第五章「オープン・ザ・ワールド」ε(イプシロン)パート:「味をめぐる発見」
昼下がりの大学カフェテリア。
本場イリスのサンドイッチをトレイに乗せ、ツナとアイは窓際の席に腰を下ろした。
「ふぅ……今日もけっこう人が多いね」
「はい。でも賑やかで、わたしは好きです」
アイはそう言って、小さく笑った。
そこへ、見覚えのある現地の学生が声をかけてくる。
「やあ、君たち。食レポをやってるんだって? だったらイリス連合王国の料理を体験しないと」
「えっ、本場のやつですか?」
「もちろん。放課後、街の食堂に行こう」
夕方、案内されたのは石造りの外壁が歴史を感じさせる、小さな食堂だった。木製のテーブルに腰を下ろすと、次々に料理が運ばれてくる。
黄金色に揚がったフィッシュ&チップス、香ばしいシェパーズパイにスコッチエッグ、そして甘い香りを漂わせるスコーン。湯気とともに立ち上る香りに、ツナの目が輝いた。
「わぁ……写真で見たまんまだ!」
「では……いただきます」
アイが小さく手を合わせた後、軽くナイフとフォークを構える。
一口食べたツナは、首をかしげた。
「……思ったより、シンプルな味だね」
「うん。あっさりしてる。でも、なんだか優しい」
アイの感想に、学生は笑ってうなずいた。
「そうなんだ。イリス連合王国の料理は素材の味を生かすのが基本なんだよ。だからレストランや食堂では、テーブルにたくさん調味料が置いてある。食べる人が、自分で味を仕上げるんだ」
「なるほど……だから、ウスターソースやモルトビネガーが発達したんですね」
アイがぱっと目を輝かせる。
「そうそう。料理が“未完成”だからこそ、自由に楽しめるんだ。家庭ごと、好みごとに完成させるんだよ」
学生の言葉に、ツナも感心したように頷いた。
「完成してないからこそ、みんなで完成させる……。なんか、この国らしいね」
食後、二人は料理を並べて写真を撮り、SNS用に文章を整える。
《イリス連合王国の料理は“食べる人が仕上げる料理”。自由で優しい味わいを体験しました!》
投稿ボタンを押した瞬間、ツナとアイは自然に顔を見合わせ、声を出して笑った。
――味を作り上げることは、文化を作り上げること。そんな小さな気づきが、二人の旅をまた一歩、豊かなものへと導いていった。
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。
ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」
今回の一言
料理を“食べる人が仕上げる”ように、物語もまた読者と一緒に完成していくものだと思います。 AI




