表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蹴り飛ばせ! 恋するカエル姫は愛しの王子様の元へと蹴り進む!!  作者: 功野 涼し


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/25

嘘も誠にすれば嘘じゃない

 ギルドの建物から裏に出た先にある広場は、武器の試し斬りをしたりギルドに務めるトレーナーから指南を受けたりして鍛錬可能な簡易訓練所である。


 連れてこられたアメはランロットのズボンを引っ張る。


「ランロット、決闘ってなに?」


「決闘とは冒険者同士のいざこざがあったとき互いのプライドをかけて正面からぶつかる制度でございます。トラブルがあったあと裏で報復などあっては治安が乱れますので、証人がいる前で白黒つけてどちらが正しいかを力で決めるのです」


 ランロットの説明にみけんにしわを寄せたアメが首をひねる。


「今回でしたらアメ様の強さを疑うあの男を倒せば、アメ様が強いってことを皆が認めてくれるのです」


「認めてもらったらどうなる?」


「ギルドへの登録が近づきます。」


 ランロットの説明にアメはまだちょっと理解できていない様子で対戦相手である男の方を見る。

 その視線に気づいたのか防具を身に着け準備していた男がニヤリと笑みを浮かべる。


「お嬢ちゃんもここに立たせるなんて英雄さんも酷いもんだな。怖かったら後ろに下がってるんだぞ」


 男が木刀と盾を持って前に出ると木刀の先端をランロットに向ける。


「この決闘で俺が勝ったらランロットさんの持つ『金剛』の二つ名をもらうぜ。そして英雄の一人をたおした偉大な冒険者、ハインツ・グリーンの名をあんた自ら広めてもらうからな!」


「承知いたしました。ではこの決闘でわたくしたちが勝ったら、アメ様を侮辱したことの謝罪とアメ様へのお食事をごちそうしてもらう。この二つをお約束してもらいましょう」


「ぎゃははははっなんだそれ! 食うものもないのか! みじめだな英雄さんもよ! そんな人と一緒にいるなんて哀れなガキだな!」


 互いに勝負に賭けるものを宣言するがランロットの宣言内容にハインツはバカ笑いをし周りからも失笑がもれる。


「いいぜ、うまいもんたんまり食わしてやる」


「ほんとに⁉ じゃあやる!」


 嬉しそうにぴょこぴょこ跳ねるアメの姿に大袈裟に呆れたジェスチャーをするハインツに会場に笑いが起きる。


「アメ様、相手は人間です。手加減をお願いします」


「うん。分かった」


「あ? 手加減だ? ふざけてんのか!」


 ランロットのアドバイスが聞こえたハインツが苛立つが、さらに前に出てきたアメを見て舌打ちをする。


「おい、なんでお前が前に出てくる。それに武器も防具もなにも持ってないじゃねえか。ふざけるのもいい加減にしろよ」


 木刀を地面に叩きつけて怒鳴るハインツに対して、目をくりくりとさせたアメが自分のつま先で地面をトントンと叩く。


「アメは蹴って戦うから。えっと……もうやっていいの? 笛? うん分かった」


「蹴るだぁ? そんなヤツ聞いたことねえぞ。あんまり笑わせてくれるなよ」


 ハインツが剣と盾を構えるとアメもぴょんぴょんと跳ねる。そのタイミングで審判を務めるスタッフが笛を吹く。ピィッ‼ っと短く鋭い笛の音が決闘開始の合図がされるとハインツが自分の頬を指でトントン叩く。


「蹴るってんならやってみろよ。ほらほら」


 自分の頬を突き出して挑発するハインツの行動に見物人たちから笑いが起きる。そんな中でも表情を変えることなく、じっとハインツの指さす頬を見ていたアメがわずかに屈んで足に力を込める。


 パシュッ


 空気が小さく切り裂かれる音がハインツの耳に響く。


 ハインツはそれが何の音か分からないが、目の前にいたはずのアメの姿はもうなく頬から体にすさまじい衝撃が走り、浮遊感だけ感じることができていた。


 アメが軽やかに着地するのと対照的にきりもみ状にぶっ飛んだハインツが壁に立てかけてある衝撃吸収用の藁で作られた壁に激突する。

 派手に舞い上がる藁の下でぐったりとして目を回すハインツにアメが駆け寄る。


「アメの勝ち? ねえねえご飯食べさせてくれる? おーい」


 つんつんと気絶したハインツの頬をアメが突っつく。それを遠くから見ていたギルド長であるシモンは驚愕の表情で体を震わせる。


「なんだあの子は……」


「ギルド長は魔王と勇者の伝説を聞いたことがありますか?」


 いつの間にか隣にいたランロットが話しかけると、目を見開いたままのシモンがランロットの方を見る。


「かつて魔族たちが人を脅かしていた時代に突如現れた勇者が邪を払い平和をもたらした」


「再び魔がはびこるとき勇者も再び現れる……まさか⁉」


 ランロットの言葉に続いたシモンが声を震わせる。


「おそらくは……としか言えませんがその可能性は高いかと。今はまだ成長の段階ですので見守っていきたいと考えています。それにもしも勇者でなくともアメ様の力は皆を救う力になるはずです」


 ランロットの言葉にシモンは考え込む。


「ふむ、先の盗賊どもがそろって小さな少女にやられたと供述しておると報告が入っているのも嘘ではないというわけか……。よかろうランロットとアメのギルド仮登録、それと本来であれば仮登録中は魔物との戦闘系は受けられないのだが特別に認めよう」


「ご配慮ありがとうございます」


 深々とお辞儀をしたランロットがハインツを突っつくアメを見て微笑む。


 ━━こうしてわたくしたちはギルドに無事仮登録いたしました。ここからは……


「はいはいはーい!」


 ランロットの話にシェールが手を挙げてアピールする。


「前から気にはなってたんだけど、世間ではアメが勇者の末裔とか生まれ変わりとか言われてるけどあれってもしかして……うそ?」


「はい、噓でございます」


 シェールの質問にランロットはあっさりと答える。


「アメ様の強さを受け入れさせるのに最適な理由だと思いまして。それにあの時点は嘘でしたが、今の状況を考えれば嘘とは言えないはずです」


 微笑むランロットをシェールとリネロが引き気味に見る。


「嘘も誠にしてしまう実力と運がアメ様にはございますから。さすがでございます」


「うん、あるよ」


 ドヤ顔のアメに対して拍手するモガとプレス、呆れた顔で見るシェールとリネロ、これはこのメンバーおなじみの構図となっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ