いい男とは。
「ウィル、ボーっとしてどうしたの?」
「フィーユ姉ちゃん、うん、ちょっとね」
俺をいつも洗脳、いや、教育してくれる近所のフィーユ姉ちゃんが心配そうに聞いてきた。
「ふ〜ん、そう」
フィーユ姉ちゃんが、相槌をうって隣に腰掛けた。
そして、更に何か話すでもなく、静かな間ができる。
「フィーユ姉ちゃん・・・」
「なあに?」
「いつも、"いい男"の心得とか教えてくれるじゃん?騎士って"いい男"かな?」
「ウィル、あのね、騎士は職業でしょ?"いい男"っていうのは人間の質よ。農民にも当然"いい男"はいるわ。
そして、王様だから"いい男"とは限らない。貴族でも商人でも役人でも鍛冶屋でも大工でも冒険者でも、もちろん騎士でも。何になったとしても関係ないわ」
フィーユ姉ちゃんの穏やかな声が優しく響く。
「そっかぁ、何になってもいいんだね」
俺は肩の力が抜けた気がした。
突然、父さんに騎士になりたいかって言われて、正直動揺して何も考えられなかった。
でも、フィーユ姉ちゃんのお陰で落ち着いたよ。
フィーユ姉ちゃん、ありがとう・・・ん?
感謝の気持ちで顔をあげると、妙にギラギラした目のフィーユ姉ちゃんがいた。
「ええ、でも、騎士!いいわね!"いい男"で騎士、昂るわ!フフッフフフフフッ、よし、ウィル、騎士様になりなさい!!」
え〜〜〜、フィーユ姉ちゃん!!いい話だったのに!!
さっきの大人で穏やかな女はどこに行ったの!?
「ウィル、よく考えてみなさい!騎士にはキャーキャー要素がふんだんに惜しげも無く盛り沢山に振り掛けられているのよ!!」
・・・キャーキャー要素って何さ?
なんかの粉?食べたらヤバいことになりそうだよ。
「騎士!それだけで、ご飯三杯はいけちゃうわ!!美味しそう・・・」
やっぱり食うんですね!?食っちゃうんだね!?
フィーユ姉ちゃんがどんどん壊れていく。
「ええ!もう騎士すなわち"いい男"と言ってもいいかもしれないわ!!フフフフフフフ」
あ〜、とうとう言っちゃったよ。
薄々、そういう結論になるんじゃないかと思ってたけど・・・ハァ
最初のいい話は遥か彼方でお星様になった模様です。
フィーユ姉ちゃん・・・
帰って来て〜




