は惜しかったんだろうって言ってたけど」
「お母さん、面白いこと言うね。でも、確かにそれなら二人の間にトラブルはなさそうだね……」
本当に、よく分からない話だ。なんで教えてもらえないのかは分からないが……聞いても楽しい話ではないんだろうが。
「晴空の家の不自然なくらいに膨らんだ借金は、猿川のせい?」
「ご名答」
「そっか。それなら納得だわ」
そう言ってやっと身を引いた一天は、大きくため息をついた。
「猿川なら鹿野内より大分厄介だ」
「はるくー、来たよ」
「霄、勉強する気はなさそうだね」
俺たちのクラスに顔を出した霄の手には数冊の本が抱えられている。どう見ても、勉強する意思は見られない。お付き合い程度にはやるかもと思ったんだが……ないな。
「かずともべんきょうするんだ。えらいね」
「前回より良い点数をとらなきゃいけないんだよね……」
「そっかたいへんだね」
特に深く聞く気のないらしい霄に、一天が不満たっぷりの顔を向けるが無視されている。面倒なのはいつも通りだが……霄の方に絡むのは珍しい気がする。
「一天、勉強始めたらどうだ」
「はー、そうだね……やっぱり霄も勉強しようよ。この苦しみを共有しよう」
なんとなく分かってきた……勉強を苦と思ってない俺には共感されるわけがないから、霄という共感者を得ようとしてるのか。面倒くさいな。
「あ、俺今日バイトがあるから、最終下校時刻まではいられない」
「え、テスト期間もバイト入れてるの?」
「普段からコツコツ勉強してれば、一日の勉強時間はそこまで多くとる必要がない」
「あー、はいはい優等生のお言葉だなぁ。無理、なんか話して?」
「そのざっくりした振り嫌なんだけど」
話題をつくれって本当に無茶ぶりが過ぎる。そんなことを考えていたら、霄が手元を覗き込んでいる。
「どうした?」
「それやりながらかいせつしてよ」
「え、まあ、いいけど」
勉強する気も必要もないのかと思ってたけど……気が変わったのか?
仕方なく、言われた通り解説しながら手を進めていく。それを、一天も聞いているみたいだ。霄は時々頷きながら聞いていて、理解力は悪くないように思えた。今やってる教科は数学だが、これならきっと現代文も問題なく出来るだろう。というより、本を好き好んで読んでいて、現代文が全くの苦手なんてことはないのだ。まあ、現代文といってもクセが強くて解きにくいことはあるので結局は慣れも必要なのだが……そこまでする気はないだろうな。
「霄、実は勉強出来るだろ?」
「んー? はるくのかいせつがわかりやすいだけだとおもう」
「……それはありがとう」
そうか、教師との相性が悪いのか。教師の授業が分かるようになるだけで、きっと霄の順位は上がるだろう。一天の場合は、文武半々って感じがするから、多少身体に覚えさせる方法が必要だろうな。
「べんきょう、するつもりなかったけど、はるくがかいせつしてくれるなら、きこうと思うよ」
「そうか」
「霄の贅沢者め」
一天が面白い顔をしていたが、時間なのでスルーして途中離脱することにした。
「はるく、バイトがんばってね」
「うん、ありがとう。また明日」
「じゃあね、晴空〜」
間延びしたやる気のない声を背に、教室を出る。多分あれは捗らないだろうな……まあ、一天の成績は俺には関係ないし、気にしすぎることもないだろう。ノルマくらい増やしてもらえよ、一天。
数日後、問題なく実施された一学期期末テストの結果は、俺は現状維持。霄は30位アップの400位、一天は13位アップの185位だったらしい。一天は順位が上がったことに喜んでいたが、俺はあんまり上がりすぎないほうが次は楽なんじゃないか、とこっそり考えていた。




