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第77話|そのままにしておく
朝、彼は端末を開いた。
一覧は昨日と変わらない。
更新時刻は整い、
異常欄も存在しない。
画面は静かに完成していた。
彼は自然に、
あの余白へ視線を向ける。
何も表示されていない。
操作できるものもない。
午前中、処理を進める。
入力は受け付けられ、
確認ボタンを押せば完了する。
何件か続けたあと、
彼はひとつの案件を開いたまま席を立った。
数分後に戻る。
画面は変わっていない。
警告も出ていない。
自動補正も始まっていない。
ただ、
開かれたまま待っていた。
昼前、新しい担当者がそれを見て言う。
「閉じなくて大丈夫なんですか」
彼は肩をすくめた。
「大丈夫みたいです」
それ以上の理由は話さない。
午後、その案件をもう一度読む。
急ぐ必要はないように思えた。
結局、確認ボタンは押した。
処理は正常に終わり、
一覧もいつもの表示へ戻る。
夕方、彼は何もない余白を見る。
そこには依然として何もない。
それでも今日は、
その場所を埋めたいとは思わなかった。
定時、端末を閉じる。
今日も運用は正常だった。
異常も遅延も表示されていない。
ただ、
すぐに閉じなくてもよかった時間だけが、
誰にも記録されずに残っていた。




