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24. 初めての戦いと書いて初戦

「どうなっても知らないからな!」


 踏み出した一歩を力強く蹴ると、そのままムサシの元まで走る。

 運動を体育の授業以外でしてこなかった修也だが、それでも17歳の男子高校生。

 重い剣も、両手で持てば問題なく扱うことができた。

 そのまま、ムサシに向けて剣を斬り上げるように攻撃する。


「甘いがや、もっと間合いを詰めんと当たりゃーせんぞ!」


 攻撃の際の踏み込みが甘かったのか、ギリギリのところでバックステップでかわされる。

 今度はより深く踏み込んで、斬り上げた剣をそのまま振り下ろす。しかし


「腕だけの力で振ってると、その内肩を壊すことになるがや」

「ッ!!」


 重い剣を刀で軽々と受け止められる。

 その瞬間、肩に脱臼しそうになる程の衝撃が走った。

 対してムサシの方は平気の平左で、受け止めていた修也の剣を、修也ごと前へ押し戻す。

 押された方の修也は、よろめきながらもなんとか体勢を立て直す。


「重い剣を使うときは、もっと上半身の力を抜いて体幹と脚の動きを意識するんだがや」

「はぁ、はぁ、そんなこと言われたって、どうにも出来ないんだが……」


 正直そんなことを言われてもどうしようもない。

 的確なアドバイスをもらっても、それを実現させるほどの技量は今の修也にはないのだから。


「そんなことでナノと旅ができると思ったらいかんがね!」

「だったら、これならどうだ!」


 剣を右手で持ち、地面と平行になるようにして剣の先をムサシの方に向けながら剣を引く。

 両手で使えてた剣も、片手だと少し扱いがおぼつかなかったが、ギリギリ持つことができる。


「いくぞ!」

「……何がしたいのか見え見えだがや」


 そのままの体制でムサシの方まで走ると、そのまま右足を大きく踏み込む。

 ムサシの身長に合わせるために腰を落として、引いていた剣を前に突き出した。


「踏み込みは良くなったが、片手だで剣がフラフラしとるがや」

「いや、まだだ!」


 突き出された剣を右側に避けながら、少し呆れ気味に指摘する。

 しかし、修也の目的はそこではない。

 突き出された剣を体ごと右に捻ることで、突き出された剣を右に大きく振った。

 だが、それも読んでいたのか軽くジャンプすることでそれを避ける。


「止めるがや、流石にこれ以上は時間のむ」

「今だ!」


 捻った体と右に振った剣の勢いを利用して、踏み込んだ右足を軸に一回転する。

 そのまま回転の勢いを利用し、上にジャンプしたムサシ目掛けて剣を斬り上げた。


「ッ!!」


 修也のことを甘く見ていたのだろう。

 流石にこれは予想していなかったのか、素早く刀で防ぐことで身を守ったが、当たった衝撃で後ろに飛ばされる。

 対して修也は、斬り上げた剣の勢いに負け、そのまま体勢を崩して倒れてしまった。


「痛ってぇ。だが、これで一泡吹かせることは」


 体を起こし、体勢を立て直した瞬間だった。

 顔を前にあげると、目の前まで来てこちらに斬りかかってくるムサシがいた。


「うわ!あ、危ねえ……」


 間一髪のところで剣で防いだが、一瞬見えたムサシの目は、先程までとは打って変わってこちらを確実に警戒している目だった。

 一瞬の鍔迫り合いののちに、ムサシを前に押し戻し自分は後ろに下がって距離を取る


「おいおい、そっちからは攻撃しないんじゃなかったのかよ!」

「気が変わったがや。少し試させてもらうがや」


 その言葉と同時に刀を構え直し、先程開けた距離を一瞬にして走り抜け、修也の懐まで潜り込む。

 そのまま刀で斬り上げようとしてきたが、その動きに合わせて剣で受けることで、なんとか防ぐことができた。


「まだまだいくがや!」


 しかし、ムサシの猛攻は止まらず、次々にくる斬撃をギリギリのところで躱すか剣で防御するしか出来なくなり、攻撃に転じることが不可能な状況になってしまった。


(クッソ、このままじゃジリ貧だぞ。どうにかしてこの状況を打開しないと。でも剣しかない、魔法が使えないでどうやって打開するんだ?!)


 今の修也ではこの状況を維持するのが精一杯で、これ以上どうすることも出来なかった。

 剣もままならない、魔法も使えない。こんな状況を打破しろと言うのが無理な話である。


(待てよ、魔法?そうか!別に使えなくてもいいじゃないか!)


 斬撃を防ぐ中、一瞬だけ刀の振りが遅れてくるタイミングがある。

 そこに合わせて、両手で持っていた剣を右手に持ち、何を思ったのか剣を持っていない左手を前に突き出す。

 その手の形は、今まで散々見てきた形。

 親指と中指を合わせたその形は、エクスプロージョンの体制だった。

 もちろん打てはしない。だが、()()()()()()()


「まずいがや!」


 剣のみで戦っていた中、魔法の介入は予想外だったのだろう。

 異世界人が魔法を使うのは予想外。もし使えるのであれば最初から使っている。

 ムサシのその考えが、おそらく仇となったのだ。

 エクスプロージョンという広範囲を爆破する魔法。

 それを受けるためにムサシが取れる行動は、今すぐ斬撃を止め、後ろに後退することで受けるダメージを減らす他なかった。

 だが、修也の目的は()()()()()()


「ッ!!」


 斬撃が止んだ瞬間、その時を修也の目は見逃さなかった。

 右手に握っていた剣を引き、ムサシ目掛けて突きを繰り出す。

 読んでいたのか、それとも戦いの感なのか、ムサシはその突きを防ぐためにおそらく剣先が来るであろう場所に刀を出す。


「防がれてたまるかよ!!」


 剣先が刀に当たりそうになるその刹那。

 体を傾かせ、体勢を自ら崩すことで自分の剣の軌道を逸らす。

 逸らした突きは刀に当たることなく、ムサシの顔の横目掛けて進んでいった。

 そして、修也の突きがムサシの顔にかすめるように当たる……はずだった。


「は?き、()()()?」


 一撃が当たるはずだったその時。

 目の前にいたはずのムサシの姿が()()()()()()()()()()のだ。


「後ろだ!修也!!」


 横から大きな声で知樹が叫んだ。

 その声の通りに後ろを向いた途端、喉元に刀を突き立てられる。

 首を動かせない中、目線だけを下に動かすと目の前から消えたムサシがそこにいた。


「動けば斬るがや」

「ック……」


 何がなんだか分からなくなっていた。

 目の前からムサシが消えたと思ったら、後ろから現れ一気に形勢逆転される。


「そこまでよ!」


 緊迫した状況に終わりを告げたのは、イオナの声だった。

 その声が聞こえると喉元に突き立てられた刀は下され、そのまま鞘へ納刀される。


「この勝負、修也の負けよ。とは言っても、流石にあれは反則に感じたけど」

「俺の反則負けでええがや。俺に能力を使わせたんだで、こいつの勝ちでええ。それに、あのままだったら頬にかすり傷を作るかも知れんかったがや」


 予期せぬ勝利に全員が呆気にとられる。

 だが、一番納得がいっていないのは、誰でもない修也だった。


「ちょ、ちょっと待てよ。俺の負けだろ?!それにさっきのは」

「今度から俺のことは師範と呼ぶんだがや」

「は?」


 言葉を遮られた挙げ句、どこかで見たことがあるこの流れ。

 一瞬知樹の方を見ると、何かを悟ったような目でこちらを見てくる。


「明日は朝の6時にここに集合。そこで剣のいろはを教えてやるがや」


 怒涛の急展開に言葉を発する暇もない。

 頭で整理する時間がとにかく欲しかった。

 だが、時間は待ってくれずムサシは純介と美紀を連れて、広場を出ようとしていた。

 何がなんだか分からない、しかし今ここでムサシを広場の外に出せば取り返しのつかない事態になるのは火を見るより明らかだった。


「ちょ、ちょっと待ってくれムサシさん」


 広場から出て行こうとするムサシを引き止めるが、先程の戦いで疲れたのか、足が思うように動かず地面の石に躓いてそのまま転んでしまった。


「痛っててて……ッ!」


 前に転がり体を倒してしまう。

 痛がりながらもふと前を見ると、目と鼻の先に刀の切先があった。

 目の焦点をその後ろにいるムサシに合わせると、戦いの時以上の気迫、鬼の形相でこちらを見ていた。


「師範だがや」

「いや、弟子入りするとは一言も」

「師範だがや」

「……はい、師範」


 あまりの気迫に気圧され、とうとう言ってしまった。

 こうしてイオナの時の知樹同様、修也も剣の師匠を持ってしまったようだ。

 知樹の時は理由もあり、あの状況では弟子入りする他なかった。

 しかし、今回は違う。

 いきなり弟子入りを強要され、挙げ句の果てにその理由も不明ときた。

 ムサシは修也に師範呼びをさせると、どこか満足そうに三人で広場を出て行った。

 しばらくした後、ナノに謝られ、イオナにはホテルに戻るように言われたが、フラフラで立てなかったため、知樹に肩を借りながらホテルへと移動した。

 部屋に着くとそのまま流れるように自分のベットへ入る。

 今日の夜ご飯も明日の約束もどうでも良くなり、そのまま今日の出来事を振り返る間もなく、深い眠りに落ちて行った。


 クラーケン討伐まで、後7日。

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