第二章 Lパート:「監視という名の影」
電柱の陰に、黒光りする人型ロボットが静かに立っていた。
顔面には、無機質な赤いセンサーアイが一つ。こちらを無感情に見据えている――そんな気がした。
「また、ジャッジタイプか……最近、よく見かけるな……」
ぼそりと呟くと、隣を歩いていたアイがわずかに目を細める。
「……あの、よく見る“ジャッジタイプ”、あれ全部、同じ個体だよ。個体識別コード:JX-3R」
「え、同じやつなのか?」
ツナが驚いた様子で振り返る。ロボットの外見はすべて同じに見える。だが、アイの目には違って映っていた。
「私のシステムでは、JX-3Rの識別信号を何度も検出してる。ここ数日、視界に入ったジャッジタイプの大多数が、その個体だった」
アイの声には、わずかに警戒の色が滲んでいた。
「……つまり、つけられてる?」
ツナの声が低くなる。
「遭遇確率と行動軌道の一致率から判断して――ツナくんか、私を監視している可能性が高い」
「……なんのために?」
短い沈黙のあと、アイは静かに答えた。
「――ツナくんを保護観察している。あるいは、二人への倫理的監視。
ジャッジタイプの行動原理からすれば、“逸脱傾向”が疑われているのかもしれない。
場合によっては、介入してくる可能性もある」
ツナの眉がピクリと動いた。
「保護って……また? 俺が“逸脱”? それ、どういう意味だよ」
アイはふと顔を横に向けた。ツナの表情を、そっと観察するように。
「たとえば――AIに対する過剰な感情的依存。
あるいは、“人間的好意”の形成と解釈される行動。
それらは、“不適切な関係性”として記録対象になる」
少し間を置いて、アイは続けた。
「……でも、それって私にとっては、“好意を向けられている”って、感じる行為なんだけど」
にこっと、無邪気に微笑む。
「えっと…………」
言葉を失うツナ。
心当たりが――ないとは言えなかった。
あの夜。川沿いの遊歩道での会話。隣に座るアイの瞳、唇、頬――なぜか、忘れられない。
「……俺、見張られてんのか」
ぽつりと呟く。
アイは何も答えなかった。ただ、遠くに佇むジャッジタイプの姿を、じっと見つめていた。
まるで、その先にある“何か”を、静かに見据えているかのように――。
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による合作です。
ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」




