好きって気持ちの伝え方
王国の兵士によってアジトから縛られた盗賊たちが次々と運び出される。
「ランロットさん。おかげさまで盗賊たちを一網打尽にできました」
王国の兵がランロットに敬礼をすると、続いて部下たちも一斉に敬礼をする。
「いやいや、わたしは何もしていないんだ」
そう言ってランロットは牢から救い出された女の子たちと対面するアメの方を見る。
「まさかあの少女が? いや、ご冗談を。上への報告もありますのでランロットさんの活躍によって解決したと報告書を書かせていただきます! それでは私は失礼します」
ランロットが謙遜しているのだろうと判断したのか兵は笑顔で再び敬礼すると、機敏な動きを見せその場から去って行く。
「怪我してるんだろ? 体が痛いときは無理するなってシェール先輩が言ってた」
ランロットが近づくと、アメが自分の元にやって来た女の子に気遣いの言葉をかけていた。
「大丈夫。それよりも……その……ごめんなさい」
「なにが?」
アメは謝罪する女の子を見て首をひねる。
「あなたを叩いてしまったこと。うん、助けてもらったあとで謝るなんて自分勝手なのは分かってる。だから許さなくていいから……その本当にごめんなさい」
「う~ん、アメは怒ってないけど」
頭を下げて謝罪する女の子を前にして困り果てるアメは、近づいて来たランロットに目をやる。
「えーっと……誰だっけ?」
「ランロットでございます」
「そうそう、ランロットだ! ランロットが色んな人呼んでくれて助かった。アメはどうしていいか分からなかったから」
「いえいえ、お礼を言うのは助けていただいたわたくしの方です」
礼儀正しくお辞儀をしてお礼を述べるランロットを見たアメが何かを思い付いたのか、パアッと表情を明るくする。
「ランロット、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「ええ、わたくしが答えられる範囲であれば何なりと」
「助かる。この子がアメに謝ってくるけどアメはなんとも思ってない。どうすればいい?」
「状況が見えないのでお答えするのが難しいですね。差し支えなければお二人の間何があったのか教えて頂けますか?」
ランロットに言われ擬音が多く要領を得ない説明をするアメを女の子がサポートしながら事のあらましを話す。
「なるほどおおよそ理解いたしました」
ランロットの言葉にアメと女の子はホッとした表情を浮かべる。
「リナ様はアメ様を叩いたことを気になさっている。ですがアメ様は気にしていない。でしたらリナ様は謝罪ではなく、アメ様に感謝の気持ちを述べるのはどうでしょう」
リナと呼ばれた女の子は目を丸くしてランロットを見返すと、ランロットは微笑んで応える。
それを受けてリナは少し戸惑った表情を見せるが、すぐにアメの方へと体を向ける。
「助けてくれて、ありがとう」
「ん? えーっと……リナが喜んでくれたならアメは嬉しいから……んーっと、えーっと……お互い……そう! お互い様だ」
リナからお礼を言われ何と返事していいのか分からないがアメなりに必死に答えると、リナは一瞬目を大きくして驚くが口を押さえて笑い出す。
「ご、ごめんなさいっ、笑うつもりはなかったんだけど、これだけ凄いことしてお互い様って言われるとは思ってなかったから」
クスクスと笑うリナを見て、アメも笑顔を見せる。
「リナが笑ってくれてアメも嬉しい気持ちになるそれになんだか、胸がポカポカする」
自分の胸を押さえたアメがリナに近づくと頬にキスをする。突然の行動に驚き目をまん丸にするリナにアメが満面の笑みを向ける。
「この気持ち好きってヤツ。アメはリナのことが好き」
アメにキスをされた頬を手で押さえながら驚くリナだが、再びクスッと笑う。
「アメって面白い人だね。うん、好きなんて初めて言われたからびっくりしちゃった」
そう言ってリナがアメの頬にキスをする。
「私もアメのこと好きになっちゃった。他人を好きになったのも初めて」
照れ笑いをするリナとアメは微笑み合う。
そんな二人を少し離れたところから微笑んで見ていたランロットだが、突然目の前にアメが現れ驚き思わず半歩後ろに下がる。
「アメはランロットも好き」
言うや否やアメは軽くジャンプしてランロットの頬にキスをする。
それから━━
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。アメ姉」
「なによリネロ。話の腰を折るのやめてくれる」
手を伸ばして話を止めたリネロをシェールがジト目で見る。
「いや、アメ姉って誰でも……あ、なんていうか」
口ごもるリネロを見て何かを察した表情でシェールが口元を押さえてぷぷぷと笑いだす。
「あぁ~リネロもしかしてアメにキスされたの自分だけとか思ってなかった?」
シェールが自分の周囲にいる仲間たちを順に見ていくと手を挙げる。
「この中でアメからキスされたことのある人手を挙げて」
シェールの発言にアメ以外全員手を挙げる。その中で遠慮がちに手を挙げるリネロの肩をシェールがポンポンと叩く。
「そういうわけだよ少年。この子は自分が好きだと思った人にキスをするのだよ。ただ、誰でもじゃないから可能性がないわけじゃないかもねぇ~、うんうん、頑張れ少年」
わざとらしい言い回しで落ち込むリネロの肩を叩いたシェールがアメの方に振り返る。
「私も一つ気になったんだけど、話に出てきたリナって子、アメが経営する孤児院にいなかった? この間連れて行ってもらったとき紹介してもらったよね?」
「うん、その子であってる」
元気よく答えたアメに続きランロットが言葉を続ける。
「補足させていただきますと、盗賊を壊滅させたあと囚われていた人たちはそれぞれの保護施設に送られることになったのです。ただこのご時世どこの施設も人が多く、せっかく保護されたのに追い出され再び路頭に迷うなど残念な事案があったのも事実です」
やや険しい顔で話すランロットの横でアメも険しい顔をする。
「心を痛めたアメ様は自ら孤児院を設立、それだけでなく大人になったあと働けるようにと学びを得られる学校も設立。さらには子供だけでなく大人も職に就けるようにとより実践的な技術を学べる技術学校なるものを設立なさったのです」
「なさったのです」
アメがドヤ顔でピースをする。
「設立ってお金とかかなりかかってるんじゃないの?」
「設立にはアメ様が活躍し得てきたお金のほとんどをつぎ込んでいます。その他活動に賛同していただいた方からの出資も多く頂いています。それでも足りず借金もしましたが、今では学校の活動が理解され出資も増えて経営は上向きでございます」
ランロットの説明に質問をしたシェールが目を丸くしてアメを見る。
「ほとんどって、お金を自分に使ってないの?」
「アメはご飯が食べれて寝るとこがあったらいい。続き話てもいい?」
「あ、うんごめん……ってなんで私が謝るのよ。話の腰折ったのリネロでしょ!」
シェールがしょんぼりしたリネロを突っつくが、リネロは反抗することもなく呆然としていて力なく揺れる。そんなリネロを置いてアメの話は続く。




