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異世界現実 isekai real  作者: クワエ
第2章:大阪掃討作戦編
26/36

Episode 25 第四試合 リーダー対決

 

 試験二日目、英美里、ひな、雅の試験が終わり、三人とも無事に合格を勝ち取る


「リーダー対決」


 次の組み合わせ、龍夜vsあかりの試合のことを考え、聡は視線をぶつけ合う二人を見ながら、タバコの煙を吐く


「ただそれだけで組まれた組み合わせとは思えねぇ

 こりゃ、まだ何かありそうだな」


 龍夜の心配をする聡を他所に、いよいよ第四試合が始まろうとしていた




「始める前に、ちょいと話をしよーや」


「なんだ?」


「龍夜にとって、仲間ってなんや?」


 試合が始まる前に、あかりから少し話をしようとの提案があった

 何の話をするのか聞いてみたところ、自分にとっての仲間とは何だと彼女は聞く


 大阪に来て、あかりに出会ってから、皆の上に立つリーダーの責任感と、その重さ、そして自分とあかりの格の違いをずっと感じていた

 そして、あかりは龍夜にそのことに気づいて欲しかった


「守り守られる存在だ」


「その意味はちゃんと理解したんか?」


「ああ、お陰様でな」


 あかりのおかげで仲間の大切さに改めて気づいた

 仲間を守って、自分も守ってもらう、その助け合いこそがなにわ連合をここまで強くしたのだ

 自分がみんなを守らなければと気負いすぎていた龍夜にとって、あかりたちとの出会いは、さらに強くなるために最高の出会いだったと言えるだろう


「言っとくけど、手は抜かへんで」


「逆にそっちの方がありがたいよ」


 お互いに見つめ合い、微笑む


「それでは、第四試合

 加藤龍夜vs橘あかり 試合開始!!」


 先程の試合と違い、開始の合図からすぐに動くわけではなく、両者とも相手の様子を伺っている

 龍夜は守りの体勢に入り、地面を変化させあかりと自分の間に壁を作る


「そうきたか、じゃあ先に私から行くで!!」


 あかりは紫色に輝く弓を顕現させる

 そして、魔力で矢を三本作り弓を引く

 その矢は壁に目掛けて飛んで行ったが、途中で方向を変え、壁の横側から龍夜に向かって飛んできた


「うお!!追尾機能付きかよ!」


「ハズレ!!追尾じゃなくて、私が動かしてるんや!!」


 あかりのスキル《弓神(ディアルコ)》は自分の魔力から弓を作り、魔力で作った矢は自分の思うままにコントロールできる

 そして《弓神》は、あかりの持つもう一つのスキルによってさらに強さを増す


「壁に隠れててもぜーんぶ見えてるで!!」


 スキル《神眼(オッジオディオ)》、あかりの二つ目のスキルである

 2km先まで視界に捉えられる、集中して見ると壁なども透視できるのだ


「くそっ!!これじゃあかりに攻撃なんか出来ないぞ!?」


 龍夜は、自身の目の前に作った壁を元の地面に戻す

 更に、地面を剣に変え矢を弾きながらあかりに向かって走る


「あぁ、それは悪手や」


 真正面から向かってくる龍夜に対して弓を構える

 一本の矢に魔力を集め、それを思い切り放つ

 あかりは矢の速さまでコントロールしていたので、放たれた矢の速さに対応できず、龍夜に直撃する


 かのように見えた


「やるやんか」


 あかりの攻撃で訓練所内に砂埃が舞う

 周りのみんなは、攻撃が直撃したと思い龍夜の心配をしている

 しかし、あかりには見えていた

 龍夜が咄嗟に剣を変化させ、矢を防いでいたのことが


「あっぶねぇ!」


「考えたなぁ!まさか剣まで変化させるとは思わなかったわ!」


 戦闘中だと言うのに、楽しそうに話す二人

 それを眺める智咲は疑問に思っていた

 それはずっと隣にいた智咲だからこそ気づいたことなのかもしれない


「お兄ちゃんのスキル、質量まで変化してる」


 そう、龍夜のスキル《変化(カンビアーレ)》は物体を変化させられても、その質量まで変えることは出来なかった

 しかし、柿澤との死闘で一時的にだが覚醒し、大技を使い膨大な魔力を消費したことで、龍夜のスキルは成長していた


「ゲームで言う熟練度ってとこだろうな」


 智咲の呟きを聞いていた聡も、龍夜のスキルの成長に気づいたようだ

 分かりやすい例えで説明をしてくれている


「じゃあ、私たちのスキルもこの先成長するかもしれないってこと?」


「そのようね、多分だけどなにわ連合の幹部の人達は、各々のスキルが進化して今のスキルになっているんじゃないかしら」


「ですよね、私と雅さんは《剣》と《槍》っていうシンプルな言葉なのに、あかりさんは《弓》では無く《弓神》ですもんね」


 自分たちはスキルのことや、この世界のことをまだまだ知らないのだと実感させられる

 あかりたちはどこまでこの世界のことを把握しているのだろうと智咲は考えていた


「お兄ちゃんもそのことに気づいてるのかな」


 智咲たちが話す間も、龍夜とあかりの戦闘は続いている

 あかりの休む暇を与えない攻撃に、龍夜は苦戦しているが成長したスキルを駆使し、ギリギリ攻撃を躱している


「逃げてばっかやな〜、そんなんじゃ合格あげられへんで!!」


「分かってる!!!」


 冗談交じりに龍夜に言ってみたが、あかりは内心驚いていた

 あかりの間髪入れない攻撃をここまで躱す人間はなにわ連合にはいなかった

 冬弥と大我ですら、一発も当たらずに避けることは不可能だ

 しかし、龍夜はそれをやってのけている


「いやぁ、ほんま舐めてたで

 まさかここまでとは思わんかったわ」


 自分の攻撃が避けられ続けたことで、あかりの負けず嫌いに火がつく

 魔力で矢を十本作り、一本一本に膨大な魔力を注ぐ


「龍夜ーーー!!!!」


「な、なんだ!?」


 攻撃をしてこようとしているあかりが突然呼んできたので驚きながらも反応する


「これ避けられたら、お嫁に行ったるわ!」


 とびきりの笑顔でそう言うあかり

 その笑顔に龍夜は少しドキッとするが、あかりの矢の先に込められたとてつもない量の魔力を見てすぐに切り替える


「《蝶神弓双(ちょうじんきゅうぞう)》!!!」


 その声とともに、膨大な魔力が乗った十本の矢が放たれる


「加減はしてるだろうが、あれを食らったらもう立てんだろうな」


「大丈夫、お兄ちゃんなら絶対なんとかします」


 紫色に綺麗に輝くその技を見て、聡と智咲が話す

 聡の言う通り、この攻撃を食らってしまったら最後、立ち上がることは出来ないだろう


「(出来るかは分からないが、あれをやるしかない)」


 龍夜は覚悟を決め、自分の記憶を思い出す

 柿澤と戦った時に使った技

 あの技さえ使えれば、きっと防ぎ切れる

 あの時の感覚、血の流れ、全てを取りこぼすことなく思い出す


「頼む!!!出ろ!!!


 《変幻(フィグラジオーネ)蓮万(フィオーレ)》!!!!」


 前に出した龍夜の右手に手のひらの大きさくらいの蕾が現れる

 蕾から放たれた光があかりの矢にぶつかり、大きな爆発を起こす


 今までの比にならないくらいの砂埃と暴風が巻き起こり、観戦していたもの達にまで衝撃が及ぶ

 さすがのあかりも、この強烈な砂埃の中では目を開けることは出来ず、龍夜の姿を確認できない


 数十秒経ち砂埃が晴れていく

 あかりが目を凝らすとそこには、多少砂で汚れてはいるが無傷で立っている龍夜がいた


「ホンマに...防ぎよった」


 あかりが龍夜を確認し驚いていると、立っていた龍夜がそのまま地面へと倒れていく


「やば!!」


 あかりは慌てて駆け寄り、倒れる龍夜を受け止める

 龍夜は魔力の使いすぎで疲れ果てて寝てしまっていた


「ホンマになんやねん、君は...


 合格やで、ゆっくり休みぃ」


 寝ている龍夜の顔を見ながら呟くあかり

 見事合格と告げられるが、龍夜は寝ていて知る由もない


「お兄ちゃん!!」


「おい!大丈夫か!?」


 智咲と聡を先頭に、雅、ひな、英美里と続き、龍夜の仲間全員が駆け寄ってくる

 その光景にあかりの心は暖かくなった


「愛されてんなぁ

 龍夜も立派なリーダーやで、自信持ちぃな」


 辛いことや苦しいことの方が多くなってしまったこの世界で、こんなにも暖かい仲間たちと出会うことはそう無いだろう

 あかりは、そんな龍夜たちに出会えて、一緒に戦えることが嬉しいと心底思った


「(この人たちとならきっと上手くいくはずや)」


「あかり、そろそろ離れてもいいんじゃないかしら」


 ずっと龍夜を抱いていたあかりに雅が言う


「あ、あぁ!!すまんすまん!!

 雅たんそんな怒らんでやー!」


「お、怒ってはいないわよ!」


「お兄ちゃんは私が預かります」


 そう言って、あかりと場所を交代する智咲

 龍夜の頭を撫でながら心配そうに見ている


「魔力欠乏症のことなら大丈夫やで!

 この感じだと、普通に疲れて寝てるだけや」


 智咲の心配を感じ取ったあかりは、すぐに智咲に教える

 それを聞き、智咲は安心し今度はニコニコしながら頭を撫でている


「あっ、それはそうと合格や!

 龍夜が起きたら伝えておいてー!」


 それだけ言い残し、あかりは観戦していた場所に戻っていく

 それから、聡に龍夜を浮かせてもらい智咲たちも自身の場所に戻る




「あかり!!嫁になんて行くんじゃねぇ!!」


 幹部たちの所へと戻ったあかりは、大我に捕まっていた


「あ、あれは盛り上がって言っちゃったことで、本気やないし龍夜も覚えてへんやろ!

 ...たぶん」


「うわぁぁぁ!!!

 ダメや!!絶対ダメや!!

 てか、今すぐ俺が貰ったる!!」


「なんで私が大我の嫁にならんとあかんねん

 それだけは勘弁や」


 あかりのその言葉に、ガーンと音が聞こえそうなくらい落ち込む大我

 渚と楓子はそれを見て笑っている


「頭取、彼はまだ覚醒してはいないんですよね?」


 他の幹部たちが賑やかな中、冬弥だけが真剣な顔付きであかりに問う


「あぁ、そのはずや。

 それであの力はバケモンやろ

 しかも、最後の技はまだ未完成っぽかったわ」


「驚きですね、頭取の技を相殺した技がまだ未完とは...それにあのスキル...


 彼は、あの東京NO.1ギルド《砂漠の銀(サルビアアルジェント)》のリーダー獅子山渡をも超える存在になるかもですね」


「ははは!!それはこれからが楽しみやな!!


(ホンマに期待してるで、龍夜)」




 龍夜を運び終えた聡は考えていた


「(今の龍夜の試合、あかりは龍夜のスキルを存分に発揮できるような立ち回りをしていた

 意図的か?それとも偶然か?


 この試合が始まる前の違和感、そしてあかりの立ち回り、あかりは龍夜のスキルの成長に気づいてわざとこの組み合わせにしたのか?


 しかし、龍夜のスキルを見るのは今日が初見のはずだが...


 橘あかり、さすがに巨大ギルドをまとめるだけのことはあるってことか、侮れねぇな)」


 そう考え込みながら、タバコに火をつける聡


「そういえば聡さん、めっちゃタバコ吸ってますけど、このビル内全域が禁煙らしいですよ」


「え?まじかよ」




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