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蹴り飛ばせ! 恋するカエル姫は愛しの王子様の元へと蹴り進む!!  作者: 功野 涼し


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晩餐会のあとで

 字と仕事を覚えながら日々過ごしていたアメはある夜、晩餐会が終わったあとの片づけをしていた。

 アメとシェール、他数人のメイドで皿をキッチンへ運んだりテーブルクロスを畳んだりとバタバタとしいてた。バルコニーをモップで掃除していたアメはふと気になって遠くを見ると、反対側の建物に人影があることに気づいた。


 気づいたからバルコニーの手摺に飛び乗って大きく跳ねると、建物の凹凸を蹴って壁伝いに人影の元へと行く。


「何をやってるんだ?」


「うわあっ⁉」


 最後に大きく跳ねて人影が両手を置いて寄りかかるバルコニーの手摺に着地したアメは、モップを肩に担いで尋ねるとその人は驚いて声をあげてしまう。


「メ、メイド⁉ ど、どこから入ってきたんだ!」


 驚いた表情でジャンティ王子の視線にアメは大事なことに気がつく。


「こんばんは」


 人同士はもちろん、メイドは特に挨拶が大事なのだとメイド長が言っていたのを思い出して、挨拶がまだだったのでぺこりと頭を下げる。ジャンティ王子も落ち着きアメをじっと見て思い出したのか大きく目を見開く。


「アメか!? きみこそここで何をしているんだい? いやそれよりもそこに立っていたら危ないから降りるんだ」


「アメはあっちで掃除してた。王子の姿が見えたから来た」


 手摺から飛び降りたアメが指さした方をジャンティ王子が目を凝らして見る。


「あっちって、さきほど晩餐会があったホール……まさかあそこから来たってのかい?」


「そう。ぴょんと飛んできた」


「にわかには信じられないな。森で助けたときは立つのもやっとだったきみがここまで飛んでくるなんて……いやそもそもそんなことは普通はできないよ」


「助けてくれたおかげで強く育った」


「あはははっ、きみは面白い子だね」


 突然笑いだしたジャンティ王子は目に溜まった涙をぬぐってアメを見てくる。


「まさか星を見ようと空を見上げてたらアメが降ってくるなんて思わなかったよ」


 「星?」


 ふっと優しく微笑むジャンティ王子の言葉に、アメが空を見上げると夜空に光る星が数個見えた。


 「ここは星が少ない。森にはもっとたくさんあった」


 「城の明かりがあるから見えにくいんだよ。アメが住んでいた場所は星が綺麗だったのかい?」


 アメは森に住んでいたときのことを思い出す。


 大きな草木に囲まれ、足元には水が流れ手足を濡らしてくれる。上には木々の隙間から見える果てしない空が広がり太陽や雲に雨、そして月と星。どれも巨大だけどもいつもあった存在。


 「全部綺麗だった」


 「全部? そう言えば住んでいた場所の記憶があるのかい? なるほどそうか、素敵なところに住んでいたんだね。行ってみたいものだ」


 「行ってみたい?」


 「そうだね。時々この狭い城から出てアメが言っているような場所に行ってみたいと思うときがあるんだ……ああいやすまない。今のは忘れてくれ」


 「ここが狭い?」


 アメは周囲を見渡して城が大きなことを再認識して王子を見る。


 「たしかに城自体は大きいけど狭くもあるんだ」


 遠い目をする王子の言葉の意味が分からないアメは周囲を見渡して首をかしげる。そんなアメを見てジャンティ王子は可笑しそうに笑みを浮かべる。


「意外に息苦しいものなんだよ。広いように見えて行ける場所なんて少ないし見えない壁ってものもあってね……あぁいや悪かった。どうやら疲れているようだ」


 寂し気に笑って下を向くジャンティ王子に近づいたアメは王子の頭を撫でる。力加減が曖昧で頭が揺れ髪は乱れるが、そんなことよりも自分の頭を撫でるアメに目を真ん丸にした驚くジャンティ王子に対して、アメは笑顔で応える。


「疲れてるなら早く寝た方がいい」


「あ、ああ……そうだね」


 ふっと笑ったジャンティ王子の頭をポンポンと軽くたたいたアメはバルコニーの手摺に飛び乗る。


「アメは仕事に戻らないといけない」


「そ、そうなのかもしれないがそこからどうする気だい?」


「跳んで帰る。あ、そうだ!」


 モップを肩に担いだアメはここに来た大きな目的を思い出す。


「ときどき餌くれてありがと。それとこの前、撫でてくれて嬉しかった」


 カエルだったころのお礼が言えてひとまず満足したアメは手摺から大きく跳ねて壁に片足をつけると同時に蹴って飛び跳ねると、反対の足が壁について瞬間に蹴って進む。


 胸がドキドキするのも伝えようかなと思ったけど、また今度でいいやと、今日は話せて満足したアメは仕事へと帰える。


 ━━帰った先にはシェールが待っててめちゃくちゃ怒られた。


「いやちょっと待ってくれ。アメ姉は一国の王子の頭を撫でたのか?」


「すごい?」


 驚きと呆れの混ざった表情のリネロに対して満面の笑みでアメがピースをして応える。


「いや、すごいっていうか。お偉いさんの、いや一国の王子の頭に触るとかやべえだろ普通……ってかさ、この話って追放されたときのことじゃなかったのか? 追放されてないだろ?」


「ははぁ~ん、リネロはアメがキスしたことが気になるわけだ。聞きたいんだぁ~」


「ちげーって! ただ聞いていた話と違うから気になっただけだって」


 ニマニマ笑うシェールにリネロがふてくされ気味に答えながら顔を逸らす。

 そんな二人のやり取りを見て優しい笑みを浮かべた大きな体の男が磨いていた鎧を大切そうに台に置く。


「アメ……さま」


 喉を押さえ、カスれた声で自分の名を呼んだ男にアメが視線を向ける。


 「城から出た……こと。王子を……助けたい……気持ち。知りたい」


 男の喉元には大きな傷があり、そのせいで声を出しづらいのか喉を押さえ詰まりながらも言葉を発する。


 「もがっもががあ~♪」


 男の言葉に共感したといわんばかりに両手でパンッと叩いたモガが割り込んでくる。


 「モガも気になるんだ」


「もがが、もが!」


「なるほど、王子様とのキスシーンが知りたいと。モガも気になるお年頃」


 ふっと笑うアメに言われモガは両頬を手で押さえて恥ずかしそうに体を揺らす。


「あれそんなにロマンチックなシーンじゃないでしょ。どちらかといえば……」


「ネタバレは罪。シェール先輩は空気読んだ方がいい」


「アメには言われたくないんだけど」


 アメはにらむシェールの視線を避けると、体の大きな男に視線を向ける。


「プレスも気になってるから続きを話す」


 プレスと呼ばれた男は大きく頷いて座り直して姿勢を整える。

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