13. 実験と意外な事実
人間が五感で受け取る情報のうち、8割は視覚に関係したものである。
何が危険で何が安全で何が良くて何が悪いのか、ものにもよりけりだが大抵は視覚で見てから別の器官で処理されるのが大半だろう。
目を瞑れば平衡感覚は損なわれ、片足立ちで立つどころかまっすぐ歩くことすらも困難になる人は相当数いるはずだ。
ではその視覚が人よりも異常発達している人間はどうなるのだろうか?
横断歩道を渡る人を、道端に咲いている花を、車のナンバープレートを即座に視認し識別している人間は、もし視覚を潰されたときどういう反応をとるのだろうか?
「おい! さっきから幻覚魔法をかけたり解いたりかけたり解いたり! もうそろそろ目が痛くなってきたんだが!」
おそらくこんな反応ではないだろう。
「あんた、明らかにおかしいわよ」
「あ? 何がだよ。そんなことよりこの鎖早くほどけよ!」
「人がものを視界に入れてからそれを識別するにはほんの少しだけどタイムラグがあるはずなのよ」
「あー神経伝達の話? このまえ保健体育の授業でやってたよ」
「おい! 人の話を聞きやがれ」
修也の子供嫌いを直すため、様々な実験を繰り返すイオナ。
実験とは言っても、幻覚魔法をかけて解いてを繰り返し、イオナやナノの容姿に慣れさせるという荒治療なのだが、その過程で得られたデータを見てみると修也の目には明らかな異常があることが発覚したのだ。
「けどこいつのは他の人間のそれとは段違いよ」
「とりあえず無視するのやめていただけませんかねえ」
「おかしいと思って医療測定に使うような魔法具で神経の伝達の速さを調べてみたけど。速すぎるのよ、視界に入ってから脳が処理するまでのスピードが」
「え? なになに? まさか超能力的な何かに目覚めた感じですか?! ねえねえ!」
「あんたは少し黙ってなさい!」
「……はい」
自分より年上だからか、自分の苦手意識を直そうとしてもらってるからか。
どちらにせよ今の状況では精神的にも物理的にも強く言い出せないためおとなしくしておくのが吉と考え、床の模様のマス目を数えるという修也にとってとても有意義な時間を過ごすことにした。
「まあ、簡単な話が異常発達した動体視力っていうことよ」
「こいつ普段から子供に出会わないためにあらゆるところに気を配ってたからな~」
「あはは……で、でもこれってすごいことじゃないんですか! もしかしたら魔法以外にも何かに使えたりだとか!」
「可能性は0ではないわ、まあ、そうなることを少しでも祈っておくことね」
修也からしてみれば地獄のような訓練をしているつもりだ。
その過程で得られたのが自分は常人よりも動体視力がいいという喜んでいいのか微妙なラインの結果が出ただけだった。
もちろん今現在、本筋の方は少ししか進んでおらず、子供を克服できたかといえば首を振る以外に答えようがないような状態である。
「さあ、まだまだ繰り返すわよ!」
「ちょっと待ってくれ! さ、さすがにこれ以上は」
「何言ってるの? 仲間のためなんでしょ? さあ、まだまだ続けるわよ!」
「い、嫌だあぁああ!!」




