Episode 34 長い戦いの始まり
龍夜たちの修行が始まり、あっという間に一ヶ月が経った
今日からいよいよ掃討作戦の開始だ
『おはよーさん!
今日の午前九時にみんなを集めて本部に来てくれるか?』
ギリギリまで修行に費やして、かなりの疲労が残っている龍夜は眠い目を擦りながら起きる
すると、スマホにあかりからメッセージが届いていた
「いよいよか。」
この一ヶ月間ひたすら自分のスキルを磨くために費やしてきた
しかし、龍夜のスキルは進化をすることは無かった
あかりの言っていた通りに毎日倒れる寸前まで魔力とスキルを使っていたのだが、それでもダメだった
しかし、悪いことだけではなかった
スキルを使い続けることで新しい使い方を会得することが出来た
これで攻撃の手段も増えて断然戦いやすくなっていたのだ
「とりあえずみんなを起こしに行くか」
コンコンと隣の部屋をノックする
聡さんはまだ帰ってきていないらしい
ということは智咲とひなもまだなのだろう
今日から掃討作戦は始まるというのにどうしたものかと考えながら雅の部屋に向かう
コンコン
扉をノックすると中から凛々しい声で「はい」とだけ聞こえる
すぐに扉は開き、雅が顔を出す
「おはよ、九時に本部集合だって」
「分かったわ。わざわざありがとう」
そんな短い会話だけで扉を閉められた
この一ヶ月間雅から僅かだが少し距離を感じているが、俺は何かしただろうか
心当たりが全くないのだが
少し落ち込む気持ちを切り替え鈴音の部屋をノックする
「出ない...寝てるのか?」
今度は少し強めに扉をノックしてみる
中からバタバタと何かが落ちる音が聞こえ、慌てた様子の鈴音が扉を勢いよく開ける
「いってぇ!!!」
やっぱり鈴音は寝てたのかと思っていたら、勢いよく扉が俺の顔に迫ってくる
修行の成果も出せず扉を顔面で受け止めてしまった
顔を押さえて蹲る俺の肩を鈴音が優しく撫でてくれているが、原因は鈴音。お前だ
「ご、ごめん!!
寝ちゃってて慌てて開けちゃった!!
そんな近くにいるとは思わなくて!!」
まだアタフタしている鈴音に大丈夫だと伝えるとほっと胸をなで下ろしていた
「それはそうと、今日の九時に本部集合な」
顔の痛みは引いてきたので、とりあえず要件だけを伝える
鈴音は「わかった!」と言い、「ごめんね〜」と続けて扉を閉めて部屋に戻っていった
しかし、女の子のパジャマ姿は良いな
なんか、こう、ぐっときたわ
気を取り直して英美里の部屋に向かう
あの子は真面目だ
この時間まで寝ているということはないだろう
コンコン
扉をノックすると「はーい!」と元気な声が聞こえる
やっぱり若者は元気で良いなぁと思いながら扉が開くのを待つ
「あれ?龍夜さん、おはよーございます!」
俺の顔を見るなり元気よく挨拶をしてくれる英美里
そんな彼女にこちらも元気よく挨拶を返す
「おはよう若者よ!今日九時に本部集合な!」
俺の年寄りムーブに英美里は若干引き気味に「分かりました、でも龍夜さんもまだ若いですよ?」と言ってくれる
英美里は元気さの中にも優しさを含んでいておじさんは感動だよ
そして広樹に鈴音の両親、蓮見さんの部屋にも行き、先の皆と同じことを伝える
それからは部屋に戻り少しゆっくりしていた
「集合まであと一時間はあるな
ご飯でも食べにいくか」
まだ少しダルさが残っている体をゆっくり起こして宿泊所の食堂に向かう
レストランはひなのおかげでタダなんだが、こういう食堂のご飯の方が性に合ってて食べやすい
俺は注文して待っていると、雅と鈴音が食堂に顔を出す
「龍夜くーん!さっきはごめんね!
隣いいかな?」
先程のことを謝りながら席に座る鈴音
なぜか雅は俺を挟むように鈴音とは逆側に座る
食べずらいじゃないか
「そういえば、二人は修行どうだったんだ?」
こう聞いたのは、俺たちはお互いの修行については全く知ることが出来なかったからだ
同じ訓練所でもなぜか区分けされていて仲間の修行を見ることは無かった
それもあかりの考えらしいが、何故そのようにしたのかは教えてくれなかった
「私は上手くいったよ!スキルも進化したし、みんなをもっとサポートできる技も身につけたし!」
「私も進化したわ
けれど、もう少し修行したかったわね
時間が足りなかったわ。」
「へ、へぇー、そうなのか」
二人の返しに顔が引き攣ってしまう
まさかスキルが進化していないのは俺だけか?
リーダーなのに進化してないってメンツ丸潰れだろ
「龍夜くんは?」
「あ、ラーメンきた!いただきます!」
鈴音の質問に答える訳にはいかなく、タイミング良く来てくれた美味しそうな味噌ラーメンを啜る
俺のそれ以上聞くなという雰囲気を感じとったのか、ありがたいことに聞き返しては来なかった
雅と鈴音は朝だからか女の子だからか分からないが軽食を頼んでいた。サンドイッチだ
そのおかげか、食べ終わるタイミングは一緒で、三人で食堂を出る
「もうそろそろ向かってもいい頃ね」
雅のその提案に乗り、腹も膨れた俺たちは本部へと向かった
「おはよーさん!スキルの進化が出来なかった龍夜くん?」
なんということだ。
本部に着いて早々あかりに全てバラされてしまった
くそ、せっかく隠し通せてたのになんてことしやがる
「悪かったな。俺もなんでか分からないんだよ!」
「やっぱりそうだったのね
鈴音の質問を明らかに無視していたから、まさかとは思ったけど」
訂正。隠しきれてなかったみたい
もういいや、開き直ろ
「あぁ、ちゃんとやってたつもりだったんだが...」
「それなら龍夜のスキルは違う条件で進化するのかもしれないわね」
あら、珍しく雅さんがお優しいではないか
女神か?女神なのか?
「そ、そーだよね!
あかりさんも全員が同じ進化方法で進化出来るかは分かんないって言ってたもんね!」
こちらにも女神がいた
あかりよ。今の俺には女神が二人ついているぞ
「なんやその顔は。
まあええわ、とりあえず会議室行くで」
俺の顔を可哀想な奴を見る目で見るんじゃない!
余計傷つくだろ!
そんなことを考えながら、あかりに連れられ会議室に行くとすでになにわ連合の幹部たち、英美里、広樹、鈴音両親、蓮見の全員が揃っていた
「私たちが最後だったようね」
「いや、まだ智咲たちがいるぞ?」
最後だということを認めたくなかった龍夜は智咲たちの名前を出して誤魔化す
「智咲ちゃんたちはもうすぐ来るで」
あかりがそう言った途端、会議室の扉が開かれる
「頭取、ただ今戻りました。」
「お、タイミングええなぁ」
扉を開けてそう言う冬弥の後ろには智咲とひな、それに聡がいた
一ヶ月だけ離れていたのに、何年も離れていたような久しぶり感がある
「お兄ちゃんただいま」
「あぁ、おかえり智咲」
本当は智咲を抱きしめてあげたいが、みんなの前だからと自粛する
帰ってきた智咲は自分の恐怖も修行も乗り越えて凄くたくましく見えた
それはひなにも聡にも同じことが言えた
「久しぶりの再会やな
でも、積もる話は後にしよか
全員揃った所で、掃討作戦の会議を始めるで!」
あかりがその場に立ち上がり声を張る
がやがやしていた会議室は、あかりの一声で一瞬で静かになった
「まずはレオーネ、カプラ、サーペント
この三体の門の破壊をするための人員の割り振りをするで」
レオーネ、カプラ、サーペントはそれぞれ、ライオン、山羊、蛇型のモンスターだ
どれも凶暴らしく、なにわ連合の普通の戦闘員なら四人で一体を倒すのがやっとのことらしい
あかりはそれぞれの名前を呼び、誰がどのモンスターの場所に行くのかを決め、分かりやすくホワイトボードに書いてくれた
┌───────────────────┐
レオーネ討伐
【あかり班】大我、渚、龍夜、ひな、その他150名
カプラ討伐
【冬弥班】冬弥、美湖、聡、その他50名
サーペント討伐
【楓子班】楓子、雅、英美里、その他50名
後衛 治療&補助部隊
澪、木吉、鈴音、智咲、広樹、鈴音父、その他30名
└───────────────────┘
「この割り振りで行ってもらう。
なにか質問ある人は?」
あかりのその問いかけに手を上げる龍夜
「レオーネだけ100人多いって戦力偏らないか?」
「この三体の中でレオーネだけ別格や。
特に、レオーネの個体が進化しとる奴がいる
あいつにはこの人数でも不安なくらいや」
あかりの言うレオーネの進化個体
左目に傷があり、他のレオーネに比べても二回りくらい大きいらしい
あかりたちはそいつのことを【キング】と呼んでいた
「キングには私たち幹部と龍夜たちの中でも高火力を出せる人員で臨む。
でないと、倒せるか分からへん」
あかりのその言葉にみんなの顔が曇る
「でも、そのメンバーなら倒せるってことだよな?」
沈黙を破る龍夜
龍夜の言葉にあかりは大きく頷いた
「じゃあ倒すしかないな」
「俺があいつの腹に大穴開けたるで!」
意気込む龍夜と大我のおかげで会議室に再び明るさが戻ってくる
そんな、二人を見て安心したあかりは話を戻す
「カプラとサーペントにも進化個体がいるがキングほどではない。
それぞれ、奴らの弱点になり得る人員を振ってるつもりや」
カプラは攻撃自体は強力では無いが、動きが早い
だから、狙い撃ちをできる冬弥、素早い攻撃ができる美湖、そして念力で動きを止めることが出来る聡を割り振った
サーペントは長い体で攻撃をしてくる
切断に特化した楓子、雅、英美里を割り振った
しかし進化個体は毒を吐く
進化個体とぶつかる時は後方から智咲に出てもらい
バリアで守りつつ叩く戦法だ
「以上が割り振りとモンスターについての説明や。
そしてここからが本題。
門の破壊についてや」
門は今まで世界で誰一人破壊をした者はいない
それどころか、門自体見たことがある人は多いが、門に直接触れたことのある人間は一切確認できていない。
どのように破壊できるのかすら分かっていないという
「そんなので大丈夫なのか?」
「破壊出来るか分からんけど、活路はあるんや」
あかりは門破壊についてある程度仮説を立てていたらしい
一つ目は、より大きな攻撃での破壊
門自体に大技を複数回ぶつけることで破壊が可能かもしれないということ
二つ目は、進化個体モンスターの討伐
門にはそれを守るように進化個体が必ずいる
レオーネ、カプラ、サーペント、それに龍夜たちの街にあるゴブリンの門にもゴブリンキングがいた
その進化個体を討伐することで門が消滅する可能性
三つ目は最悪のパターン
門は破壊することは出来ないという仮説だった
「なるほどな。
その中じゃ二つ目が一番有力じゃないか?」
「そうや。
でも、私たちなにわ連合より大きなギルド
砂漠の銀ですらまだ進化個体を倒せてへん
それほど、あいつらは強いっちゅーことや」
そう言ったあかりの顔はなぜか希望に満ち溢れていた
不安がるみんなを安心させるかのように話を続ける
「でも、私らなら、このメンバーなら!
絶対倒せる。
これは私が考えに考え抜いた末にベストなメンバーを割り振れたつもりや!
私は一切負ける気はせぇへん!!」
その言葉で皆が立ち上がる
やっぱりあかりの言葉は凄いな
みんなの指揮を一気に上げやがった
そう思っていた俺の手に温もりが訪れる
隣を見ると智咲が俺の手を握ってくれていた
「智咲?」
「勝とうね、お兄ちゃん。」
そう言い微笑む智咲を見て安心する
強くなったんだな、智咲
俺も負けてられない。
「作戦開始は本日午後6時や!!
全員それまでに英気を養っててくれ!」
あかりのその言葉を最後に会議は終わった
掃討作戦までそれぞれが準備をする
誰かを守れるように、死なないように。
午後6時ちょうど
250名を超える人間が大阪中心部近くに集まる
それぞれが各班に別れて整列をする
「今日!私らは、自分たちの街を取り戻すために奴らを倒す!!!!
みんな、絶対死ぬんやないで!!!
作戦開始や!!!!」
それぞれの班がターゲットのモンスターに向かって走り出す
NEXT




