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転生したゲーマーのおっさん、周りを全員NPCと勘違いした結果〜男女比1:200の世界で気づけば外堀を完璧に埋められていた件~  作者: ヨシト


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5話 男女比①

ここで、ユピテがすっかり忘れている、このマナ・クロニクルという世界における、あまりにも歪な前提条件について説明せねばなるまい。


本作の基本設定、それは――男女比が1:200という、人口バランスが目も当てられない程に偏った世界だった。


この極端な男女比をもたらした原因は、この世界の基盤である、近代魔導汚染(魔導粒子)にあった。


かつて魔導技術とは、おとぎ話に出てくるようなごく一部の魔法使いだけが扱う神秘の技術に過ぎなかった。

しかしある時を境に、その絶大な有用性と技術の全貌が白日の下にさらされると、世界の在り方は一変した。


さらに蒸気機関の発明により、魔導技術は凄まじい速度で急速に発展してゆく。

蒸気機関と魔導技術を掛け合わせた【魔導蒸気機関《マナ・スチームエンジン》】の誕生だ。


重厚な真鍮と歯車が奏でる重工業の発展は、世界中に張り巡らされた巨大な鉄道網や巨大空挺船、さらには日常生活のあらゆる魔導製品に至るまで、人類に空前の利便性をもたらした。

そして同時に、その技術は過酷な列強同士の戦争用兵器開発へと利用されていくこととなる。


だが、その輝かしい近代化の代償はあまりにも大きかった。

黒煙と共に街や戦場へと吐き出される、魔導蒸気から散布される濃密な魔導粒子。

この粒子は、なぜか男性のY染色体にのみ特異的かつ壊滅的な悪影響を与えていたのだった。


魔導技術が一気に発展し始めたその黎明期から、世界の男児の出生率は少しずつ、だが確実に減少し始めていた。


そして人口爆発などの時代を迎え、吐き出される魔導粒子の増大に比例するように、男性の数は加速度的に減少の一途をたどった。


そうして減り続けた結果が、現在の1:200という絶滅へのカウントダウン状態だった。


ならば、今すぐ魔導技術の開発や使用をすべて止めればいい話なのだが、現実はそう単純ではなかった。


産業革命を経た社会において、いまさら蒸気と魔導を手放せば、国家の経済もインフラも一瞬で崩壊する。

それどころか、自国が先に技術を放棄すれば、他国の魔導兵装に対抗できず、即座に攻め滅ぼされるという絶対的な脅威が存在するのだ。

そのため、どの国も最初に軍拡を止めるという選択ができなかった。


社会の利便性と国の安全を維持するためには、黒煙と魔導粒子を吐き出しながら巨大な歯車を回し続けるしかない。

しかし、使えば使うほど男性が減り、滅びへと突き進んでいく。

世界全体が、そんな最悪の囚人のジレンマに陥っていたのだった。


結果として、政治・軍事・警察などの過酷な荒事は100%女性が担うこととなり、社会全体が貴重な男性を命がけで保護し、扶養する構造が出来上がっていた。

当然、重婚も国家レベルで義務化されていたのだった。


◇


だが、ゲームクリエイターのインタビューや暴露本を読んだプレイヤーからすれば、そんな重厚なディストピア設定は、ただの後付けのフレーバーに過ぎなかった。


開発陣の本当の本音は、実に露骨で邪悪な集金システムに集約されていたからだ。


『男キャラのガチャって、ぶっちゃけユーザーの皆さんが、あまり回してくれないんですよ。だからいっそのこと、画面に出てくるキャラが全員女の、圧倒的な男飢えの世界にしました!!』


公式生放送でプロデューサーは満面の笑みでそう語っていた。


『だから、最終的に一人のヒロインに絞る必要なんてないです。だって男が極端に少ないんですから。女の子側も、一人の男の子と複数の女の子が同時に付き合うとか、そういうの全然平気な世界観なんです。

だから、ガチャいっぱい回して何人でも嫁にしてくださいね(笑)』


そんな運営全肯定のハーレム推奨スタイルが、ゲームの世界に非常に酷似したこの世界の根底にある絶対の真理だった。


19世紀末の地球のような蒸気機関主体の世界観でありながら、人工授精の技術だけが異常に発達しているのも、すべてはその都合主義の賜物だった。

男性が国家の精子バンクに提供した遺伝子を用いることで、現代の地球と同じ水準で妊娠出産ができる仕組みが確立されていた。


そのため、男性が極端に少なくても、人類の滅亡という最悪の事態は免れていたのだった。


◇


そして、この男女比1:200の生存競争を生き抜くため、女性たちの進化のベクトルは恐ろしい方向へと突き抜けていた。


人工授精の技術が確立されるまで、男に選ばれなければ子孫を残せないという状況下で、女性たちは男を獲得するための生存競争を極限まで進化させ、全員が例外なくモデル級の美貌を備えるに至った。


グラマラスで肉感的な身体を持つ者から、守ってあげたくなるようなスレンダーなタイプまで多種多様ではあったが、共通しているのは、肌がきめ細やかで美しく、常に男を誘惑する準備ができているということだった。


ましてや、長い歴史の中で特に優れた遺伝子を取り込み続けてきた貴族ともなれば、その美の結晶ぶりは他の追随を許さなかった。


ユピテの母親であるステラ、姉のルナ、妹のフィアの三人は、いずれもゲーム本編のメインヒロインたちと並べても遜色のない、息を呑むような超絶美女・美少女だった。

屋敷で働くメイドたちもまた、全員が生存競争を生き残ってきた美貌を備えていた。


さて、ここまでは女性の話ばかりしてきたが。

では、ここまで減少した肝心の男性側の現状はどうなのかといえば――これが実に無惨極まりない状況だった。


男は存在するだけで莫大な国益を生む国家資源として扱われる。

そのため、基本的には戦場はおろか、少しでも危険のある場所へは絶対に立ち入らせてもらえない。

幼少期から外界より隔離され、蝶よ花よと過保護に育てられるのだった。


その結果、誕生するのは、過食と運動不足によって極限まで膨れ上がった、醜悪な肥満体。

すべての我儘が全肯定されて育つための、傲慢な性格。

そして自身の外見にほとんど気を遣わない、不潔でだらしがない者ばかりという目も当てられない状況だった。


あるいは、その真逆に位置する男たちもいた。血走った瞳で自分を隙あらば襲おうと狙ってくる肉食獣のような美女・美少女たちに恐怖し、精神を病んで部屋に引きこもるタイプのデブたちである。


実際、この世界では、夜道で美少女や美女の集団に男性が拉致され、そのまま子種を搾り取られたという、凶悪(?)な襲撃事例が後を絶たなかったのだ。

カクヨムで先行投稿しています。


https://kakuyomu.jp/works/2912051601164089962

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