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異世界現実 isekai real  作者: クワエ
第2章:大阪掃討作戦編
31/36

Episode 30 鈴音の試験

 

 時は遡り

 澪に連れられ、試験に向かった鈴音の話



「鈴音さん!!こちらお願いします!!」


「はい!!」


 デスマウス討伐のために鈴音たちは繁華街にきていた

 思った以上に数が多く、負傷者が出始める


「ちょっと苦戦してるわね」


 なにわ連合幹部、叶澪は鈴音に回復を任せ、前線の方を見る


 ―――――――――――――――――――――

【叶澪(かなえみお)】

(年齢)17歳

(好きな食べ物)クッキー、紅茶

(特技)お菓子作り


 ギルドなにわ連合の幹部

 髪は暗い赤色で巻き髪

 瞳の色も髪と同じ暗い赤

 あかりの高校の一つ下の後輩で、生徒会書記をしていた

 学校がモンスターに襲われた際、あかりと大我に助けられ、それから行動を共にしている

 普段は何も無いところで躓くくらいドジだが、戦場ではドジは無くなり、なにわ連合最大の回復役として活躍している


 スキル

 《平療(マラッティア)》

 傷や病気を治す

 自分の魔力を他者にあげることができる

 ―――――――――――――――――――――


「前線の方たち大丈夫ですかね?」


「ええ、ちょっとだけけが人は出てるけど、あの子がいれば大丈夫よ」


 不安そうに聞く鈴音に、澪は前線を見ながら答える

 澪の言うあの子とは誰なのだろうと鈴音は首を傾げる


「あの子って誰ですか??」


「あぁ、鈴音ちゃんは会ったことないもんね

 こっからじゃ、ちょっと見えずらいから戻ってきたら紹介するわ」


 そこからは、多少苦戦はしていたが何事もなくデスマウス討伐の一日目は終了した






 繁華街から少し離れた民宿を拠点にしている討伐班

 今は皆で夜ご飯を食べている


「鈴音ちゃん、今ちょっといい?」


 そう言い、自分のご飯を入れた茶碗を持って鈴音の隣に座る澪

 それに対し、鈴音は笑顔で返す


「大丈夫ですよ!どうしましたー?」


「ほら、あっちのちょっと離れたところでご飯食べてるあの子が今日言ってた子」


 そう言った澪が見つめる先には、みんなの輪から少し離れたところでぽつんと座りながらご飯を食べている緑髪の髪を結んでいる中学生くらいの男の子がいた


「あの子がそうなんですか?

 見るからに幼い感じですけど...」


「そう、あの子はまだ中学二年生

 でも、戦闘力でいったら幹部を抜いたらあの子が一番よ」


「え!?そうなんですか!?」


 澪の言った言葉に驚く鈴音

 二人が見つめていることに気づき、緑髪の少年はこちらに向かってくる


「なにじろじろ見てるんすか澪さん」


 その声は高く、まだ声替わりの来ていない幼さがあった


「ちょっとこの子に泉ちゃんのこと教えてあげてたのよ、すっごく強いんだって」


「食欲が失せるので辞めてください

 それに、こんな弱そうなやつに教えられても困ります」


 澪の言葉に刺々しく返す泉という少年

 弱そうと言われた鈴音は少しショックを受けていた


 ―――――――――――――――――――――

【坂本泉(さかもといずみ)】

(年齢)14歳

(好きな食べ物)生姜焼き

(特技)絵を描くこと

 ギルドなにわ連合の幹部候補

 実力は幹部に少し劣るくらいで、幼すぎることから幹部には上げられていない

 孤児院で育ち、両親は元々居ない

 モンスターから逃げているところをあかりに助けられ、そこからあかりを慕って付いてきている

 口が悪い


 スキル

 《絵心(ピットゥーラ)》

 自分の持っているスケッチブックに書いた物を顕現させることが出来る

 動物を書いたなら、意思疎通も可能

 ―――――――――――――――――――――


「こら、泉ちゃん!弱そうなやつは失礼でしょ?」


「ほんとのことっすよ」


 そう言ってその場から離れ、再び自分の座っていた場所に戻る泉

 泉の行動に、申し訳なさそうに澪は鈴音に謝る


「ごめんね、あの子幹部以外に気を許してないの」


「全然大丈夫です!気にしないでください!」


 にこにこと笑顔で返す鈴音は、内心弱そうと言われたことで落ち込んでいた


「(治癒することしかできない私は、弱く見えて当たり前だよね...)」


 そんなことを考えていると、みんなは次々に食事を終わり、寝る準備を始める


「私達もそろそろ準備しなきゃね」


 そう言って微笑む澪に、鈴音は急いで食事を口の中に入れる

 食べ終わり片付けを終わらすと、寝る前に明日の作戦の確認をすると澪に呼ばれる


「明日は繁華街の中心部まで攻め込みます

 デスマウスは夜に活発になる

 本当は夜に討伐したいのだけれど、視界が悪すぎてこちらが不利になるわ

 だから、奴らが活動を終える早朝に討伐を開始します」


 作戦の確認が終わり、各々寝始める

 鈴音は泉の言った言葉が引っかかり、あまり熟睡することは出来なかった




 時刻は午前六時、鈴音が目を覚ますとまだみんなは寝ているのに、泉は一人で準備を始めていた


「早いね、もう準備してるの?」


 鈴音が話しかけるが無視をする泉


「今日も頑張ろうね!!

 私もできる限りサポートする!!」


 負けじと話しかける鈴音に痺れを切らし、泉は言葉を返す


「うるさい、弱いやつは話しかけんな」


 相変わらずの口の悪さに鈴音は涙目になる

 そんな鈴音を見ずに、泉は外に出る


「随分嫌われちゃってるわね」


 二人の声で目を覚ました澪が鈴音の隣に立つ


「どうしたら仲良くなれますかね...」


 鈴音の言葉に澪が驚く


「泉ちゃんと仲良くなりたいの?」


「はい。

 なんかあの子、本当は一人が寂しいんじゃないかなーって」


「鈴音ちゃんはいい子ね

 あの子ね、あの性格からか全然みんなと溶け込めてなくて...

 あの子を苦手に思う人も結構いるのよ」


 悲しそうな顔で話す澪

 彼女にはどうすることも出来ないということが伝わってくる


「頑張って話しかけてみます!」


 悲しい顔をする澪を想い、なにより自分自身があの子と関わりたいと思った鈴音は、元気よく澪にそう伝える

 すると、澪は嬉しそうに微笑んだ


「ありがとう鈴音ちゃん

 さあ、そろそろ私達も準備を始めましょ」


 そういうと澪は寝ている人たちを起こし始める

 起きた人たちは次々に準備を始める

 それを見た鈴音も急いで準備をする




 時刻は午前7時半

 繁華街中央に向かっている鈴音たち討伐隊は、デスマウスの群れと遭遇した


 大人一人くらいの大きさのネズミが目算で十匹以上

 討伐隊は二十人

 余裕を持って戦える戦力差だ


 後方で回復に徹する鈴音と澪は戦場を眺めていた


「泉くん凄いですね」


 鈴音の視線の先には、スキル《絵心》で小刀二本とブースト付きの靴を顕現させ、物凄い速さでデスマウスを圧倒する泉がいた


「あの子はあかりちゃんに助けられてから、あかりちゃんの役に立つために戦ってるの

 でも、周りなんてどうでもいいと思って戦う泉ちゃんを、あかりちゃんは良く思ってなくて、

 だから幹部にも上げて貰えてないのよ」


「確かに、周りと協力なんてしないって言う戦い方に見えます...」


 一人で戦う泉

 何が彼をそうさせているのか分からない鈴音は、ただ彼の戦いをじっと見ていた


「すいません!!怪我人です!!!」


「あっちに運んでください!

 鈴音ちゃん、行くわよ!」


「は、はい!!」



 この日は少し怪我人が多く、拠点に帰る頃にはみんな疲れが出ていた


 拠点に戻り、鈴音たちはご飯を食べる

 疲労から食べながら寝ている人もいた

 半ば無理矢理その人たちを起こし、食事を終えた澪が明日の確認をする


「みんな、少し疲れが溜まってきているわね

 明日は、繁華街の奥まで行きます

 明日で全てのデスマウスを討伐する予定です

 最終日、みんな頑張りましょうね」


 澪の言葉にみんなに活気が戻る

 鈴音もみんなの助けになろうと意気込む

 作戦の確認が終わり、みんなはすぐさま眠りについた


 試験最終日でもある明日

 少し緊張して眠れなかった鈴音は、外に出ていく泉を見かけて気になり追いかける


「眠れないの?」


「またお前か」


 追いかけてきた鈴音に対し、冷たく返す泉

 それでも鈴音は話しかける


「泉くんはなんで一人で戦うの?」


 今日彼を見て思った疑問を問いかける


「お前には関係ない」


「今は討伐隊の一員だから関係あるよ」


 突き放す泉に負けないように言葉を返す鈴音

 泉の顔を見ると徐々に苛立ちを表していた

 そんな泉に、再び問いかける鈴音


「君は、一人が寂しいんじゃない?」


 鈴音がそういった途端、鈴音の胸ぐらを掴む泉


「うるせぇんだよ、お前になにがわかるんや」


 初めて感情をむき出しにする泉

 しかし、その返しは図星だと言っているようなものだった


「分かるよ。

 今のあなたの顔は昔の私に似てるから」


 そう答える鈴音には妙な説得力があった

 鈴音の表情に気圧され、手を離す泉

 鈴音に何も答えることなく彼はその場を立ち去っていった

 その日は鈴音も拠点へ戻り、明日に備えてすぐに寝た




 最終日

 昨日の疲れが少し残ってはいるが、みんなのやる気は十分だった


「今日でデスマウスを討伐します!!

 みんな、気を抜かずにね!」


 澪の指揮の下、繁華街奥に向かう討伐隊

 前日と同じくらいのデスマウスの数で、順調に討伐が進んでいた


「治療お願いします!!」


「分かりました!!」


 鈴音も最終日は慣れてきていて、怪我人の治癒もスムーズに行われていた


 しかし、


「うわぁぁぁぁあああ!!!」


 前線から叫び声が上がる

 突然の叫び声に驚き、澪と鈴音は声の方向を見る

 そこには、体長5mを超えるデスマウスが二体現れていた


「澪さん、あれ、」


「まずいわね、あそこまでの巨体がいるなんて予想もしてなかった。」


 焦っている澪を見て、鈴音に不安が押し寄せる


「澪さん!!!怪我人続出!

 ここまで運びきれません!!」


「私が行きます!!

 鈴音ちゃん!こっちは任せるね」


 巨大なデスマウスに討伐隊は半壊していた

 後方を任せるといい、澪は前線に向かっていく


「(どうしよう!どうしよう!)」


 焦りつつも慎重に治癒を施していく鈴音

 しかし、それから五分が経つが誰も運ばれてこなくなる


「まさか、治療が間に合ってない?」


 今回のデスマウスはそれほど強力なモンスターでは無かったので、回復役は鈴音と澪の二人しか来ていなかった

 さすがの澪も大人数の治療に苦戦しているのかもしれない

 そう思った鈴音は、後方にいる最後の怪我人を治癒して、その人たちに後方を任せ、前線に走っていった




「澪さん!!!」


 前線に向かった鈴音を衝撃の光景が襲う


 倒れた澪、血を流しながら戦う討伐隊

 二匹のうち一匹を一人で相手をしている泉

 最悪な状況だった


「治癒の嬢ちゃん!!

 助かった!!先に澪ちゃんの治癒を頼む!!」


 デスマウスの攻撃を身の丈くらいの大きな盾で防いでいるオジさんが鈴音に叫ぶ

 鈴音はすぐに澪の治癒に取り掛かるが、周りの状態を見て血の気が引く


 倒れている大勢の人

 中には腕や足がありえない方向に曲がっている人もいた


「澪さん...!!起きてください!!」


 鈴音が澪を治癒していると、すぐ近くを何かが飛び去る

 振り返ってそれを確認する鈴音

 飛んできていたのはデスマウスに投げられた泉だった


「泉くん!!!」


 鈴音の呼び声に何も返事をしないで立ち上がる泉

 再び彼はデスマウスに突っ込んで行った


「泉くん...


 澪さんの治癒終わりました!!

 他の方達の所に行きます!!」


 鈴音は澪の治癒を終わらせ、急いで他の倒れている人達の所へ向かう


「このままじゃ、みんな死んじゃう...!!」


 治癒に回る鈴音の元に、再び泉が飛ばされてくる

 まだ立ち上がる彼の姿を見た鈴音の顔が青ざめる

 彼の腕は逆に折れていた


「泉くん!!その体じゃ無理!!

 治療しなきゃ!!」


「黙ってろ、こいつ倒さないとあかりさんの役に立てへん」


 フラフラと歩く泉はもう意識を無くしてもおかしくない状態だった


「お前、なにしてるんや?」


 迫り来るデスマウスと泉の間に割って入る鈴音

 泉を守るように大きく手を広げている


「なにしてるんやお前!!!

 殺されたいんか!!!!」


 初めて聞く泉の怒声

 しかし、鈴音は迫り来るデスマウスに怯えながらもその場から離れようとしない


「泉くんがなんでそんなに一人で戦ってるか、詳しいことは分からない

 でも、一人の君をほっとけない!!」


 鈴音のその言葉に目を見開く泉


 次の瞬間、鈴音から大きな光が放出される


「《悠悠春風(ゆうゆうしゅんぷう)》!!」


 光がその場にいる討伐隊全員を繭のように包む

 そして一瞬で繭が消え去る

 繭から出てきた人達は怪我が完全に治癒され、疲労も魔力までも回復していて、すぐに意識を取り戻す


「暖かい」


 泉は鈴音の放った光に触れ、その暖かさを感じた

 それは春が訪れる時の暖かさと似ている

 鈴音の優しさが込められた光だった


「後は頼みました...」


 ありったけの魔力を使い倒れる鈴音

 泉は倒れる鈴音を受け止める


「弱くないやん」


 倒れた鈴音を後方に運ぶよう頼み、デスマウスにもう一度立ち向かう泉


 完全回復した今、泉はデスマウスに遅れをとることは無かった


 スケッチブックに一瞬で絵を描く


 「《描鮫巻(びゃっこうかん)》」


 スケッチブックからデスマウスを超えるほどの巨大な鮫が現れる

 鮫は空中を泳ぎながら、デスマウスの体を食いちぎっていき、あっという間にデスマウスを捕食した


 もう一匹を倒そうと視線を映すと、他の回復した討伐隊が全員がかりで倒していた

 それに安心してその場に座り込む泉


「お疲れ様、泉ちゃん」


 目を覚ました澪が話しかけてくる


「あいつのおかげっす」


 後方を見つめる泉は澪にそう告げた





「はっ!!!デスマウス!!!みんな!!」


 気絶していた鈴音が起きたのはデスマウス討伐から三時間後だった

 拠点の個室にあったベッドに寝かされていた鈴音は、フラフラな体を引きずりながら部屋を出て作戦会議をしていた場所へ向かう


「(あれからどうなったの?

 澪さん、泉くん、みんなは?)」


 不安が押し寄せてきて足取りが重くなる

 やっとの思いでたどり着いた鈴音は涙を流した


「あ!鈴音ちゃん起きた!?

 みんなー!鈴音ちゃんが目を覚ましたわよー!」


 そこには、誰一人欠けることなく元気な姿をしている討伐隊のみんながいた

 次々に鈴音に駆け寄りお礼を言ってくる


「嬢ちゃんのおかげで俺の腕治ったよ!ありがとな!」


「鈴音さんがいなかったら全滅でした!!ありがとうございます!!」


 みんなが無事なことに涙が止まらない鈴音

 それを見て澪も微笑んでいる


「本当に鈴音ちゃんがいなかったら、私たちは全滅してたわ

 みんなを危険に晒したのは私の判断ミスよ、ごめんなさい

 そして、本当にありがとう」


 頭を下げてお礼を言う澪

 澪に続き、泉を除く討伐隊全員が頭を下げている


「そ、そんな!!頭をあげてください!!

 でも、本当に誰も死ななくて良かったぁ」


 そう言って涙を流しながら微笑む鈴音

 それを見て、一部の男たちは「女神だ」、「これはファンクラブがまた増えるぞ」などと呟いていた


 ぐーーーーーー


「あっ」


 みんなの賑やかさを止めるようになるお腹の音

 音の主は鈴音だった


「お腹すいたのね!

 用意してあるから沢山食べて!」


 鈴音のお腹の音に澪が笑いながらご飯を入れ始める

 鈴音は顔を赤くして自分がいつも座っていた場所に座る


「おい」


 恥ずかしさから縮こまって座っている鈴音に泉が話しかけてきた


「飯終わったら、話がある

 昨日の場所で待っとる」


 それだけ言って、泉は外に出ていった



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