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第75話|空いている場所

朝、彼は端末を開いた。


一覧は変わらない。

更新時刻は整い、

異常欄は存在しない。


彼は自然にスクロールする。


もう探している感覚はない。


手は迷わず、

あの場所で止まる。


午前中、処理を進める。

入力は受け付けられ、

完了も正常に記録される。


運用はいつも通り続いている。


それでも彼は、

一覧を閉じる前に一度だけ

その場所を見る。


何もない。


番号もない。

表示の違いもない。


昼前、新しい担当者が言った。


「そこ、空いて見えませんか」


彼は画面を見る。


行は並んでいる。

空白など存在しない。


それでも、

少しだけ余白があるように感じた。


午後、ログを確認する。


記録は整然と並んでいる。

欠番もない。

削除履歴も存在しない。


夕方、一覧へ戻る。


何もない場所。


だが今日は、

そこに何もないことを

確認しようとは思わなかった。


ただ視線が止まる。


定時、端末を閉じる。


今日も運用は正常だった。

異常も遅延も表示されていない。


ただ、

何もないはずの場所だけが、

少しだけ空いて見えた。

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