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第70話|あとで開く
朝、彼は端末を開いた。
一覧は昨日と変わらないように見える。
更新時刻は並んでいる。
異常欄は存在しない。
未処理件数も表示されていない。
彼は昨日閉じた案件のことを思い出す。
あとで開けばいいと思っていた。
午前中、検索欄に番号を入力する。
該当なし、と表示される。
削除通知は出ていない。
完了記録も存在しない。
彼は一覧を見直す。
同じ行が並んでいる。
どこかに残っている気がする。
昼前、新しい担当者が言った。
「あとで見ようと思って、忘れることありません?」
彼は少し考える。
「忘れたという感じじゃない」と答える。
見えなくなっただけなのかもしれない。
午後、別の案件を開く。
入力欄は揃っている。
確認ボタンも表示されている。
彼はカーソルを合わせ、
少しだけ待つ。
そのあと、
画面を閉じる。
夕方、ログを確認する。
完了した案件だけが残っている。
閉じられた画面は記録されない。
定時、端末を閉じる。
今日も運用は正常だった。
異常も遅延も表示されていない。
ただ、
あとで開くつもりだった画面だけが、
どこにも残っていなかった。




