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異世界現実 isekai real  作者: クワエ
第2章:大阪掃討作戦編
32/36

Episode 31 鈴音の過去と強さの意味

 

「飯終わったら、話がある

 昨日の場所で待っとる」


 泉にそう言われた鈴音は、ご飯を食べるとすぐに昨日泉と話した場所へ向かう


 そこには少し不機嫌な泉が立っていた


「遅い」


 泉が不機嫌なのは鈴音が来るのが遅かったみたいだ


「ごめんごめん!

 それで、話って何かな?」


 潔く謝り要件を聞く鈴音

 泉は頭をかきながら言った


「今日は助かった、ありがとな」


 泉の突然のお礼に鈴音は顔をぽかんとさせている


「え!?あ、えーーっと、どういたしまして?」


 何故か疑問で返す鈴音に泉は続ける


「あと、弱そうなんて言って悪かったわ

 あんたは強い。

 みんな、あんたのおかげで助かったし」


 照れながら斜め下を向き言う泉に、鈴音は大笑いをする


「な、なんで笑ってるんや!」


「ごめんごめん!

 泉くんがあまりにも素直だったから嬉しくって!」


 鈴音と話す泉には、昨日のような刺々しさは無かった


「あんたは、どうやってそんなに強くなったんや?」


「え?私治癒しか出来ないし、泉くんみたいに強いってわけじゃないよ??」


「ちがう!!せ、精神的にや」


 あーーーー、と納得のいく顔をする鈴音

 寂しいような、懐かしむような顔で微笑みながら話し出す


「私ね、昔虐められてたんだ」





―――――――――――――――――――――


「おーい!佐渡!!

 すまん!ノート見せてくれ!」


「いいよー!

 はい、どーぞ!」


「たすかる!!いつも申し訳ねぇ!!」


「大丈夫大丈夫!」


 高校一年生に成り立て

 鈴音は一年生でカッコイイと噂の男の子に好意を寄せられていた

 なにかと理由をつけて鈴音に絡んでくる彼を、鈴音は嫌だとは思わなかった


「ちっ、ぶりっ子して媚び売りやがって」


 しかし、その男子に好意を寄せていた女の子たちは鈴音のことを良くは思っていなかった



 キーンコーンカーンコーン


「席に着けー授業始めるぞー」


「あ、加藤くん起きて

 先生きたよ、授業始めるって」


「んぁ?あーあぁ、ありがとう佐渡」


 この時から龍夜とは隣の席だった


 再び眠りに入る龍夜、真剣に授業を受ける鈴音

 あっという間に午前中の授業は終わる


「ねぇ、佐渡さん?

 放課後ちょっといいかしら?」


 同じクラスの阿部麗華(あべれいか)が話しかけてくる

 彼女の表情は少し怒っているようだった


「え、あぁ、大丈夫だよ!」


「そう、じゃあ放課後理科準備室まで来て」


「え、なんで理科準備室?」


 鈴音は呼ばれた場所に疑問を持ち、なぜかと問う

 しかし、「いいから」とだけ言われ、阿部は教室を出ていった


「(阿部さん、なにか大事な用があるのかな?)」


 そんなことを考えながら午後の授業を受ける

 それからあっという間に放課後になった


「理科準備室ってここだよね?」


 入学してまだ一ヶ月しか経っていなかったので

 場所が曖昧で合っているのか不安になる

 上にあるプレートを見るとしっかり理科準備室と書かれていた


「阿部さーん?佐渡ですけどー」


 扉を開けると中は暗く、奥の方に阿部と他に三人の女子が待っていた


「やっと来たわね、佐渡鈴音」


 ガシャン!


 突然後ろの扉の方から大きい音がする

 扉の前に隠れていたもう一人の女子が扉を閉め、鍵までしていた


「え?どういうこと?」


 閉じ込められたことに困惑する鈴音

 阿部たちを見ると鈴音の顔をじっと見つめ、不気味に笑っている


「おい、佐渡ぃ

 てめー、吉田くんにちょっかい出してんじゃねぇよ」


 阿部が怒りをあらわにし、鈴音に詰め寄る


「ちょ、ちょっかい?え、出してないよ...?」


「とぼけんじゃねぇよ!!」


 取り巻きの女子が鈴音を突き飛ばす

 飛ばされた先には机があり、勢いよくぶつかる


「佐渡さ?ぶりっ子だよね?

 媚び売ってて気持ち悪いんですけど」


「媚びなんて...売って...なんか」


「売ってんじゃねぇかよ!!」


 倒れている鈴音の腹に蹴りを入れる阿部

 鈴音は蹴られた箇所を押さえて顔を歪ませる


「私たちの吉田くんなんだよ、お前みたいなブスが話しかけていいわけないだろ?」


 髪を引っ張られ持ち上げられる

 鈴音はどうして自分がこのようなことをされているのか理解が出来なかった


「(こわい...誰か...)」


 目の前で拳を振り上げる阿部

 鈴音は次にくる痛みに絶望し目を瞑る


 カチャ


 殴られる寸前、理科準備室の鍵が開く音がした

 阿部の振り上げられた拳が止まる


「お前ら、なにしてんだよ」


 涙で滲む視界を扉の方に向ける

 そこには、いつも隣の席で寝ている加藤龍夜が立っていた


「あ?加藤がなんで...」


「俺はなにしてんのか聞いてるんだけど。」


「お前には関係ないだろ!!!」


 取り巻きの女が叫びながら龍夜を威圧する

 しかし、龍夜の後ろから現れた影に遮られる


「関係はあるわよ

 これは確実なイジメ

 生徒会として見過ごす訳にはいかないわ」


「伊集院!?」


 龍夜の隣に立つ女子

 その子は、入学間もないのに生徒会長候補として認められ、庶務の腕章をつけていた伊集院雅だった


「ちっ!!邪魔しやがって!!」


 そう言って阿部と取り巻きの女子たちは理科準備室から出ていった


 来るはずもないと思っていた助けに、思考が追いつかず、ぼーっとする鈴音


「大丈夫か?佐渡」

「佐渡さん、駆けつけるのが遅くなってごめんなさい」


 そう言って手を差し伸べる龍夜

 謝ってくる雅


 鈴音は不安と苦痛から解放され、安堵の涙を流す


「うわぁぁぁぁぁぁん!!!」


「お、おい、泣くなよ」


「怪我してるわ。

 とりあえず保健室に行きましょ」


 鈴音が泣き止むのを待って、三人は保健室へと向かった


「二人とも本当にありがとう

 でも、どうしてあそこに?」


「それは加藤くんに聞いてちょうだい」


 鈴音の質問を雅が龍夜に振る

 龍夜は照れくさそうに頬を掻きながら言う


「あーーっと、阿部たちが佐渡呼び出してんの聞いてた」


「な、なるほど〜

 え、でも鍵は?」


 更に疑問が芽生え、続いて聞く鈴音


「私が頼まれたの。加藤くんに

 理科準備室の鍵をどうにか借りてきてくれー

 ついでに付いてきてくれーって

 事情も言わずに頼むものだから、変な疑いをしちゃったわ」


「なんだよ、変な疑いって...」


 龍夜は自分だけが行ったところで事態は収束しないと考え、雅という生徒会にも先生にも顔が効く存在を連れていくことで解決しようとしていたのだ


「そうなんだ...

 加藤くん、伊集院さん、本当に本当にありがとう!!」


 赤く腫れた目でお礼を言う鈴音

 そんな鈴音に龍夜は警告をする


「佐渡。今度また何かあったら俺か伊集院に言えよ?

 何があるかわからんから警戒しといた方がいい」


「そうね、ああいう人達はこれだけじゃ終わらないと思うわ」


 二人は心配そうな顔で鈴音を見つめる


「大丈夫!!本当にありがと!」


 その日は龍夜と雅に家まで送ってもらい、家に帰ってからは部屋に閉じこもった


「(怖かった。

 加藤くんと伊集院さんが来なかったら、今頃どうなってたんだろ

 また前みたいに...)」


 目を閉じるとまぶたの裏には、殴りかかってくる阿部の顔が浮かぶ

 その日は全く眠れなかった




 次の日

 普段通り教室に入る鈴音に、なぜかみんなの視線が集まる


「え?

 お、おはよー」


 その異常な視線に鈴音は動揺を隠しきれなかった


「おい!佐渡!!

 見たぜこれー!」


 クラスのおチャラけた男子が鈴音にスマホの画面を見せる


「えっ...」


 そこには中学時代の鈴音の写真が表示されていた


 髪は今とは違い黒髪で、分厚いメガネをかけていつも下を向いている根暗な女子

 それが中学時代の鈴音だった

 鈴音は所謂高校デビューだったのだ


「あっはっは!!!

 すっげーよなこれ!!

 人ってここまで変われるんだな!!」


 目の前にいる鈴音とスマホに表示されている鈴音を交互に見ながら大笑いをする男子


「中学の頃は虐められてた見たいよぉー?」


 そう暴露した阿部たちが教室の端でこちらを見て、また不気味に笑っている


「(もしかして、阿部さんたちが...?

 しかもなんで中学のことを...?)」


 鈴音の推論は正しかった

 阿部たちが鈴音と同じ中学の者をSNSで探し、鈴音の写真を送って貰っていたのだ

 その時に鈴音の中学でのいじめの事を聞いていた


 クラス中がヒソヒソと話しながら鈴音を見ている

 その光景を見て、鈴音はいつの間にか涙を流していた


「(変わることがそんなにいけないことなの...?)」


 鈴音は中学の頃は大人しく、友達もあまりいなかった

 そのせいか、いじめのターゲットにされ毎日のように嫌がらせをされ続けた

 高校からはそんな自分を変えようと、オシャレも勉強して髪も染めてメガネもコンタクトにした

 たくさん友達を作るために人と話すことも練習した

 わざわざ自宅から離れた高校を選んだのも、自分のことを知っている人がいない所で新たにスタートするためだったのだ


 しかし、みんなの視線はそんな鈴音の決意を踏みにじるような蔑む目だった


「わ、わた、わた...しは...」


 周りの悪意のある視線に昔のトラウマを思い出し言葉が出なくなる鈴音

 すると、周りの騒ぎを沈めるかのように龍夜が口を開く


「あのさー?

 別に中学と違ってても良くない?

 お前らは生まれた時から自分は変わったことがないって言い切れるわけ?」


 突然の龍夜の言葉に教室が静まり返る

 龍夜に正論を言われ、騒いでいた男子も何も言えなくなる


「よっと、どれどれ?」


 龍夜は席から立ち上がり、騒いでいた男子のスマホを取り上げる


「ちょ、ちょっと加藤くん!?」


 スマホの画面をじっと眺めている龍夜に、見られたくないと止める鈴音


「中学の頃の佐渡も可愛いけど、今の佐渡はもっと可愛くなったな!」


 眩しい笑顔を向ける龍夜

 鈴音には龍夜が心から言っている言葉だとすぐに理解出来た

 それほどまでに龍夜の笑顔と言葉には嘘がなかった


 龍夜がそう言ったあとすぐに教室の扉が開かれる


「阿部さんとその他四名。今すぐ校長室へ行きなさい

 担任の先生と校長先生が待ってるわ」


 扉を開けそう言ったのは雅だった

 雅は今朝の教室のみんなの雰囲気から異変を察知し、すぐに生徒会と先生たちに報告をしに行っていたのだ


「な、なんで私たちなのよ!!」


「あなた達がSNSで写真受け取っていたのは分かっているわ」


「はぁー?!

 証拠出しなさいよ!!証拠!!」


「あら、私の会社のアプリを使って連絡をしていたのだから、私が言うのがなによりの証拠じゃないかしら?」


 そう、今の若者は使っていない人の方が少ない、SNSアプリ『Charatter』

 それは雅の会社、伊集院財閥が運営しているアプリだったのだ


「うそでしょ...」


 それを知らなかった阿部は絶望感に満ちた表情で膝から崩れ落ちる


「他の人も、写真を消さないと共犯にするわよ。

 早く消しなさい。」


 雅が教室中の人たちを睨む

 みんなは慌ててスマホを取り出し写真を消しだす

 クラスのほぼ全員が写真を持っていたみたいだ


「おい!俺も消すから早くスマホ返せ!」


「お前はやり過ぎたからダメだ」


 そう言っておチャラけた男子のスマホを床に叩きつけ踏み潰す龍夜

 周りにとっては異常な行動に見えただろう

 しかし、鈴音はその行動で救われた


 阿部と取り巻き達は雅に引き連れられて教室を出ていった

 それからは普通な学校で、その日は鈴音のことで騒ぐ者は居なかった




 放課後、鈴音に呼ばれた龍夜と雅は屋上に来ていた


「佐渡さん、改めて話って何かしら?」


「なんで俺も??」


 呼ばれたことを疑問に思う二人は、下を向く鈴音をじっと見つめている


「二人とも、昨日も今日も本当にありがとう

 でも、なんで二人はそこまでしてくれるの?

 私は―――――」


 鈴音は龍夜と雅に話した

 昔の自分のこと、虐められていたこと、変わろうとした自分のこと、今の自分のこと全てを


 全てを話し終え二人の顔を確認する鈴音

 視線の先の二人はニコニコと微笑んでいた


「佐渡は佐渡だろ??

 俺はいつも起こしてもらって感謝してるんだ

 それを返したまでだよ」


「私はあんな人たち見過ごせなかっただけよ

 それに、誰もが変わることを恐れることが多いのに、変わることを選べるあなたは素晴らしい人だわ」


「俺もそう思うよ!」


 雅の意見に乗っかる龍夜

 それがなんだか可笑しくて、鈴音は笑ってしまった

 そんな鈴音を不思議そうに見る龍夜と雅


「あの、二人に改めてお願いがあります!」


「ん?」

「なにかしら?」


「私の初めてのお友達になってください!!!」


 鈴音のその言葉に、龍夜と雅は顔を見合せすぐに笑顔になる


「おう!」

「もちろん」


 この日から龍夜と鈴音と雅は心を許せる友になった


 鈴音が龍夜に恋をするのはまた別の話


―――――――――――――――――――――


「ってことがあったの」


「へー」


 鈴音の話を興味なさげに聞く泉


「って!全然興味無さそうじゃん!」


「だって興味無いんやし」


 もーーっと頬を膨らませる鈴音

 しかし、すぐに笑顔になり話を続ける


「それでね、龍夜くんと雅に救ってもらったから今の私がいるの。

 だから私は二人の力になりたいって思ってる」


「それがアンタの強さの秘訣?

 じゃあ、俺とあんまり変わらんやん」


 残念そうに言う泉に鈴音は即答で返す


「泉くんとは全く違うよ」


 鈴音の顔からは笑顔が消え、真剣な顔で泉に言っていた


「は?一緒やろ

 あかりさんの役に立つために戦ってるんやし」


「全く違う。

 私は、龍夜くんたちのことを大事にしてる

 けれど、自分の命も同じくらい大事にしてるの。」


「は?」


 何を言っているのか分からないという顔で聞き返す泉


「私が死んじゃったら龍夜くんも雅ちゃんも他の仲間だって悲しんでしまう

 それが分かるから、私は自分の命も大事にするの

 泉くんみたいにあかりさんのためなら自分の命も他人の命もどうでもいいって思う戦い方はしない」


「でも、あんたは殺されそうになったのに庇ったやん」


 泉は自分の命を大事にすると言っている鈴音と自分のことを体を張って守った鈴音が矛盾していると言う


 そう言う泉に対し鈴音は不思議そうな顔で答える


「だって、怪我をしてる仲間を守るのは当たり前でしょ?」


 鈴音の返しに目を見開いて驚く泉

 そう、鈴音はもう泉のこともなにわ連合のことも大事な仲間だと思っていた


 泉にはそれが理解できなかった

 両親もいない、孤児院でも一人ぼっちだった泉

 この世界になって手を差し伸べてくれたあかりが、唯一大事に思えた存在だった

 何も無い自分はあかりのために役に立つことだけを生きる糧にしようと思ってるのだ

 そんな泉にはすぐに他人を仲間だと思える鈴音の考えがおかしいと思った


「アンタ、おかしいで。」


 そう言う泉に鈴音はそうかな?と少し考え、再び笑顔で返す


「でも、泉くんも私にとってはもうそういう存在だよ!

 もちろん、澪さんもなにわ連合の人たちも!」


 鈴音にそう言われた泉の心の中に暖かい何かが流れる

 泉は、自分でも気付かぬうちに涙を流していた


「え!?泉くん!?」


「え?」


 まだ自分が泣いていることに気づいていない泉

 そんな泉を鈴音は静かに抱きしめる


「泉くんは独りじゃないよ。

 私も、あかりさんも、澪さんも。

 なにわ連合の家族がついてるよ」


「か....ぞく?」


 聞き返す泉に抱きしめていた手を離し、両手を目一杯広げ答える鈴音


「そう!!家族!!

 こんな世界だからこそ出来た家族だよ!!」


 その言葉で、泉は鈴音のことがやっと理解出来た気がした

 こういう人だから、みんなを守るために命を張ってるんだ

 役に立つことだけを考えて戦う自分

 守るために戦う鈴音

 その強さに圧倒的な差があるのは当たり前だった


「二人ともー!

 そろそろ本部に帰る準備するわよー!」


 話をする二人の元へ、澪が呼びに来る

 泣いている泉を見て、澪は驚きの声を上げる!?


「え!?なにがあったの!?」


「な、なんでもないです。」


「いやー、えーっと、語ってた?みたいな感じですかね?」


 明らかに下手に誤魔化す鈴音

 涙を誤魔化そうと目を擦る泉に澪が言う


「泉ちゃん?女の子なんだから目を擦っちゃダメよ?腫れちゃうから」


「女の子?誰がですか??」


「あら?言ってなかったっけ?

 泉ちゃんは女の子よ?」


「えぇぇぇぇええええー!!!!!!!!!」


 鈴音の驚きの叫びとともに、鈴音の試験は合格を貰い終了した




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