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異世界現実 isekai real  作者: クワエ
第2章:大阪掃討作戦編
29/36

Episode 28 向き合う気持ち

 

 大阪を出て車を走らせること5時間

 智咲たちは自分たちの町へと帰ってきた

 道中何度かモンスターに遭遇したが、冬弥が狙撃し苦労無く帰ってこれた


「ここが智咲ちゃんたちの街なんやぁ!

 あんま大阪と変わらんなぁ!」


「全然大阪の方が都会ですよ!」


 ひなと楓子は車の中で話す内にかなり仲良くなっていた

 二人とも車から顔を出して外を眺めている


「とりあえず、教会に向かうか?」


「あ!聡さん!!

 教会行く前に私の家に寄って欲しい!」


 ひなが聡にそう言う

 両親に元気だと報告しに行きたいらしい

 聡は分かったとだけ伝え、黙々と運転をする


「そっか、ご両親は亡くなられたんやね」


「はい、でも私はお父さんとお母さんの分まで生き抜くって決めたんで大丈夫です!!」


 そう話しているひなと楓子を眺めながら、上で狙撃をしていた冬弥は運転中の聡に話しかける


「強い子ですね、彼女は」


「だろ?うちの奴らはみんな強い

 智咲も含めてな」


 聡はそう言い、助手席に座っている智咲の方を見る

 智咲は複雑そうな顔をしている


 そこから十分後、意外と早くひなの家に着いた


「じゃ、行ってきます!

 ちょっとだけ待ってて!」


 それだけ言い、ひなは家の中へ入っていく

 ちょっとだけと言ったのは本当のようで、五分くらい経つと家から出てきた


 ひなの両親の遺体は腐敗が進んでいて、目も当てられない姿になっていたそうだ

 大きい布団を被せて隠してきたらしい

 その時に両親の遺体のそばにあるものを見つけたらしい


「お父さんとお母さんの寝てる横に、花が置いてあったの、多分琥太兄だ。」


 両親の遺体の横にひなたちが置いた花ではない、別の花が置かれていたらしい

 ひなは、自分の兄が置いたものだと考えているみたいだ


「なら、智咲ちゃんの家も行ってみた方がええんちゃう?

 連絡ついてへんお母さんからなんかあるかもやで?」


 そう言った楓子の案を採用して、ひなの家を出てすぐに智咲の家に向かうことになった


「じゃ、見てくる」


「私も行くよー!!」


 少し不安そうに行ってくると言った智咲を心配し、ひながついて行くと言った

 それを聡たちは黙って見送る


 家の中に入ると、前に来た時とほぼ変わりはなかった

 部屋を散策していると、一つだけ違和感があることがわかった

 居間にある机だけ何故か綺麗になっていた


「これって、」


 智咲は机の上を確認する

 すると、そこには石を重り代わりに切り取られたノートが一枚置かれていた


「智咲それって!」


「うん、お母さんからだ」


 ………………………………………………………………………

 龍夜と智咲へ


 あなた達なら必ず生きてると思い、この手紙を置いておきます

 お母さんは会社でモンスターに遭遇したけど、周りの人に助けられたおかげで、今も無事に生きています

 本当はスマホで連絡が取れたら良かったのだけれど、襲われた時に壊してしまって、手紙でごめんね


 お母さんは東京にいます

 砂漠の銀というギルドに避難をしています

 あなた達のことが心配でたまりません


 この手紙を見ているなら、どうにか東京まで来て

 ………………………………………………………………………


 そう書かれていた


「.....お母さん」


「良かった、良かったね智咲!!」


 母親の無事を知り、安心と嬉しさで涙を流す

 隣にいるひなも泣いて喜んでいた

 手紙の他には何も無く、その手紙をリュックに入れすぐに家を出る


「お、その顔だとなんかあったな?」


「はい、お母さんからの手紙がありました」


「ほらほら!!私の予想通りや!」


 自信満々に自分のおかげだとドヤ顔をする楓子

 智咲はそんな楓子に深く頭を下げ感謝する

 そういう対応をされると思っていなかった楓子は、慌てて頭を上げるように頼む


「ひなは、これが分かってて街に戻ろうって言ったのか?」


 少し離れて智咲たちを見ている聡がひなに問いかける


「これは偶然

 私の目的は別にあるんです」


「やっぱなんか考えてやがったか

 智咲に伝えないのか?」


「今はまだ。」


 そうか、とだけ返した聡は智咲たちに車に乗るように伝える

 母親からの連絡もあり、嬉しそうにしている智咲の顔を見ながら、ひなは少し暗い顔をするがすぐに元に戻す


「じゃ、教会へレッツゴー!!」





 しばらくして教会へ着いた

 扉は赤の象に壊されたままの状態だったが、中はそれほど荒れてもいなく、拠点にするには十分だった

 教会を拠点にし、これから智咲のメンタルケアと聡とひなの修行をしていくことになる

 今日は移動で疲れているということで、修行は明日からとなった


 午後9時過ぎ、外でタバコを吸っていた聡の所へひなが訪ねてきた


「ガキはもう寝る時間だぞ」


「今の高校生はこの時間なんて余裕で起きてますよー」


 軽く会話を交わし、聡が質問する


「なんでこの街に戻ろうなんて言ったんだ?」


「あーー、智咲にはまだ教えちゃダメですよ?」


「分かった」


「あの子は、人を殺した恐怖に怯えてる

 でも、乗り越えたいって思ってるんです

 だから、私はあの子をあそこに連れていきます」


「あそこって...まさか」


 聡は気づいた

 ひなが連れていこうとしている場所に

 聡の方を向き静かに頷くひな


「柿澤の死体がある所に連れていきます」


 ひなは智咲を柿澤の死体があるところに連れていくことで、自分が殺したのだと更に自覚させようとしていた

 その上で、智咲がどんな行動をするのかは分からない

 取り乱すか?泣き喚くか?心が折れるか?それともひな達も予想できないことか

 どちらにしろ大きな賭けである

 ただでさえ恐怖している智咲に追い討ちをかけるのだ。乗り越えれなければ、心が壊れてもう智咲は一生戦うことは出来なくなるだろう

 しかし、ひなは智咲なら乗り越えられると期待しているのだ


「おいおい、そりゃ酷すぎるだろ」


「こうでもしないとダメなんです

 少なくとも私は両親の死を遺体を見ることで受け止めました。」


 ひなの言葉には説得力があった

 ひなは両親の死を、自らが弔うことで自分自身で覚悟を決め乗り越えた

 恐怖の大きさなら、家族を亡くしたひなの方が大きかっただろう


「私にも乗り越えられたんです。

 智咲にできないわけが無いんですよ」


「信じているからこそ、か

 しっかり支えてやらんとな」


 ひなの思いも智咲の思いも理解出来る聡は、智咲のことはひなに任せるとだけ言い、教会の中に戻って行った


「許してね、智咲。」



 次の日から修行が始まったが、冬弥が組み立てたプログラムのおかげで、あっという間に一週間が経った


 その日の授業終わりに、ひなが智咲に話しかける


「智咲、ちょっといい?」


「なに?」


「一緒に来て欲しい所があるんだけど」


 そう言ったひなは、聡に車を出すようにお願いする

 智咲は承諾もしていないのに車に乗せられ、教会を出る

 車の中は沈黙だった


「(いきなりどうしたのひな

 これ、どこに向かって...)」


 見慣れたデパートが見えてくる

 そこで智咲は察した


「な、なんでここに来たの?

 ねぇ!!ひな!!」


 徐々に取り乱す智咲に、ひなは黙って何も答えない


「聡さん!!説明して!!どういうこと!?」


 ひなが黙っているからか、運転をしている聡からも何も返事がない


 すると、車が止まった

 その場所は、智咲たちが柿澤と戦った場所だった


「きて」


 車に乗って初めて口を開いたひなは、車から降り智咲を引っ張る

 ひなの手を振り切ることが出来ず、そのまま外に連れ出される


「智咲、見て。

 あそこにあるの柿澤の死体だよ。

 モンスターに食い荒らされて原型がないけど」


 酷く冷たい顔でひなが言う

 そこには、いつもの元気で優しいひなの姿は無かった


「いや...」


「智咲!しっかり見て!」


「いや、いや、いや、いや、いやぁ!!!」


 智咲の腕を引っ張り、柿澤の死体の場所まで連れていくひな

 智咲は抵抗するも、ひなの方が力が強く引っ張られていく


 下を見てしまった

 そこには、柿澤だったはずの肉の塊があった


「おおぇぇぇ」


 智咲は吐いた

 涙と嘔吐が止まらない、苦しい、気持ち悪い

 血の匂いと腐敗した肉の匂いが鼻をおかしくする


 なんで...ひな、なんでこんなことするの...

 怖い、嫌だ。

 私が殺した。

 私が殺した。

 私が殺した。

 私が殺した。


「私が...殺した...」


 涙を流しながら俯く智咲

 逸らしたいはずの視線は、柿澤の死体から動かせない


 その時、智咲の目がひなの手に覆われる


「智咲、聞いて?

 確かに、柿澤にトドメを刺したのは智咲だよ

 でもね?智咲だけじゃないんだよ。

 私も、龍夜も殺されそうだったから、柿澤と戦った

 だから、智咲だけじゃない。

 私たち三人で殺したんだよ」


 そう言って、智咲の目を覆っていた手が離される

 視界に映っていたのは柿澤の死体では無く、ひなだった

 目の前にいるひなは泣いていた


「智咲だけが背負わないで。

 私たち、親友でしょ?」


 柿澤にトドメを刺したのは智咲

 しかし、智咲を含めて、龍夜もひなも殺されそうになり、必死に戦った

 その結果が柿澤を殺すという選択だった

 殺したことだけを考えるのではなく、守るために必死に戦ったということを理解して欲しくて、ひなはこの場所へ智咲を連れてきたのだった


「ひな...私」


 ひなの言葉の意味を理解し、ぼろぼろと涙を流す智咲

 ひなはそんな智咲を優しく抱きしめる

 二人はそれから長い時間抱きしめ合い泣いていた


「もういいのか?」


 泣き止んで車に戻ってくる二人を見て、ニコニコしながら聡が聞いてくる


「聡さん、趣味悪いですね」

「そーだそーだー!」


「ばーか、割と心配してたんだぞこっちは」


 聡の心配を他所に、智咲は何かが吹っ切れたような面構えで帰ってきた

 ひなの言っていた言葉をしっかり受け止めたみたいだ


「いい顔になったじゃねぇか、帰るぞ」


 そう言い車に乗る聡とひな

 智咲は車の前から柿澤の死体の方を向く


「ごめんなさい。」


 柿澤の方に頭を下げ、それだけ言って車に乗り込んだ

 もう恐怖は頭の中から消えた

 ひなの優しさで智咲の心は救われたのだ





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