第三章「ニセコン町の影」Nパート:「雪とプロモーションと…」
新章の第3章「ニセコン町の影」編です。
ヤッポンの北、ヒョッカイドにある町――ニセコン。
かつてはパウダースノーと温泉で知られた観光地。
だが今、その白銀の景色の下に潜むものは、
「観光」ではなく、別の何かだった。
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白い息がふっと漏れる。
雪の降り始めたニセコン町は、観光客こそいたが、どこか妙に静かだった。
「ツナくん、温泉、よかった?」
セーラー服の上にベージュのコートを羽織ったアイが、笑顔で湯上がりのツナを迎える。
「……ん。悪くない」
ぶっきらぼうな返事だったが、ツナの頬にはうっすら赤みが残っていた。
「観光文化省から、動画でニセコンの紹介をしてみてって要請があってね。
雪の質とか、地元の食材の紹介も含めて。今夜は“雪見ラーメン”にしようかって思ってるの」
「それ、もう観光じゃなくて営業じゃね?」
ツナの皮肉に、アイはくすっと笑った。
「うん、ちょっとだけ。ね? でもおいしいし、寒いのも悪くないでしょ?」
観光文化省は、彼女をSNS上の“アイさんぽ”からYouTubeへ展開させる方針に移行していた。
旅するAIと、その隣にいる保護少年。
フォロワーは増え、企業からの協賛もちらつき始めていた。
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宿の窓から見える景色は一見、美しかった。
ただ、どこかがおかしい。
夜になっても、地元の灯りが少ない。外国語しか聞こえない。
空き地や、柵で囲われた私有地ばかりが目につく。
「なあ、ここ……本当に“ヤッポンの町”なのか?」
ツナの素朴な疑問に、アイは少し沈黙した。
「……一応、人口統計上は“町”だけどね。実質は“観光地”としての側面が強いね……」
「観光地なのに、地元の人は見かけないって、変だよな」
アイは、金色の目を通して遠方の表記された文字を拡大していた。
外国語の標語。「自治区」「自警団」「出入り制限」など、不穏な単語。
「ここは観光地じゃない……観察地ね」
彼女のつぶやきが、静かに雪に吸い込まれるように消えていった。
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宿の風呂場で、ここ数日、毎晩のように顔を合わせる東洋系の男がいた。
愛想はよく、片言の日本語でツナに話しかけてくる。
「コドモ、ユーチューバー、デスカ?」
「……まあ、ちょっと……」
「ナカナカ面白イネ。私ノ家、中華料理、トクベツ。来ナイカ?」
男の笑顔には、口は笑っていたが目は笑っていなかった。
ツナは戸惑いながらも、好奇心が勝った。
「……アイには、内緒で」
「OKOK、人間ダケ、ノ、ハナシネ」
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同時刻。
ニセコン町の上空。
雪雲の切れ間を縫って、無音のシルバードローンが旋回していた。
ジャッジ。
行政庁から派遣された、監視ユニット。
その赤い単眼センサーが、未成年のツナを連れ去る男を視認していた。
――異常接触記録。
――追跡開始。
――映像ログ送信中。
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。
ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」




