18. 予想外の展開過多
時は進み今現在。
先ほどまで格好つけていた知樹。
モヒカン山賊を一網打尽にし、ザ・主人公へと成り上がるはずが、ライセンス外の魔法使用により、手錠をかけられると言うなんとも格好つかない状況へと成り下がっていた。
「た、逮捕ですか?」
「我々はこの街の魔導警察だ。貴殿はAランク魔法のエクスプロージョンを二回も使っただろう」
一発目は注意を引くため。
二発目は確実に壊滅さるために魔法を使用した。
山賊が今もなお担架で運ばれて行ってる中、その下の地面には、生々しい焼け跡が今も残っている。
「その才能は認めるが、ライセンス未所持で発動するのは犯罪だ。異世界人とは言えども、ここにはここの規則がある。今回は従ってもらうぞ」
淡々とそう告げると、未だ呆然としている知樹の手を引き、その場から連れて行こうとする。
そのとき、警官の道を塞ぐように修也が飛び出てきた。
「ちょっと待ってくれ。知樹がいなかったら、図書館の資料があらかた取られてたんだぞ! 今回の功労者にその仕打ちはないんじゃないか?!」
「そ、そうです! 少しくらい融通を効かせてください!」
「規則は規則だ。そこに例外はない」
ナノも便乗するように物申す。
しかし、そこは警察。規則に例外は無いとキッパリと二人の言葉を断ち切った。
二人の間を割って入るように、警官はツカツカとその足を進めて行った。
本当であれば掴んででも引き止めたい。
しかし修也がこの世界の人間である警官に触れればその時点で気絶してしまう。
その事実を理解できているからか、どうしてもその一歩を出せなかった。
「待ちなさい。あんたは一つ誤解をしているわ」
今度はイオナが警官の後ろから、声をかけるように引き留める。
流石に十連門の言葉は無視できないのか、イオナの方に体を向き直す。
「そいつを逮捕することは私が許さないわ」
「……流石に軍より上の立つ場の十連門でも、法より上には立てないはずですよ。彼は魔法の違法使用をしたんです。これは紛れもない事実ですよ」
「いや、そもそもその前提が間違っているのよ。こいつは魔法の違法使用なんてしてないわ」
警官が述べた事実の前提そのものが間違っていると指摘する。
「意味がわかりません、詳しく説明して欲しいですね」
あまりにも唐突な発言に、詳しい説明を求める。
だが、それを欲しているのは警官だけでなく、その隣にいる修也とナノ、そして、現在進行形で手錠をかけられている知樹もだった。
「本当はもう少ししてから大々的に発表するつもりだったけど仕方ないわね」
やれやれと言った感じで、溜めに溜める。
そして何を考えているのか、知樹の方を指差した。
「そいつ。私の弟子よ」
「……え?」
誰よりも第一声で疑問の声を上げたのは、他でもない当事者の知樹だった。
「確かに、十連門の弟子は例外的にライセンスの有無に関係なく魔法を使うことができます。しかし、そのような申請はされていませんでしたよね」
「こいつがここに来たのはつい最近。そこに十連門の仕事が重なって申請するタイミングが無かったのよ。本来だったら今日役所に行くはずだったのだけれど、そこに山賊が来て今に至るわけ」
言っていることは間違ってはいない。
十連門の仕事のことはわからないが、三人がこの街に来たのは確かにここ最近だ。
だが、いくらなんでも弟子入りはないだろ。
そう目で訴えかける知樹をよそに、イオナは弁舌さわやかに説明していった。
「……事情は理解しました。今回は咎めませんが、今後このようなことはないようにお願いします」
言い訳じみたイオナの説明は、案外あっさりと通ったようだった。
その後、知樹の両手は無事に解放され、魔導警察は担架によって運ばれる山賊と共にその場を後にした。
「ふぅ。なんとかなったわね」
「なんともなってないですよ! なんで俺が貴方に弟子入りしなくちゃいけないんですか!」
「なによ! 助けてやったのにお礼もないわけ?!」
客観的に見れば、確かに知樹はイオナに助けられた形になる。
だが、助けられたことよりも、弟子入りという部分がどうやら気に食わなかったようだった。
「なら今すぐ魔導警察に突き出すわよ! 数年檻の中か、私の弟子。どっちがいいかなんて明白でしょ?」
「うぐ……確かにそうですけど……」
「それに、あれを見てみなさい」
イオナが指差したのは、山賊たちに対して知樹が打ったエクスプロージョンの爆心地だった。
「いくら魔法の才があっても、魔法の調節もろくにできないんじゃ。いつ仲間が巻き込まれるかわかったもんじゃないわ」
「……それもそうですが」
イオナの言葉を受け、今後巻き込まれるであろう仲間の、修也とナノの顔を改めて見る。
この前は修也が自分とナノに迷惑をかけていたが、今度は自分が迷惑をかける番になるかもしれないのだ。
「どうするんだ知樹。お前が決めることだぞ」
「……知樹さん」
「……わかりましたよ。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」
こうして知樹は深々と頭を下げ、魔導十連門六位イオナ・メディッサへの弟子入りを果たしたわけである。
しかし、知樹には一つ気になることが。
「そういえば、俺たちのテストの結果ってどうなったんですか?」
「あ、そうだった。ってか知樹お前テストの紙持って行っただろ? 早く返せよ」
「……悪い、無くした」
「はぁ? いや無くしたって、それどういう」
「騒がしいわよあんたたち。修也に関しては筆記の時点で合格点だったわけだし、知樹も、正式な実技ではないけど、この惨状を見せられちゃね」
肩をすくめ、首を振り、しょうがないわね、と言いたそうなそぶりを見せる。
「あんたたち二人とも、マジックライセンスのEランクは合格よ」
「よっしゃああぁぁああ!」
「よかったな知樹。これで魔法が正式に使えるぞ」
「やりましたね二人とも! 私……もう、嬉しくて」
「まあ、あんたは私に弟子入りしたわけだし、手続きを済ませればAランクまでのライセンスも免除されるから、取ったところでって話なんだけど」
イオナに弟子入りした知樹には今後ライセンスが必要なくなり、魔法が使えない修也はライセンスを取る必要もないため、今後この二人はこれ以上ライセンスを取る必要がなくなったわけである。
二人は勢いよくハイタッチし、その横でウルウルとしているナノ。
喜びをみんなで分かち合っている最中、イオナだけ図書館の出入り口から町の方へ足を進めていた。
「ん? どこに行くんですかイオナさん」
「私のことはこれから師匠って呼びなさい。役所に弟子ができたって報告するついでに、あんたたちのライセンス合格も伝えてくるのよ」
「わかりました、イオn……師匠」
イオナと言いかけた途端に振り向いてエクスプロージョンの構えをしてきた。
どうやら師匠呼びを強制させたいらしい。
にこやかに構えてきたからか、異様な圧に押され負け、知樹はこれからイオナのことを師匠と呼ぶことにされたようだ。
「そうと決まれば明日の午後にはここを出ましょう」
「そうだな、首都まではまだ長いんだろ?」
「そうね、ここからだと船を乗り継いでいくから四人分の乗車賃も用意しないと」
「そうですね……ん? 四人?」
三人で今後のことを話し合っている最中、予期せぬ一言が飛んできた。
どうやら、役所に報告をしに行くと言っていたイオナが即戻ってきて、会話の中に混ざり込んでいるようだ。
「そうよ。これから先は私もついていくわ」
「はぁ? ちょっと待てよ! あんたも来るのか」
「この弟子の面倒を誰が見ると思ってるのよ。私以外にはいないわよね」
「すごいです。旅の仲間に魔導十連門のお一人が入ってくれるなんて!」
「そこ喜ぶところ?!」
「今のはどういう意図で言ったのか説明してくれるかしら?」
四者四様の反応を見せる一行。
修也は驚き、知樹は嫌がり、ナノは喜び、イオナは怒っていた。
「だいたい、師匠には来る理由が」
「その理由付けなら、僕がしてあげるよ」
あまりにも唐突に言葉を投げかけられ、四人は一斉にその方向を向く。
焼け跡が残る爆心地のど真ん中に、先ほどまでいなかった白髪の青年が立っていた。
「文文さんじゃないか! 風呂以来だな」
風呂の時に唐突に話しかけてきた、同じ異世界出身の文文琴葉だった。
ただ、風呂の時とは違い、ゲームに出てくるようないかにも魔法使いらしい緑色のローブと、緑色のとんがり帽子をかぶっていた。
「琴葉でいいよ修也くん。そして前回の会議ぶりだねイオナさん」
「こっちはあんたの顔なんて見たく無かったわよ」
どうやら、この二人は面識があるらしい。
とは言っても、イオナの方は若干嫌がっているようにも見え、いつもの毒舌も、冗談などではなく本気で言っているような感じがした。
「修也、あんたこいつと知り合いなの?」
「ああ、宿の風呂に入ってる時にいきなり声をかけてきてな。また会うとは思ってなかったけど」
ここでも四者四様の反応を見せ、修也は少し困惑し、知樹はそもそも面識がないため、誰こいつ? 状態。
イオナは顔を引きつっており、ナノに関してはなぜか目をキラキラさせていた。
「ナノちゃん。なんでそんなに目を輝かせてるんだい? っていうかこの人誰?」
「すごいです! まさかここで会えるなんて!」
「えぇ、無視ぃ?」
ナノは感激のあまり、知樹の話を全く聞いていなかった。
この中で目の前の人物を紹介できるのは、もうあと一人となってしまった。その一人も、そのことを理解しているのか、嫌々ながらも話し始めた。
「こいつの名前は文文琴葉。私と同じ、魔導十連門の
第五位にして、異世界人で初めて魔導十連門入りを果たした男よ」




