第10話 紡がれし魂の縁
太陽が西の地平線に傾き、空が赤銅色に染まり始める昼過ぎ。
五人は無事に『フェル・フヴィーラの草原の休憩所』と呼ばれる、小高い丘の開けた野営地へと辿り着いていた。
風を遮るように点在する巨岩の影、少し離れた場所には、巨大な荷馬車を円形に配置して陣を敷く商隊の一団がすでに野営の準備を整えていた。
彼らもまた、こちらの一行を一瞥すると、警戒を露わにするように焚き火の周りに鈍く光る傭兵たちの武器を並べて見せた。
この魔物と盗賊が跋扈する街道の夜において、見知らぬ他者は無条件で警戒すべき対象である。
交代で見張りを立て、互いの不可侵を示すのは、荒野を往く旅人たちの絶対的な常識であった。
パチッ、と乾いた薪が爆ぜる音が鳴る。
一行が囲む焚き火の傍らで、エリカが地面に小枝で滑らかに数字を書き込んでいた。
「いい?バハル。今日仕留めたヴィルヘルの毛皮や角の素材は、ギルドで換金すればシェル(銀貨)七十二枚になります。そこから私たちの共通の路銀を引き、五人で公平に分けると……さあ、一人何枚になりますか?」
教師としての凛とした声が響く。
バハルは巨躯を小さく丸め、太い指を折り曲げながら唸り声を上げていた。
「ええい……七十二を、五で……。エリカ、無茶言うな!俺の指は全部で十本しかねぇんだぞ!足の指まで使わせる気か?」
顔を真っ赤にして頭を抱える龍人の姿に、剣の手入れをしていたディオンと、薬草を仕分けしていたライナスは思わず顔を見合わせ、微かな笑みを漏らした。
「バハル……」
ディオンは笑いを堪えられない。
「バハル、計算ができないと悪徳商人に足元を見られてしまうわよ。商人たちは、この程度の計算なら頭の中で瞬時にこなして、しれっと嘘をつくのですから」
エリカの知的な、しかし容赦のない指導に、バハルは「ひえぇ……」と情けない声を上げる。
「エリカ、バハルの分の計算は僕がやるよ。あんまりいじめないでやってくれ」
ディオンが苦笑しながら助け舟を出すと、バハルは「おおっ、友よ!」と大げさに感謝の視線を向けた。
算術の難問によって重くなりかけた空気を、アルベローゼが鮮やかに塗り替えた。
彼女は風のような身のこなしで音もなくディオンの背後に忍び寄ると、その無防備な首筋に、冷たい『何か』をピタリと押し付けた。
「ひゃっ!?……つめっ!アルベローゼ、なんだよこれ」
ディオンが奇声を上げて飛び退くと、エルフの少女はお腹を抱えて笑い転げた。
「あははは!ディオン、今のすっごくいい声!ほら、これ。この草原の夜にしか咲かないアイス・リリィ(氷露魔草)だよ。夜の冷気を吸って、凍るくらい冷たくなるお花なの……苦いけど魔力も回復できるんだよ」
淡く青い光を放つ美しい花をひらひらと揺らし、彼女は「えいっ」とバハルの胸甲の中にもそれを放り投げた。
「うおっ、冷てぇ!」と転がって騒ぐバハルを見て、彼女はさらにケラケラと笑う。
「あんたたちさ、呪いだの元凶だのって……もう、そういう暗い顔は今日でおしまい!私、そんな暗い話を聞きに旅に出たんじゃないよ。せっかくの初めての野営なんだから、今は美味しい干し肉と、このバカなバハルの顔を楽しめばいいじゃない」
アルベローゼは、ディオンとエリカの体内に巣食う「悪霊」の宿命を知っている。
いつ暴走するかもわからない爆弾を抱えていることも……だが、だからこそ彼女は、彼らが「明日への恐怖」に囚われるのではなく、「今この時」を笑って過ごしてほしいと強く願っていたのだ。
彼女の底抜けの明るさに救われ、一行の間に温かい笑い声が広がっていく。
やがて笑い声が落ち着くと、エリカはスッと表情を引き締め、全員の顔を見た。
「……さて、今日はここまでよ。アルベローゼの言う通り、今はしっかり休みましょう。だけど、ここは野良のヴィルヘルが出る可能性も高いし、少し離れたあの一団への警戒も解けない。……最初の見張りは……」
「僕が立つよ」とディオン。
「ディオンのペアは私だよ!」
アルベローゼが即座に自慢の白樺の弓を掲げて立候補する。
「そうね、後衛と前衛が組むのが戦術的な理想だわ。なら、私は二番手をやるわ」
エリカが枝を置き、魔導杖を引き寄せた。
「私も二番手を引き受けよう。ディオン、君は明日の過酷な山越えのために、早めに体力を温存してくれ」
ライナスが静かに司祭の杖を手に取る。
その言葉に、エリカがハッとして目を白黒させた。
「ええ!?……後衛と、前衛が組むのが基本だから、ライナスは……その、バハルと組むべきじゃ……」
しどろもどろになるエリカを見て、ライナスは眼鏡の奥でクックと悪戯っぽく笑った。
「三番手はバハルしかいませんよ。万が一不意打ちを受けても、絶対に一撃では倒れない彼しか、一人での見張りは任せられませんからね」
「おう!任せとけ、俺が夜明けまでバッチリ守ってやるぜ!」
頼もしく胸を叩く龍人を前に、エリカは僅かに頬を赤らめながら黙り込むしかなかった。
静まり返った草原の夜。
遠くで飢えた魔物の遠吠えが風に乗って響き、パチパチと爆ぜる焚き火の明かりだけが、漆黒の海に浮かぶ小さな島のように彼らを照らし出していた。
最初の寝番――ディオンとアルベローゼの番である。
群青の浸食(十九時)から意識の揺らぎ(二十二時)までの三時間。
二人は身を寄せ合うようにして焚き火を見つめていた。
高原の夜風が冷え込んできたのか、アルベローゼはディオンの腕にピッタリとくっつき、その温もりを確かめるように目を伏せている。
「ねぇ、ディオン……。私のお父さんのこと……覚えてる?」
「ヴォルフ様だろ?忘れるはずがないさ……村で一番優しくて、物知りなエルフだった」
ディオンの穏やかな声に、アルベローゼは小さく息を吐き、炎の揺らめきの中に愛する父の記憶を思い描いた。
アルベローゼは幼い頃から……いやずっと父に懐いていた――――物知りで大好きなお父さん。
――サクッ、サクッ。
鋭利な小刀が木を削る規則正しい音が、深い緑の静寂に溶けていく。
幼い私は、小さな手で不器用に白樺の端材を削っていた。
『アル。削るばかりが、エルフの業ではないよ』
マリス母さんはいつもニコニコしている人だった。
傍らで古びた羊皮紙を広げていた父が、穏やかな声で言った。
父ヴォルフは、アイナル村を守る屈強な魔導剣士であったが、もう一つの顔を持っていた。
今は伝承すら途絶えつつある古代エルフ言語魔法を紐解く研究者としての顔だ。
『この魔導文字も、お前が作っているその木玉と同じだ。形の中に流れる意味を読み解き、精霊の波紋を捉えるんだ』
『わたし、こどもだもん……出来ないよ……』
『そんな事はない……アルは才能があるんだ……そう……そうやって……上手だ……』
白樺を削る作業の合間に、優しく叩き込まれる難解な古代文字。
それは、父の隣で筆跡をなぞる、何よりも温かな「継承」の儀式だった。
『……できた。お父さん、誕生日おめでとう!』
削り出した不格好な木玉を連ねた首飾りを、背伸びをして父の首にかける。
父は分厚い研究用の眼鏡を外すと、私を軽々と抱き上げた。
『最高のお守りだ。これがあれば、私は世界で一番無敵なエルフになれるな』
父の広い胸から伝わる、トクン、トクンという確かな鼓動……白樺の爽やかな匂い。
この温もりが、エルフの二百年という長い一生の間、永遠に続くものだと信じて疑わなかった。
……だが。
エルフという種族は、人間よりも遥かに多くの「気配」を拾い上げてしまう。
だからこそ、父はあの日、森の奥深くから発せられた絶望の予兆を、誰よりも痛烈に感じ取っていたはずなのだ。
あの日――アイナル村に隣接するエルフの森の鳥たちが、一斉に声を潜めた。
『封印が消える!急がねば』
結界を修復すべく家を飛び出した父は、しばらくして、全身を朱に染めた傷だらけの姿で戻ってきた。
その背後の森からは、木々をへし折りながら、闇を練り固めたようなヴィルヘルの奔流が濁流のごとく迫っていた。
『逃げろ!アル、お母さんを連れて中へ!!』
森はすでに凄惨な地獄と化していた。
次々と同胞の戦士たちが悲鳴を上げて連れ去られ、食い殺されていく。
叫ぶ父の首元で、血に濡れた白樺の首飾りが激しく揺れていた。
父は、背後に迫る圧倒的な数の絶望から愛する家族を護るべく、たった一人で闇の中へと飛び込んでいった。
『お父さん!!』
駆け寄ろうとする私を制するように、父が最後に振り返って微笑んだ。
それが、父を見た最後だった。
その後、ディオンの父であり、アイナル村最強の戦士であったガリアス様が無数の傷を負いながらようやく駆けつけてくれた。
『ヴォルーーフ!!』
ガリアス様が絶叫する中、無数の魔物の影が父の身体に食らいついていた。
抗えぬ闇の奔流が、父の巨躯を森の深淵へと強引に引きずり込んでいく。
ガリアス様は私と母の前に立ちはだかり、真っ赤な飛沫を上げてヴィルヘルを斬り続けた。
(そんな事しなくていいから、お願い、お父さんを早く助けて!)
声は出なかった……喉が引きつり、ただ見ていることしかできなかった。
父の姿は、私が贈ったあの白樺の首飾りをつけたまま、闇の奥底へと吸い込まれ、完全に消滅した。
父の葬儀を終えた夜。
村の守護職であるガリアス様が、一人で私を訪ねてきた。
父の無二の親友であった、あの屈強な男。
「彼はお父さんが封印を補強しに向かった時、遅れて到着したのだ……だからお父さんは死んだ」
巨大な剣を振るうその逞しい戦士が、私の前で崩れ落ちるように膝をつき、絞り出すような声で泣き崩れた。
『すまない、マリス……アルベローゼ。……私は、あいつの腕を、…………すまない』
ガリアス様の拳が、自らの膝の上の土を掴んで白くなっていた。
『闇に呑み込まれるあいつを、私は……だが、ヴィルヘルの勢いに抗いきれず、私は……手の届く、目の前にいたのに、……あいつを救えなかったんだ!!』
嗚咽混じりのその言葉に、私は息を呑んだ。
父はただ「いなくなった」のではない……救えるはずの距離にいた父の手を、友の目前で闇に引きちぎられ、消えていったという、あまりにも残酷な真実。
『顔を上げてください、ガリアス様』
私は震える指で、ガリアス様の大きな肩に触れた。
『お父さんはきっと、最後は一人じゃないって思えたはずだから。……お父さんが命を懸けて守ったこの命で、今度は私が、みんなを支える番です』
だが、それは物分かりの良い「娘」という建前に過ぎなかった。
本当は、ガリアス様を責める気持ちが、泥のように心の底に沈殿していたのだ。
(こいつの到着が遅れたせいで、お父さんが死んだ!違う……違う!……違………う…憎い……違う……憎い……)
どんなに頭から振り払おうとしても、大好きな親友であるディオンのお父さんを恨んでしまう、醜い自分が嫌いでたまらなかった。
このままでは、私は恨みで真っ黒になってしまう。
そのドロドロとした感情を誰かに悟られたくなかった。
だから私は、特別明るい娘になることを選んだ…………頭の中にベッタリと血糊のようにこびりついた恨みを、誰の目にも触れさせないために。
一方、母は完全に闇に呑まれた。
食事もまともに取らなくなり、空ろな目で、見えない父と虚空に向かって会話をする日々が続いた。
母は父という男を愛しすぎた……彼がいなければ生きられない人だったのだ。
そして程なくして、悲しみの中で衰弱し、母はこの世を去った。
……人間たちの時間は、エルフの半分にも満たない。
だからこそ、彼らが放つ生命の輝きは眩いほどに強烈で、一瞬で消えてしまうほどに愛おしい。
父を救えなかったガリアス様の悔恨を、そして今もディオンやエリカを内側から蝕む「悪霊」の闇を、私はエルフとしての長い一生を懸けてでも、絶対に断ち切ると決めたのだ。
「――と言うことよ。どう?腹の中で親友のお父さんを恨んでたような嫌な女だって、幻滅した?嫌いになった?ディオン……」
アルベローゼの震える小さな肩を、ディオンは無言で引き寄せ、強く抱きしめた。
「……そんなわけないだろ。ちゃんと分かってる。僕は分かってるさアルベローゼ……アル……ありがとう。ずっと一人で、そんな重いものを背負って笑ってくれてたんだな……僕が一緒にいるから……ずっとだ……。君は……アルの本当の心は僕は分かっているから」
「うん……っ」
アルベローゼはディオンの胸甲に頭を預けた。
二人の間には、もはやそれ以上の言葉は必要なかった。
焚き火の温もりが、彼女の心にこびりついていた冷たい血糊を、少しずつ溶かしていくようであった。
意識の揺らぎ(二十二時)。
交代の時間となり、仮眠を取っていたライナスとエリカがテントから出てきた。
「代わりましょう。……周囲に変わりはないですね?」
ライナスが静かに尋ねると、ディオンは頷いて毛布に包まった。
ディオンが目を瞑ると、その背中にすぐさまアルベローゼがピッタリと張り付いてくる。
「……ふん、夜風が寒いのよ……」
照れ隠しのようなアルベローゼの小声が聞こえ、ディオンは毛布の中で微かに笑みをこぼした。
静寂が戻った焚き火の前。
パチッ、と火の粉が舞い上がる。
「ライナス……」
「エリカ。……分かっていますよ。何か私に言いたいのでしょう?」
炎越しに見つめるライナスの眼差しは、すべてを見透かしているように穏やかだった。
「ううん……言いたいのではなくて……ちょっとだけ、私の話を聞いて欲しいの」
エリカ・ヴァイン――――呪われた女……元魔導師団特務中隊長……それが私。
かつて、ガリアスの強い推薦と期待を一身に背負い、王立魔導学園にわずか九歳で首席入学を果たした。
学園では潜在魔力の高さから「アイナルの至宝」と謳われ、十五歳で飛び級卒業の資格を得たものの、自らの意思で懇願して十八歳まで学園に留まった。
卒業後は、最高峰のエリートが集う『女王直轄魔導師団』に入隊。
類まれなる才能で瞬く間に特務魔導中隊長という地位を掴み取った。
だが、どれほど華やかな光の中にいても、彼女の魂は常に冷たい恐怖に縛られていた。
通常魔法を行使するたびに、内なる悪霊がもたらす「殺意」の純度が増していくのだ。
師団で華々しい戦果を上げるほどに、彼女の精神は無辜の民を切り刻む血なまぐさい幻想に汚染され、自分という人間の輪郭が、いつか『怪物』へと書き換えられてしまう恐怖に苛まれ続けた。
ふとした瞬間に去来する殺意。
それは恐ろしい妄想を見せた。
信頼する仲間を、尊敬する上官を、守るべき部下たちを惨殺し、その血だまりの中で恍惚とした愉悦に浸る自分自身の姿。
殺戮は……愛する者の喉笛を噛み切るのは極上の快楽に思えた。
魔法学園の授業が本格化した十四歳の頃から、その症状は急激に悪化していった。
結局、彼女は築き上げたすべての地位を捨て、逃げるように故郷へと戻ってきたのだ。
『……ごめんなさい、ガリアス様。……セレスティナ様。……イゾルデ先生……』
鏡に映る自身の緑の瞳の奥に、時折、自分のものではない不気味な赤い燐光が宿るのを、彼女は何度も見てきた。
セレスティナ……イゾルデ……ガリアス。
三人の恩人が、その命を懸けて鎮めたはずの闇。
ディオンが一人で村を出ることを決意した時、エリカの中の悪霊は、かつてないほど激しく飢え、狂ったように暴れ始めていた……限界を迎えそうになっていたのだ。
『エリカ先生、ディオンがね、旅に出るんだってさ』
『聖図書館で、呪いを解く勉強したいんだって』
村の子ども達の間ですら広まっていた無謀な噂。
それを聞いた時、エリカは絶望の中で微かに苦笑した。
(ディオン、あなたの計画ってどれだけザルなのかしら)
彼女は村長に教職を辞することと後任を頼み込み、両親を説得してディオンの旅に同行する決意を固めたのだ。
両親は快諾してくれた。
「……ライナス。ただ、ちょっと聞いて欲しかったの。私がどれだけ、自分の内側にあるこの感情を恐れているか……」
エリカの震える肩を、ライナスは静かに見つめた。
「エリカ……。貴女の中にいる悪霊の欠片は、ディオンの比ではないはずだ。今まで一人でよく耐えてこられましたね。……辛い時は、すぐに言ってください。私の神聖魔法の《メンゾ・コンティ・ハーティア》なら、いつでも貴女を癒やすことができますから」
「……今、お願いしてもいいかしら?」
「もちろんです」
ライナスが司祭の杖を掲げ、静かに詠唱を紡ぐ。
「《メンゾ・コンティ・ハーティア(精神・干渉・安定)》」
第三位階・神聖魔法――――杖の先端から、ひだまりのような淡く温かい黄金色の光の波紋が広がり、エリカの全身を優しく包み込んだ。
その瞬間、エリカの精神の奥底で泥のように燻っていた黒い殺意と自己嫌悪が、陽の光に溶ける雪のように浄化されていく。
「ああ……ライナス……。とても……心が、楽になるの……」
エリカの目から、安堵の涙が一筋こぼれ落ちた。
「エリカ……明日からも、毎日かけましょう。貴女が少しでも安らげるように」
「うん……お願いね、ライナス」
二人の間には、焚き火の熱とは違う、確かな温もりが通い合っていた。
深淵の胎動(一時)。
夜が最も深い時間帯。
交代のためにエリカがバハルの肩を揺すると、巨躯の戦士は「んんっ……」と身じろぎをしてムクっと起き上がった。
バハルが大楯を傍らに置き、一人で焚き火の火力を調整していると、テントから毛布を羽織ったディオンが静かに歩み寄ってきた。
「おい、寝ろよ。ここから朝までは俺の番だぜ?」
バハルが太い薪をくべながら言うと、ディオンは苦笑してその隣に腰を下ろした。
「どうにも寝付けなくてね……。別に隣にいてもいいだろ?バハル」
「がはは、勝手にしろ。ただし、居眠りして火に飛び込むなよ」
パチ、と再び薪が爆ぜる。
過酷な宿命を背負う者、それを命懸けで支える者たち。
それぞれの思いが交錯した夜の闇が、やがて白み始める。
地平線の彼方から、フェル・フヴィーラの大草原を黄金色に染め上げる、新しい旅の朝陽が静かに昇り始めていた。




