勇者、敗れる。
俺の父さんは、すっごく格好いい!!
村の自警団の隊長だ。
まあ、小さな村だから、周辺を見回ったり、村に来る行商のおじさんに頼まれて護衛して近隣を回ったりするくらいだけど。
父さんと母さんは王都で出会って、駆け落ち結婚した。
母さんが孤児で父さんは代々騎士の家の長男だったから、反対されたそうだ。
家督は父さんの弟が継いだ。
俺が生まれた頃には許してくれてて、じいちゃんとばあちゃんに、赤ちゃんの頃会ったことがある(みたいだ)。
「母さん、父さんまだかな?」
「そうね、カルムさんも一緒みたいよ」
「叔父さんも!?やった!!馬に乗せてくれるかな?」
「御迷惑かけないようにね」
「うん!!」
父さんの弟のカルム叔父さんは王都の騎士様だ。
強いけど穏やかで優しい人で、家督も継いで忙しいのにたまに様子を見に来てくれる。
王都からは乗合馬車では10日かかるけど、単騎だと休憩も短いので4、5日で着く。
カルムさんの馬は真っ黒で男前なやつだ。
名前はヌワール。
ちょっと気難しいけど、俺を嫌がらずに乗せてくれる。
「母さん、俺、迎えに行ってくる!!」
母さんの返事を待たずに家の外に飛び出すと、父さんとカルム叔父さんが並んで歩いて来るのが見えた。
もちろん、ヌワールもいる。
「父さん!!カルム叔父さん!!」
呼びかけると、二人が手を振ってくれる。
嬉しくなって駆け寄ると、ヌワールが鼻頭を押し付けてきた。
「ヌワール!!元気だった!?
こんにちは、カルム叔父さん!!」
ヌワールを撫でながら、カルム叔父さんの方を見て挨拶する。
「父さん、お帰りなさい!!」
父さんは強いけど、やっぱり無事な姿を見ると安心する。
「ウィル、大きくなったね」
「ただいま、ウィル。母さんの言うことちゃんと聞いてたか?また、リクみたいに生き物を拾ってないだろうな?」
チビはもう出て行ったし、問題ないよね?
「う、うん」
父さんが不審そうな目を向けてくる。
「危ないこともしてないな?」
してないよ!!チビは危ない魔物じゃなかったし、迷いの森も危険はなかったよ。
安心して父さん!!
と、心の中で言っておく。
口には出さない。俺は空気を読む男だ。
近所のフィーユ姉ちゃんもモテる男は空気を読まないとダメだって言ってたし。
「あなた、お帰りなさい。
カルムさん、いらっしゃいませ。お疲れでしょう、中にお入りください」
さすが母さん、いいところに!!
救世主だ!!
「ウィル、あなたの話は後でゆっくり聞くわね」
母さんがにっこりとこちらを振り返って言った。
お〜
魔王(父さん)より強い大魔王(母さん)を救いだと思うなんて、不覚・・・。
フィーユ姉ちゃん、俺まだまだ出来るモテ男にはなれないみたいだ。
「ハハ、男の子は元気が一番だからね。兄さんも俺もウィルくらいの頃はいろいろ悪戯したもんだよ。なあ、兄さん」
勇者カルム様!!
「そうだな、ウィルなんて可愛いもんだぞ!!ハハハハ・・・あ〜いや、まあ、なんだ。カルム座って寛いでくれ」
母さんの睨みに父さんが屈した。
頼りは勇者様のみ!!
頑張って、カルム叔父さん!!
どうしてさり気なく目を反らすの!?
お茶が美味い、じゃないよ!!
勇者は呆気なく大魔王に敗れ去った。
俺の命運も尽きたようだ。
ガクリ。




