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異世界現実 isekai real  作者: クワエ
第2章:大阪掃討作戦編
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Episode 29 智咲とひな、あかりと楓子

 

 ひなの言葉で、自分の中で苦しめられていた恐怖を乗り越えた智咲

 ひなの兄琥太と、智咲の母親亜月からなにかアクションがあるかもしれないと思い、大阪には帰らず自分たちの街で修行を開始する


 カキンカキン


 荒れた空き地で銃弾が弾かれる音が響き渡る

 今は智咲の修行に冬弥が付き合っているところだ

 この街に帰ってきてもう二週間

 掃討作戦は残り半月と近づいていた


「まさか、本来の力がここまでとは」


「まだまだ序の口です」


 モンスター討伐でレベル上げもして、智咲のレベルは32から39まで上がっていた

 恐怖を乗り越えた智咲のスキル《守護》は物凄い速さで成長している


「おー、智咲のやつすっかり調子戻しやがったな」


「やっぱり智咲はそうじゃなくっちゃ!」


「ほらほらぁ!二人とも自分の修行に集中しや!!」


 聡とひなは、楓子が顕現させた二体の人形を相手に修行をしていた

 こちらも、聡がレベル31から37、ひなが33から40まで上がっている

 聡は念力で大型バスくらいの大きさなら持ち上げれるようになった

 ひなは更に魔力量も雷の威力も上がり、成果は上々だ


 あかりの采配が上手すぎるとしか言いようがないくらいに冬弥と楓子は智咲達にとってピッタリの修行相手だった


 ちなみに、冬弥はLv48で楓子はLv45らしい

 二人の強さを考えると納得のいくレベルだった


「では、そろそろ休憩しますか」


「は、はい。」


 キリのいいところで修行を中断し、休憩に入る智咲と冬弥

 ひなたちはまだ続けているので、三人の戦闘を見ながら休憩をする


「ところで、抱えていた恐怖はどうやって乗り越えられたのですか?

 聞いて良ければですが」


 水を飲みながら話しかけてくる冬弥

 智咲は少し下を向き微笑みながら話し出す


「ひなが、言ってくれたんです

 殺したのは智咲一人だけじゃない

 私と龍夜も一緒だよって

 だから、一人で抱え込まないでって

 その言葉で頭の中にあったモヤが晴れたんです」


 そう言った智咲に冬弥は少し驚いた顔をする


「そうなのですか

 偶然ってあるんですね」


「偶然?」


 冬弥の言葉に疑問を持ち、智咲が聞き返す


「ええ、頭取。あかり様も以前そのような事がありました

 なにわ連合がここまで大きくなる前のことです」


 冬弥は語り始める

 なにわ連合が今に至るまでの出来事を




 あかりがギルドを作る以前

 あかりを含め、大我、楓子、澪、渚、冬弥、それに加えてもう一人の計七人で活動していた

 あかりはあの性格から、困っている人を見捨てることはせず、見かけては助けてを繰り返しあかり達が拠点にしていた所は多くの避難民で溢れた

 その時はスキルを使えるようになって戦えるメンバーはあかり達だけだったので、食料調達もあかりたちがしていた


 丁度食料調達に出向いていたある日

 避難所に、スキルを扱える半グレ集団が攻めてきたのだ

 もちろん目的はあかり達が貯蓄していた食料目当てで

 その時避難所の護衛を頼んでいた【如月瑠璃(きさらぎるり)】が決死で避難民を守ってくれていて、避難民は無事だった


 あかりたちが異変に気づき駆けつけた頃には、瑠璃はもうボロボロで立ち上がれない状態だった

 それを見てあかりは錯乱し、半グレたちを殺してしまった


 そして、冷静を取り戻したあかりは目の前に転がる複数の死体を見て酷く後悔した

 殺すことは無かったんじゃないか、と

 しかし、彼女に更なる悲劇が起きる


 あかりは自分の後悔は後回しにし、瑠璃に駆け寄る

 瑠璃の傷は見るからに明らかな致命傷だった

 澪が回復を試みるが傷は全然塞がらない

 瑠璃から流れる血を見てあかりは絶望した

 冷たくなる瑠璃の手を握り、必死に名前を呼ぶあかり

 そんなあかりに瑠璃は優しく微笑んだのだ


「私...みんなを守れた...?」


 それだけ言うと、瑠璃の手は力無くあかりの手から滑り落ちた


 瑠璃は死んだのだ


 それから、あかりは塞ぎ込んでしまった

 自分が注意していれば。

 自分が避難所に残っていたら。

 自分がもっと早く駆けつけていたら。


 消えることの無い瑠璃の手の感触、血の匂いが頭から離れない

 あかりはモンスターと戦うことも出来なくなり、避難所にある唯一の個室に引きこもった


 そんなあかりを救ったのが楓子だった

 引きこもっているあかりの部屋を楓子が蹴破る

 そして、あかりの首元に掴みかかり怒鳴る


「ずっとメソメソして引きこもってなにしてるんや!!!

 そんなことしてて、瑠璃が帰ってくるんか!?

 違うやろ!?

 瑠璃はアンタが守ろうとしてた人たちを守って死んだんや!!

 それやのに、アンタが全部ほっぽり出してどうするんや!!!」


「でも、私のせいで瑠璃が...」


「あかりだけのせいちゃう!!

 私も、大我も、冬弥さんも、澪も、渚も、全員の責任や!!!

 一人で抱え込むなや!!!


 私にも一緒に背負わせてや...」


 あかりと楓子、そして瑠璃は親友だった

 いつも三人で行動し、放課後は三人でいろんな所へ遊びに行った

 何も気を使うことの無い親友

 こんな世界にならなければ、おばあちゃんになるまで一緒にいたはずの存在

 それを二人は失ってしまった


「もしあかりまでいなくなってしもたら、私はもうダメや...

 こんなクソみたいな世界やけど、瑠璃の分まで私と一緒に生きてくれ...」


 瑠璃が死んで、止まっていたあかりの時間が動き出した

 楓子の言葉で、あかりの塞ぎ込んでいた心はこじ開けられる


 そこからあかりは避難民を守るために、再びモンスターと戦うことを決意した

 この頃から、自らが戦場の最前線に立つようになった

 瑠璃のような犠牲者を出さないために


 そしてなにわ連合を作り、ここまで大きくしてみんなを守れるほどの強さを誇るようになった




「そんなことがあったんですね...」


「ええ、だから智咲さんとひなさんを見ているとその時の二人を見ているようで

 あかり様の執事として、楓子には感謝しかありません

 それに、あかり様が智咲さんを気にするのは以前の自分と重ねているからでしょうね」


 冬弥がそう言うと、丁度休憩に入る楓子たちがこちらに来た


「冬弥さん、さっきから私の顔みて何の話してるんや?」


「いえ、少し昔話をしていただけです」


「ふーん」


 二人のやり取りを見て、智咲は立ち上がりひなに話しかける


「ひな、私達も頑張ろうね」


「ん??うん!がんばろ!!」


 智咲の言葉の深い意味は理解出来ていないひなだが、元気よく返事をする


 もっと強くならなきゃ。

 あかりさんたちの力になれるように、みんなを守れるように。


 智咲はそう決意をして、再び冬弥と修行を始める



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