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第71話|残っていないはずの行

朝、彼は端末を開いた。

一覧は昨日と同じ表示だった。


更新時刻は整っている。

異常欄は存在しない。

完了件数も表示されていない。


彼は何気なく最下部を見る。


そこに、

見覚えのある番号があった。


昨日、閉じたままにした案件の番号だった。


午前中、彼はその行を開こうとする。

カーソルを合わせる。

だがクリックした瞬間、

一覧が更新される。


同じ位置には、

別の番号が表示されていた。


昼前、新しい担当者が言った。


「今、何か開こうとしてました?」


彼は少し考える。


「昨日の案件があった気がした」と答える。


担当者は一覧を見る。

「この番号ですか?」


表示されているのは別の案件だった。


午後、ログを確認する。

昨日閉じた案件の記録はない。


未完了にも、完了にも存在していない。


夕方、彼はもう一度一覧を見る。

同じ行が並んでいる。


だが最下部だけ、

一瞬だけ違う番号に見える。


定時、端末を閉じる。


今日も運用は正常だった。

異常も遅延も表示されていない。


ただ、

存在していないはずの行だけが、

ときどき表示されていた。

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