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第74話|そこに何もないこと

朝、彼は端末を開いた。


一覧は変わらない。

更新時刻は整い、

異常欄は存在しない。


彼は昨日手が止まった場所までスクロールする。


同じ行が並んでいる。


番号も形式も、

他と違うところはない。


午前中、処理を進める。

入力は受け付けられ、

完了も正常に記録される。


何も問題は起きていない。


それでも何度か、

彼の視線は同じ場所へ戻った。


昼前、新しい担当者が言った。


「何かあるんですか、その辺」


彼は少し考える。


「分からない」


本当に分からなかった。


何かがあるのではなく、

何もないことを確認している気もした。


午後、ログを確認する。


記録は整然と並んでいる。

欠番もない。

未処理も存在しない。


夕方、彼は再び一覧を見る。


同じ場所。


何も変わらない。


何も残っていない。


だが、

そこに何もないことだけは確かだった。


定時、端末を閉じる。


今日も運用は正常だった。

異常も遅延も表示されていない。


ただ、

何もないはずの場所だけが、

少しずつ見つけやすくなっていた。

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