愛を示した結果
鼻をスンスンと動かすと王子たちが通った僅かな匂いを感じ取る。目を凝らすと床を通ったことでできた人には認知できない足跡から王子のものを見つける。
猛スピードで廊下を走ったアメはすぐに王子たちの集団に追いつく。
「王子!」
アメが呼ぶとジャンティ王子とその一行は驚いた顔で振り返る。
「ア、アメ?」
王子に名前を呼ばれて嬉しくなったアメは大きく頷く。
「なんだ貴様は! メイドごときが気安く王子に話しかけるでない! お前たち何をしている! 捕まえろ!」
貴族であるアゲエールが憤慨し兵たちにアメを捕らえるように命じると、兵たちは慌てて手を伸ばしてくるがアメは素早く潜り抜けて王子の目の前に立つ。
一気に距離を詰めて目の前に急接近したアメに驚きたじろぐ王子を見て微笑んだアメは頬にキスをする。
何が起きたのか分からず呆然とする王子と取り巻きのことなど気にせずアメは自分の気持ちを伝える。
「王子、好き!」
自分の頬を押さえてアメを見る王子と大きく口を開けて驚くアゲエールと兵士たち。そんな中で一番最初に反応し声を上げたのはアゲエールが連れていたメイドの一人だった。
「あ、あんたなんてことを!」
「ん? あっ? あ! パ……パテだ!」
「パッティよ! パッティ! そんなことよりも今自分が何をしたのか分かってるの!」
「ほへ? 王子に好きだって気持ちを伝えた」
凄い形相で怒るパッテイの質問の意味が分からずアメが首をかしげると、我を取り戻した兵士たちが捕まえようと手を伸ばしてくるので後ろに飛んで避ける。
「この反逆者を捕らえろ!」
「反逆者?」
思ってもいなかった言葉がアゲエールの口から出てきて驚いたアメの背後にも複数の兵たちが現れ捕らえようと構える。
敵意を向けられてこの場所から逃げるべきなのか、どうするのが最適なのか分からず戸惑ってしまう。そんなアメを捕えようと殺意を増す兵たちとの間に張り詰めた空気がいたずらに高まっていく。
「まて!」
緊迫した空気を切り裂いたのはジャンティ王子の声だった。
「アメは私がここに連れてきた。罪を問うのであれば私にも責任がある」
突然の発言に皆が驚き口を挟めない空気の中ジャンティ王子は言葉を続ける。
「だがここで処分をくださないのは他の者たちに示しがつかない。よってこの者を追放処分とする。異論のある者はいるか?」
ジャンティ王子が周りの人たちを順に見て行くが声を上げる者はいない。それを見て頷いたジャンティ王子はアメの近くに来ると小声で囁く。
「こんなことになって申し訳ない。だが分かってほしい。どうか強く生きてくれ」
心痛な面持ちでアメに伝えるとジャンティ王子は遠巻きで見ていたシェールに気づくと声をかける。
「そこのきみ、この子の服を用意し着替えさせてもらえるかい。警備兵は着替えが終わり次第城の外へ連れ出してくれ」
ジャンティ王子の指示が飛び慌ただしいながらも皆が指示に従いその場が収束していく。シェールに連れられて急いでシンプルなワンピースに着替えを終えたアメは兵士に連れられて城の外へと放り投げられてしまう。
━━こうしてアメは城から追い出されることになった。
「あんたね……軽く言ってるけど大変だったのよ。ほんと、こっちの身にもなってほしいんだけど」
腕を組んで呆れるシェールに近づいたアメが頭を下げる。
「アメの着替えを手伝ってくれたときシェール先輩泣いてた。あのときは何で泣いているかよく分からなかったけど今は少し分かる。心配かけてごめんなさい」
「な、なによ全くあのとき……あぁ~もう思い出しちゃったじゃないの。もう気にしてないからこっち見るな!」
シェールは乱暴に赤くなった目の涙を拭りながらアメから顔を逸らす。
「本来ならアメは罪を問われて牢獄送りか死罪だったってあとから知った。そうならないように王子がしてくれたことも教えてもらった」
アメがプレスの方を見ながら語る。
「カエルだったころ優しくしてくれて、この姿になってからもたくさん助けてくれた。だからアメも王子を助けたい」
アメの力のこもった発言にプレスは大きく頷く。
「なるほど、アメ様が城から追い出されたとは聴いていましたが、そのような状況だったとは初耳でございます。それで、わたくしと会ったあの日アメ様はなぜあそこにいたのでしょうか? 今一度お教えいただけないでしょうか?」
会話に入ってきたランロットの方を向いたアメは思い出しているのか視線を上に向けて首をひねる。
「ランロットと会った日……」
「ええ、この老兵が死を覚悟した場所に連れられたとき、そこにはアメ様がいて、そしてわたくしがアメ様に忠誠を誓うことを決意をした日です」
「あぁ~思い出した!」
アメが手をパンと叩く。
「じゃあ城を出されたときから話す」
アメが元気よく宣言するとランロットをはじめ皆が頷く。




