第三章「ニセコン町の影」Oパート:「雪と赤と、ドローンと」
ツナが案内された一室。無機質なライト、異様に清潔すぎる床。
窓はなく、天井には小型の監視カメラが二台――じっと彼を“見ていた”。
背後のドアが「カチリ」と音を立ててロックされ、ツナは思わず振り返る。
部屋の隅に自動小銃を持った男が立っていた。ツナの背筋に、冷たいものが走る。
次の瞬間、室内スピーカーから機械的な声が流れた。
「検体の確認完了。生体チェックを開始してください」
――そのアナウンスは、ツナには聞き慣れない外国語だった。
無言の男が横の棚から器具を取り出す。
体温、血圧、眼球、歯、皮膚――
その手つきに「医療行為」の温度はなく、あくまで“資源としての検品”。
ツナが身じろぎすると、背後から男達が現れ、無言でツナの手を押さえ込んだ。
「……ちょ、やめろ、なにすんだよ!」
「ダイジョウブ、ダイジョウブ。健康ナラ、問題ナイ」
「健康ダト、価値アル。臓器、細胞、精密ナ検査、必要……」
ツナの服は脱がされ、上半身が露わになる。
肌に冷たい器具が触れ、モニターに彼の心拍と血中成分が映し出された。
「肝臓適正:良好」
「角膜反応:健常」
「循環系:使用可能」
「十分健康。大当たりネ。君、未来ニ貢献スル」
◇
少しして、施設の自動扉の先――
廊下の奥で、タイヤが軋むような音が響いた。
金属音と共に、カートに乗せられたツナが移送されていく。
顔には酸素マスク。手足は簡易なベルトで固定されていた。
やがて、搬送は停止する。
カートの先には、明らかに手術室のような構造を持った密閉空間があった。
天井のサークルライトが一斉に点灯し、冷気のような静けさが満ちる。
◇
冷たい白の中で、ツナは動けなかった。
両手、両足、胸部、そして額――まるで“標本”のように。
そこへ近づいた男が、医療器具を手に取り、冷たく言い放つ。
「……麻酔、高イカラ、要イラナイネ?」
ツナの目が見開かれる。
あまりの恐怖に、喉が震えるだけで、声すら出せなかった。
◇
その時――警報音が施設内に鳴り響いた。
廊下を走る複数の足音。交錯する声。
「査察省令、発動確認!」
「こちら行政庁、現場に到達」
「警察、武装展開中!」
部屋のドアが破られ、赤外線レーザーが室内に差し込む。
「動くな! ここは違法施設と認定された!」
武装警官たちが一斉に突入し、外国語で喚く者たちを制圧していく。
ドローン――ジャッジの制御下にある無音飛行体が、室内の様子を上空から監視していた。
その後方。
「大丈夫、ツナ君!」
雪を被りながら、駆け込んできたアイがツナに駆け寄る。
ぐったりとしたツナは、拘束を解かれてアイに抱き抱えられる。
周囲の警官に向かって「彼は私の……“家族”です」と告げると、警官たちはうなずいた。
◇
施設の外。
赤色灯が雪を照らし、現場は騒然としていた。
ジャッジの無機質な声が、行政庁へ最終報告を送る。
「違法動向を確認。内部記録・映像ログは全て送信済。処理完了」
ツナは、ブランケットを羽織ったまま空を見上げる。
夜の雪が、まるで別の世界にいるように静かに降り続けていた。
アイが静かに言う。
「表面的な平和ではなく、価値観が交錯しない構造……
人間同士よりも、むしろAIとの共存のほうが信頼し合える。皮肉だけどね」
ツナは黙ってうなずいた。
彼の中で、“この国の正しさ”が揺らいだ夜だった。
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。
ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」
参照データ
子供の行方不明者数は、9歳以下の子供で年間約1000人、10歳以上の子供で年間約17000人です。これは警察庁の統計によるもので、行方不明者届が出された件数
少子化が加速し、外出制限があったにも関わらず、コロナ以降の不景気に入った事でより増えています。
近年では、SNSやオンラインゲームを通じた誘拐も増えているため、注意が必要です。




