Episode 27 ひなの案
「私にいい考えがあるの」
人を殺したという恐怖から、精神的ダメージで上手くスキルを使うことが出来なくなり、掃討作戦に参加できなくなってしまった智咲
悔しさで部屋で泣く智咲にひなが考えがあると告げる
「考え...?」
ひなの一言で隠していた顔を向ける智咲
その顔は泣きすぎたせいで目が赤く腫れていた
「一緒に家に帰ろ!」
「え?」
突然意味のわからないことを言うひなに、智咲は理解が追いつかない
赤く腫れた目が点になっていた
「帰るの!私たちの家に!
そしたら、乗り越えるために大事なものが見えてくるはず!」
「意味がわからない...」
「わからなくていーのっ!
ほら!!聡さんに頼みに行くよー!」
「ちょ、ちょっと!!ひな!!」
まだひなの考えが理解ができていない智咲を無理やり引っ張り部屋から連れ出す
部屋を開けると扉の前には龍夜が立っていた
「あ、お兄ちゃ」
「ほらほら早く行くよ!!
龍夜!!私たちしばらく帰らないから!!」
「は!?お、おい!!待てよひな!智咲!」
全く状況が理解出来ていない龍夜を置いて二人は聡の所へ向かう
「しばらく帰らないって、何考えてんだ?あの二人」
「ひな!!待ってって!!ちょっと!!」
「なに?」
戸惑いながらも、ひなの奇行を止めようと掴まれている腕を引き剥がす
「ちゃんと説明して!!
それに、私は不合格だった!!
もう作戦には参加出来ないの!!」
珍しく怒りながら言う智咲にひなは笑ってみせる
「あかりさんの言葉思い出して智咲
まだ智咲は作戦に参加出来るんだよ!」
ひなにそう言われ、試験の時の記憶を思い出す
あかりに不合格と告げられ、ショックのあまりそこからの記憶は曖昧だが、それを繋ぎ合わせるように記憶を遡る
『不合格や
今の智咲ちゃんには作戦参加は認められへん』
『今の状態で作戦に参加することは認めらん
避難所で大人しくしとき』
その時、ある言葉に智咲は気づく
気づいた智咲に、ひなはとびきりの笑顔を向ける
「今の状態ではってこと...?」
「気づいた?
私は、その言葉はあかりさんなりのヒントだと思ったんだぁ
訓練所からいなくなる時も、龍夜とすれ違う時にに謝ってたし、あかりさんも智咲に強くなって欲しいから言ったんだと思うよ」
ひなの言っていることは正しかった
あかりは、智咲を戦力として見ていたが精神的に弱っている智咲を無理やり戦場に出すことは嫌だった
だから厳しく当たり、智咲に強くなって貰おうとしての行動だったのである
「作戦まで一ヶ月...
それまでに強くなって、また試験を受ければいいってこと?」
「そーゆーこと!!
まあ、憶測だけどね!」
でも、あかりさんならきっとそう考えてるよと続けるひな
智咲は俯き考えている
「私、強くなりたい」
「うん、知ってるよ」
「お願いひな。
私が強くなるための手伝いをして!」
「まっかせなさいっ!」
隠密のスキルを使い、二人の後を着いてきていた龍夜は、その光景を見て安心する
ひなのやろうとしている事の全部は把握出来ていないが、智咲のことを思ってひなが行動したのなら悪いことは起きないだろう
そう考え、龍夜はそのままその場を立ち去った
「じゃあ、聡のとこ行こ!
車出してもらわないと!」
「で、でも、いきなり行ってそんなこと言ったら断られるんじゃない?」
「あーー、それはなんとかしよっ!」
本当に無計画で行動していたひな
笑顔で智咲の手を引っ張るひなに、智咲も少しだけ笑顔を取り戻す
「ありがとう、ひな」
「いいってことよー!!」
二人はそう言葉を交わし、聡の所へ向かう
「はぁ?なんでだよ
危険に決まってんだろ、やめとけ」
聡の所へ着いた二人は事情を説明して、聡に同行して欲しいと頼むがしっかり断られていた
「そこをなんとか!!」
「なんとか!」
「はぁ、あのなぁ?
ただでさえあの町の近辺には門があるって話だったじゃねぇか
それに掃討作戦まで俺も訓練しなきゃならねぇ
悪いが、そこに時間をかける余裕がない
俺もまだまだ弱いからな
それに...」
聡は続きを話す前に智咲の目をじっと見つめる
「智咲、お前は本当にそうしたいのか?
お前らはまだガキだ
怖いなら怖いでいいんだよ。
無理に戦わなくたっていい
逃げたっていいんだ
本当に戦いたいと思ってるのか?」
聡はタバコの火を消し静かに智咲を見つめる
ひなに引っ張られて来たので、無理に頑張ろうとしてるんじゃないかと、智咲自身の意志を確認したいのだろう
「私は...正直今も怖いです
思い出しただけで手が震えます
でも、みんなはもう私の大事な家族
私もみんなと...家族と一緒に戦いたいんです」
そう言って目を逸らさず見つめる智咲
聡は少し黙り、ため息を吐く
「はぁーーーー、分かったよ
付き合ってやる
だが、本当に危険な時はすぐ帰るぞ
あと、なにわ連合からも護衛を頼もう
それなら行ってやる」
「ほ、ほんとですか!?」
「家族なんだろ?
家族の頼みなら断れねぇよ」
「さっすが聡さん!!
こーゆー時だけ役に立つ!」
「おい、やっぱりやめとくか?」
調子に乗ったひなを睨む聡は、再びタバコを吸いながら話す
「ったく、兄妹揃って面倒な奴らだ」
「え?お兄ちゃんがどうかしたんですか?」
「ついさっきお前らが来る前に来てなー
智咲とひなが来るから頼みを聞いてやってくれーってな」
龍夜は智咲とひなの話を聞いて、聡の所に先回りし頭を下げてお願いしていたのだ
それを聞いて智咲は嬉しそうに微笑む
「で、出発はどうする?
あかりには俺から話を通しておいてやる
龍夜にも一応報告するか?」
そう聞く聡に智咲は首を横に振る
「大丈夫です
お兄ちゃんに甘えているってさっきあかりさんに言われたばかりなので」
「いいの?」
「うん、そうしないと私は強くなれないから」
「そっか、わかった!!
じゃあ、予定は明後日の早朝に出発でいい?
聡さんはあかりさんからOK貰ったら、すぐ教えて!」
「了解」
出発の予定は簡単に決まった
明後日の出発のための準備を始めようと言うひな
聡は、今からあかりの所へ行くと言い、今日はその場で別れた
二日後、無事にあかりから護衛の承諾を得て、二人の護衛が着いてきてくれることになった
「護衛を頼んだのはこっちだが、まさかお前らが来るなんてな」
「頭取の命ですので」
「久しぶりに大阪から出られるわぁ!!楽しみやなぁ!!」
なんと、あかりが護衛に寄越したのは
渡辺冬弥と松原楓子の幹部二人だった
「幹部が二人も来て大丈夫なんですか?」
「今は暇やし、大丈夫大丈夫!」
「元々、あなた方の修行の手伝いを任される予定でしたので、何も問題はありません」
冬弥が言った言葉に、聡が食いつく
「俺たちの修行?」
聞いてないぞと続け、冬弥にどういうことかと聞く聡
智咲とひなも、聞いていないらしく疑問に思っている
「ええ、本当は今日の夜に皆さんに伝えるつもりだったみたいですが、今回のことで予定を変更したみたいです
私たちはあなた達の護衛をしながら修行を見る事になりました
他の方々は、残った幹部たちが本部で修行の手伝いをするということです」
「あんた達は素質はあるけど、まだまだ弱い!!
だから、掃討作戦までのこの一ヶ月みっちり修行してもらうで!!」
だから普通の護衛では無く幹部たちを寄越したのかと納得する聡
ひなは修行と聞いて少し項垂れていた
「私のために、皆さんありがとうございます」
智咲は頭を下げ、冬弥と楓子にお礼を言う
つられてひなと聡も頭を下げる
「気にしない気にしない!!
元はと言えば、アンタたちが私たちの作戦を手伝ってくれるんやから、こんぐらい大したことないで!」
「その通りです
頭取も智咲さんのことを気にしておられましたのでお易い御用ですよ」
冬弥の言った言葉に智咲が反応する
「あかりさんが?」
「うんうん!!
言いすぎてもーたわー!!嫌われてないやろかー!?って幹部室で叫んでたで!」
「楓子、それは言わないであげなさい」
予想通り、あかりは智咲に対して厳しく当たったことを後悔していた
それもあかりの優しさだったのだと改めて理解する
「強くなって帰ってちゃんとお礼言わねーとな」
「はい、しっかり乗り越えて強くなってみせます」
「よーし!!じゃあいざ出発ー!!」
ひなの掛け声と共に全員が車の中に乗り込む
智咲、ひな、聡、冬弥、楓子の五人は智咲たちの街へ車を走らせた
「(智咲がこの恐怖を乗り越えるために行かなきゃ行けないところがある
辛いかもしれないけど、負けないで。
私が智咲を支えるから...)」
走る車の中で、ひなはそんなことを考えていた
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