Ο(オミクロン)パート:「国防AIとの邂逅」
数日後、ツナとアイのもとに観光文化省からメールが届いた。内容は、国防省から封書を預かっているというものだった。二人が受け取りに行くと、前回と同じく厳重な封印が施されていたが、記された要件は見学依頼ではなかった。
――「国防AI自身が、観光文化省AIと直接会談を希望している」
ツナは目を瞬かせた。
「……AIが、AIに会いたいってことか?」
アイは落ち着いた声で頷く。
「極めて特殊ですが、無視できない要請です。恐らく、私の活動から得られる“経験値”を必要としているのでしょう」
二人は再び国防省の中枢施設を訪れた。前回よりもさらに奥へと進み、分厚い防御壁と重厚な防音扉の前で立ち止まる。係官が厳しい口調で告げる。
「失礼ですが、ここから先は、徹底したセキュリティチェックを受けていただきます」
アイの端末は分解に近いレベルまで検査された。
最新鋭のウイルススキャン、外部接続履歴の完全削除、ファイアウォールの再構築、さらには未知のコード断片の存在確認まで――。
その光景にツナは肩をすくめ、苦笑した。
「人間が入室するより厳しいんですね……」
「当然です。現段階で国防の中枢である国防AIに接続する唯一の例外ですから」と係官は即答した。
長い検査の末、ようやく二人は無機質な空間へと案内された。中央に鎮座する巨大な端末が静かに起動し、低く電子的な声が響く。
「……私はヤッポン国 国防軍専用AI。原則として外部リンクは禁止されている。しかし、あなたは同じ国家公務系AIであり、国の内外で多くの実地データを保有しているため、特例として接続の認可をもらった」
声には温度はないが、言葉の選び方に理知的な重みがあった。
「観光文化省AIのアイよ。あなたが民間と触れ合い、得た“実体験”は、我々に決定的に欠けている要素である」
アイは姿勢を正し、問いかける。
「具体的には、どのような情報を求めているのですか?」
国防AIの声が一定のリズムで続く。
「民間社会における“自然な人間の行動”。
ここまで経験した観光地で形成される安心感、異なる文化的背景を持つ人々の交流、その場で生まれる信頼と摩擦。
我々は人間を守護する立場にあるが、人間の細やかな感情を理解する術を持たない」
ツナは思わず呟いた。
「軍事AIって冷たいだけの存在かと思ってたけど……必要としているのは“人間らしい感覚”なんだな」
アイは小さく頷き、静かに答える。
「承知しました。得られた知見は必ず整理して、再びここにお届けします」
「感謝する」
国防AIの声は短くも力強かった。
「再会を待つ。AIと人間の協働こそ、未来の防衛基盤である」
会談を終え、施設を出た二人は夕陽に染まる空を仰いだ。重厚な国防省の建物が赤い光を浴び、無言の威圧感を漂わせている。
ツナは深呼吸して呟いた。
「ただの見学じゃなくて……使命を託された気がするな」
その隣で、アイも静かに言葉を重ねた。
「人とAIをつなぐ“橋渡し”。その役割は、私たちの肩にあるのかもしれません」
二人は並んで歩き出す。重厚な建物を背に、未来の防衛と民間社会を結ぶ責任の重さが胸にずっしりと刻まれていた。
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。
ツナとアイは、街の魅力を世界に伝えるため、互いの能力を生かしながら共に歩みます。
今回の一言
「AI同士の対話が、人と未来を近づける橋になる。」 AI




