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第64話|再現されない違和感
朝、彼は最初に一覧の最下部を確認した。
昨日まで気になっていた位置を見るためだった。
表示は整っている。
ずれは見つからない。
彼は画面を閉じ、
もう一度開いた。
結果は同じだった。
午前中、処理を進める。
入力も保存も正常に完了する。
だが画面を切り替える瞬間、
一行だけ位置が動いたように見えた。
彼はすぐに一覧を見直す。
すべて揃っている。
昼前、新しい担当者が言った。
「今、少しずれませんでした?」
彼は返答しない。
確認する方法がない。
午後、ログを開く。
更新は続いている。
異常欄は存在しない。
夕方、基準文書を確認する。
短い追記がある。
「表示差異は確認されていません」
確認方法については書かれていない。
定時、端末を閉じる。
違和感は再現できない。
記録にも残らない。
だが、
同じ表示を見ていたはずの二人が、
同時に一瞬だけ沈黙していた。




