Episode 33 想い想われ
鈴音に話があると伝えた雅
時刻は午後8時半
雅は鈴音の部屋に向かおうとしていた
「(柄にもなく緊張してる。
あの子に嫌われると思うと手が震えるわ...)」
高校一年生から鈴音とずっと一緒にいる
休み時間も、お昼も、休みの日だってずっと
雅が唯一心を許せる女友達
彼女は自分の気持ちを伝えたらどう思うだろうと考える
「行かなきゃ。」
重い足取りで扉を開く
今日だけはこの部屋の扉が鉛のように重く感じた
しばらく歩くと鈴音の部屋が見える
鈴音の部屋は自分の身長よりも大きく見えた
「(覚悟を決めないとね)」
コンコンと部屋をノックする雅
自分の名前を言い、来たことを鈴音に告げる
部屋の中から、彼女のいつもの可愛らしい声でどうぞとだけ聞こえ、扉を開けて中へ入る
すると
「雅ーー!!!!」
鈴音が雅に抱きついてくる
突然の飛び込みに慌てて彼女を受け止めて体が少しよろける
スリスリと顔を胸に擦る彼女は小動物のようだった
「す、鈴音?」
「会いたかったよーーーー!
もう大変だったんだからー!!」
今日までの試験が大変だったと口にする鈴音
いつも通りの彼女に雅の心は少し落ち着く
「そうみたいね。試験、どうだった?」
「聞いてよー!!
もう色々ありすぎてさー?」
そう話し出す鈴音をベッドに誘導し、二人で座りながら話す
少し怒ったり、悲しんだり、コロコロと表情を変える鈴音
しかし、最後には笑顔で
「合格貰えて良かったよ〜!!」
そう言った
この時間だけだが、学校の時と同じ時間を過ごしている気分になる
まだ一ヶ月と少し前なのにひどく懐かしく思える
「私の話はおしまい!
それで、雅の話は?」
今までの笑顔とは打って変わって、真剣な表情で見つめる鈴音
その問いかけに懐かしい高校生活から一気に現実へと戻される
「鈴音。
あなたに謝らなければいけないことがあるの。」
深く、深く息を吸う
今日、時分はこの子に嫌われてしまう
嫌だ、この先も仲良くしていたい
そんな自分勝手な願望を抱え言葉に詰まる
「大丈夫だよ、雅。」
自分の心の動揺を見透かすように言葉をかけてくれる鈴音
「(あぁ、やっぱりこの子には嘘をつきなくない)」
意を決して言葉を放つ
「私、龍夜のことが好きなの。」
鈴音から目を逸らし下を向き言う
言ってしまった。
鈴音の顔が見れない。
こわい。こわい。こわい。
それでも雅は話を続ける
もう止まれない
「鈴音が龍夜のことを好きなのはちゃんと理解してた
でも、いつの間には私も彼に惹かれてたの。
最初は良い人だと思ってただけ。
でも、彼の隣で過ごしていくうちにどんどんどんどん好きになっていってしまってた
この世界になってみんなを引っぱる龍夜は誰よりも魅力的で、もう自分の気持ちが抑えきれなくなったの!!
自分の大事な友達が好きな人を好きになって、諦めたくないと思ってしまったの!!」
ひたすら自分の思いを口に出していく
鈴音は何も言わず聞いているだけだった
「あなたを応援するって言っておきながら、醜く自分も彼のことを想ってしまってる
嫌われても仕方ない。
でも、もう自分の気持ちを誤魔化せないくらい龍夜が好きなの...
本当にごめんなさい...」
雅が言葉を吐き出し終わり、まだ何も言ってこない鈴音を不思議に思い、鈴音のいる左側に視線を移す
すると、鈴音は静かに涙を流していた
「知ってたよ。」
予想もしなかった言葉が鈴音から出た
驚きのあまり彼女の顔を見ることしか出来ない雅
「雅が龍夜くんのこと好きなの私知ってたよ。」
「.....え?」
ようやく出たのは疑問を聞き返すだけの言葉だった
まだ涙が止まらない鈴音は言葉の続きを話す
「雅、いつも龍夜くんのこと見てたもん
学校の時も、もちろんこの世界になってからも見てることが多くなっていってることも分かってた
ごめんね。雅の気持ちに気づいてたんだ、私」
涙で滲んでいる茶色の瞳が真っ直ぐに雅を見つめる
やっと彼女の言っている意味を理解した
しかし、どんな言葉を返したらいいのか分からない
知っているということは雅にとっては全く予想のできていなかったことだったから
「私ね、待ってたんだよ?
雅が話してくれるの。
でも、それがここまで雅を苦しめていたなんて思ってなかった。
私のせいで苦しい思いをさせちゃってごめんね...」
「そんなことない!
鈴音は悪くないじゃない!!
悪いのは勝手に好きになって勝手に苦しんでた私よ!」
なぜか鈴音の方から謝ってくる
おかしいのは自分なのに、謝るのは自分なのに、悪いのは自分なのに。
いつの間にか、雅の瞳からも涙が溢れ出していた
「雅、今私はどんな気持ちだと思う?」
いきなりの質問に戸惑ってしまう
しかし、彼女の気持ちは分かっていた
「私が龍夜のことを好きだということで悲しい気持ちにさせてる
嫌悪感もあると思うわ。」
雅の答えにぽかんとした顔をする鈴音
しかし、その後すぐに雅に優しく微笑む
「違うよ?
私は雅が自分の気持ちを話してくれたことが嬉しいの。
そして、それを話したら私に嫌われるって思ってたことが少し悲しいかな」
本当に悲しそうにそう言う鈴音
雅は彼女の気持ちが理解できなかった
「だって、私は応援するって言っておきながらあなたと同じ人を好きになったのよ?
そんなの嫌わない方がおかしいわ。」
その言葉に彼女は苦笑いを見せた
「あれれ、やっぱり私っておかしいのかな?
試験の時も中学生の男の子にあんたはおかしいって言われたんだよね...
でもね、この気持ちは本当だよ。
それに...」
再び真っ直ぐに雅を見つめる鈴音
そして、少し溜めて言葉を続ける
「私はそんなことで雅を嫌いになったりしない。
同じ人を好きになったっていいじゃん
それで私と雅が仲悪くなっちゃうなんて悲しいよ。」
「どうして...
どうしてそんなに...」
鈴音の嘘なんて微塵もない思いに、溢れた涙が止まらない
言葉も上手く出てこない
「私にとって雅は、かけがえの無い大事な大事な友達だから!」
流れていた涙は止まっていたが、まだ少し目に溜めながら彼女は笑顔を向けてくれる
こんな自分でも、彼女はまだ大事な友達と言ってくれるのだ
「鈴音...!!
ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!」
耐えきれなくなり彼女の胸に飛び込む
先程とは真逆の立場で、彼女は優しく受け止めてくれる
「よしよし
たくさん苦しい思いをさせてごめんね。
話してくれてありがとうね」
声を上げて泣く
彼女の細く柔らかい指が優しく頭を撫でてくれることに暖かさを感じ、涙が止まらない
「ごめんなさい...」
「もー!もう謝るの禁止!!
それに、私だって負けるつもりはないからね!
これからはライバルだよ!!」
ライバルという言葉に顔を上げて鈴音の顔を見る
彼女は頭に手を置きながらニコッと笑いかけた
「...ライバル?」
「そう!!
どっちが龍夜を落とせるか!!
私たちはライバルなのです!!
他にも沢山いるけど....」
堂々と宣戦布告をしてくる鈴音が面白くて笑ってしまう
その笑いにつられ彼女もクスクスと笑っている
「鈴音、本当に嫌わないでいてくれてありがとう
私もあなたを本当に本当に大事な友達だと思っているわ」
「もー!さっきも言ったけどこの先一生、私が雅を嫌うことなってないからね!!
ちゃんと理解しておくこと!!」
お礼を告げて自分の気持ちを改めて伝えると、彼女は恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに返してくれた
「ところで、他にも沢山いるっていうのは??」
「えっと、それはねーーーーーーーーー」
雅の質問に鈴音が答える
先程までの涙は、もう綺麗さっぱり消えていた
思いを告げた雅、それを受け止めた鈴音
今の二人は少しでもこの時間が長く続いたらいいのにと、そう思っていた
次の日から本格的に修行が始まる
みんながみんな自分の修行に集中出来ていた
個々の能力の底上げをし、掃討作戦に向けて励んだ
そして遂に、その日を迎える。
NEXT
ちょっと掃討作戦まで時間かかりましたね(>人<;)
次回から掃討作戦開始です( *˙0˙*)۶




